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7月12日は新聞休刊日

2021-07-12 05:30:10 | 社説を読む
今日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを紹介します。
 
・ 久しぶりに田舎の実家で草むしりをしたら、すぐにプーンという音が襲ってきた。顔が手が首筋が次々とかまれていく。かゆい。今年もまた、蚊の季節だ▼「わたくしは、蚊に攻められているのである」。明治の作家小泉八雲の随筆の一文を思い浮かべる。当時、東京の八雲邸近くには5、6種類の蚊がいた。このうち「全身に銀色…

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・  英国に留学中の夏目漱石がつづった120年前の日記をたどると、見慣れない表現に出会った。英会話では、ロンドンの人々に「鯱立」してもかなわないとある(『漱石日記』岩波文庫)
 
◆鯱立(しゃちほこだち)は、反り返った鯱の姿から「逆立ち」を言う。先日、地上に展示する金の鯱が大相撲名古屋場所のテレビ中継に映って確認できた。顔は前を向き、背びれから尾は天に反る
 
◆名古屋城の鯱は防火の守護神とされるが、感染症終息の祈りも託され、16年ぶりに天守から下りてきた。大相撲の親方が千秋楽までの無事を願い、鯱をなでた
 
◆その御利益か、大相撲が観客を沸かせている。復帰して初日に鬼気迫る投げを見せた横綱白鵬は「ただいま」と言った。懐が深い、肩すかし、勇み足…。耳にする相撲言葉に人生を重ねる方もいよう。大相撲は伝統文化の守り神でもある
 
◆相撲好きの漱石は力士の美しさも日記に描写した。<筋肉の光沢が力 こぶ の入れ具合で光線を受ける模様が変ってぴかぴかする>。東京はまた緊急事態宣言が下る。鯱立しても遠出できない身は、テレビ越しに輝く守護神たちに目を凝らす。
 
・ 映画「007シリーズ」で3代目ジェームズ・ボンド役のロジャー・ムーアが初主演した「死ぬのは奴(やつ)らだ」(1973年)。敵役はカリブ海の島国の独裁者だった。57年からハイチの大統領を務めたデュバリエがモデルといわれる
 
▲医師出身で大衆的人気を背景に大統領選に勝利したが、就任後は民間信仰のブードゥー教を個人崇拝に利用し、独裁体制を固めた。そのきっかけの一つが58年のクーデター未遂事件だった
 
▲米フロリダ州マイアミから仲間7人と船で上陸した元軍人が大統領官邸を襲い、デュバリエも一時危機に陥った。鎮圧後は、窮地を救った民兵組織を重用し、恐怖政治を行った
 
▲そんな時代の再来を思わせる暗殺事件だ。首都ポルトープランスで武装集団がモイーズ大統領の私邸を襲い、射殺した。警察当局は実行犯とされるコロンビア人やハイチ系米国人らを拘束したが、背後関係は明らかでない
 
▲ハイチはデュバリエとその息子の2代にわたる独裁で経済が停滞し、今も最貧国の一つだ。86年に独裁が終わりを告げた後も政情不安が続く。2010年1月には31万人以上が死亡する地震で国土が壊滅状態になった
 
▲「ハイチだけで復興を遂げるのは不可能だ。全ての面で国際社会の支援が必要だ」。地震10年で現地を訪れた小紙特派員に住民が語った言葉だ。今も状況は変わるまい。政治の混乱は治安悪化に直結する。国連や米国は暗殺を非難し、安定化に向けた協力を表明している。日本も積極的に協力に加わりたい。
 
・ どこまで強くなるのか。圧巻の3連勝である。先日、行われた将棋の棋聖戦。史上最年少でタイトルをつかんだ藤井聡太二冠に渡辺明三冠が挑んだ。藤井さんが、初防衛に成功した。巣ごもり生活のなか、終日、ネットの生中継にくぎ付けになった愛好家もおられよう。

▼だが、本当の見どころは投了後の「感想戦」だった。勝者、敗者がともに対局を振り返る。別の展開もあったのではないか。実戦で指されなかった「妙手」を、ともに研究...

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・ 他人を蔑(さげす)む言葉は、笑い話や小噺(こばなし)の範囲にとどめるのが望ましい。「おまえがその顔を改めるなら、おれも素行を改める」「おい、おれの顔がおまえに迷惑かけてるかよ」(柳瀬尚紀著『日本語は天才である』)

▼言いがかり、八つ当たりもこの程度ならまだ許せる。東京五輪の無観客開催が決まり、ある競技の代表選手が他紙の取材に「悲しい」と胸の内を明かしていた。ネット上ではなぜか、非難の十字砲火を浴びた。「開催されるだけでもありがたいと思うべきでは」と。

▼記事によれば、その選手は観衆の前で「感動させる走りをしたい」と願っていたという。新型コロナ禍の閉塞(へいそく)感にあえぐ世の中に、せめて一陣の風を届けたい―という心意気だろう。これも「思い上がりだ」と両断された。選手があなたに何か迷惑をかけましたか。

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・ 落語の「唐茄子(とうなす)屋政談」を聴いていると親が子を絶縁する、かつての「勘当」とはかくも過酷なものかと思う
 
▼吉原通いが過ぎ、勘当となった若旦那。食うに困って親類の家々を回るが、若旦那の父親から面倒を見てはならぬと手が回されており、どこの家でも追い返される。結果、若旦那は吾妻橋から身を投げようとする。身から出たサビとはいえ、この父親のやり方も恨みたくもなる
 
▼批判を受け、撤回したとはいえ、政府の発想はこの父親と同じだろう。新型コロナウイルスの感染対策で酒類の提供停止に応じぬ飲食店に対し取引のある金融機関から働き掛けを行わせようとした問題である
 
▼資金を頼る銀行からの要請なら言うことを聞かざるを得まい、という冷たい計略だろう。同じ手は酒の販売業者にも使われており、ルールを守らぬ店との取引を見合わせるよう求めている
 
▼いつまでたっても収まらぬコロナを思えば、店側にはルールを守ってほしいが、酒を出さなければ店が立ちゆかぬという事情もあろう。あちこちに手を回し、こうした店をただ追い詰める政府のやり方は見ているだけで息苦しい
 
▼あの噺(はなし)では叔父さんが父親に逆らい、若旦那を助けたが、政府がすべきはルールを守れぬ店側の事情をよく聴き、必要な対策を講じることだ。こんな脅しが続くのなら、国民の方が政府に「勘当」を考えるようになる。
 
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