ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 作品92【クライバー&VPO】(スコア付き)
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン: 交響曲第7番イ長調 作品92 (スコア付き) 作曲年代:1811 - 12年 指揮:カルロス・クライバー 管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
00:00 第1楽章 Poco sostenuto - Vivace (イ長調) 13:38 第2楽章 Allegretto (イ短調) 21:44 第3楽章 Presto (ヘ長調) - Assai meno presto (ニ長調) 29:59 第4楽章 Allegro con brio (イ長調)
《交響曲第7番イ長調 作品92》は、40代を迎えたベートーヴェンが作曲した7番目の交響曲である。第5・6交響曲の初演から3年後の1811年11月に作曲が始められ、翌年6月に完成している。この年代のベートーヴェンには『不滅の恋人』と呼ばれる恋人がいたとされ、1812年には熱烈なラブレターを残している。一方で耳の疾患は既に筆談が必要な状況であり、社会情勢はナポレオンがロシア侵攻し・敗戦するなど、激動の人生に変わりなかった。 ベートーヴェンの9つの交響曲には、必ずそれまでになかった革新的な要素が盛り込まれており、いわば「挑戦状」がスコアに記されている。この交響曲の挑戦テーマは「リズム」と「調性」である。リズムはこの交響曲の神髄であり、リヒャルト・ワーグナーが「舞踏の神化 (Apotheose des Tanzes) 」と呼んだのは有名である。第1楽章は16分音符を挟む軽快なリズム、第2楽章は冒頭の低弦による8分音符を挟むリズム、第4楽章は裏拍を強調したリズムがそれぞれ楽章内で貫かれている。どれも舞踏音楽を発端としたもので、それを交響曲に昇華させたのは革新的である。 もう一つのテーマである調性は、遠隔調の使用で顕著である。第1楽章の62小節に及ぶ長大な序奏には4回の転調が存在し、わざわざヘ長調というイ長調から遠い調性を経由する。第3楽章は異例のヘ長調で、しかもトリオではニ長調に転調する。ティンパニがAとFの短6度で調律されるのも革新的である。第4楽章でも長大な経過部で遠隔調の使用が顕著である。 なお、第4楽章の第1主題は《12のアイルランドの歌 WoO 154 • Beethoven: 12 Irish Songs, WoO 154 (w... 》の第8曲『まじめで分別くさいのはごめん』との関連性が指摘されている。また、第2楽章の終わりから4小節間にあるヴァイオリンへの "arco" の指示は議論を呼んでおり、近年の批判校訂版では指示がなかったり、場所が異なっていたりする。 交響曲は1813年12月8日、ウィーン大学の講堂にて、ハーナウ戦役傷病兵の救援資金調達のためのチャリティー演奏会で初演された。一緒に演奏された《ウェリントンの勝利またはビトリアの戦い(戦争交響曲)作品91 • Beethoven: Wellington's Victory, Op. ... 》の方が好評を得たが、《交響曲第7番》も第2楽章がアンコールされている。初演後も、ナポレオン流刑後に開かれたウィーン会議で演奏されるなど好評を博した。日本国内では《第5番「運命」 • Beethoven: Symphony No. 5 in C minor,... 》や《第6番『田園』 • Beethoven: Symphony No. 6 in F major,... 》ほど知られていなかったが、2006年のテレビドラマ「のだめカンタービレ」で使用されたことで急速に知名度が上がった。