このシリーズ、16本目のワインはデゾウロ・ダ・セー・ティント・プライべートセレクションという何とも長い名前の赤ワインです。ワイナリーはダン地方にあるウダカ。このワイナリーのワインは3本目なので馴染みがありますが、特にこのワインは特別ブレンドで醸造家が「完璧」と自画自賛する逸品とカタログに書いてありました。確かに一口含むと口の中で渋みや酸味が複雑に絡み合った不思議な味わいが広がります。トウーリガ・ナショナル、アルフロシェイト・ブレトなどダン地方で採れるブドウを特別にブレンドしたものですが、これがブレンドの技なのでしょう。カタログに載っているウダカの4本のワインの中では値段は最も高いのですが、それでも2,200円(税込)。高級ワインなど飲んだこともない身にとって相応な贅沢なひとときを楽しみました。
さてこのダン地方の中心都市はヴィゼウという町です。モンデゴ川支流のバヴィア川沿い。穏やかな丘陵地にブドウ畑が広がり、ダオンと呼ばれる有名なワインの産地であることは前にも取り上げました。ワインというのは、その土地に実ったブドウが大地から水分を吸収して育ち、微生物の力を借りて発酵させ醸造するものですが、輸入されたワインを飲むことはポルトガルそのものを飲むことにほかなりません。というのは、アルコールの化学式はC2H6O。炭素分子が2個、水素が6個、酸素が1個結合したものです。このCは有機物でありポルトガルの大地が育んだもの。ひょっとしたら何かの遺伝子情報がワインを飲んだ私の体内に取り込まれたかもしれません。こんなばかばかしい妄想も素性がはっきりしたポルトガルワインならではの愉しみですね。興味ある方は是非チャレンジしてみてください。