直木賞作家で郷土出身の桜木紫乃さんが書いたラブレスを読んだ。

冒頭から暗いシーンが続き、これは私向きでは無いかもと思いながら読み進むうちにどんどん引き込まれていった。
歌が好きでバスガイドを夢見ていた少女が貧しい家庭の事情でその夢を断たれ、歌を捨てきれずに飛び込んだ演芸一座と行動を共にし、一座が解散した後の放浪。
子供を産み、オトコに裏切られ故郷にも背中を向けられた女がミシンを武器に懸命に生きる姿に涙腺が弛んだ。
意識が朦朧とする病室を最後に尋ねてくれたのは、ついに彼女とは世帯を持てなかったが彼女を本当に愛してくれた男だった。
横たわる彼女の手を握りボロボロと涙を流すその男の姿を見て、懸命に生きてきた彼女が本当は不幸では無かったのだと実感した人たち。
桜木紫乃の作品を読んだのはこれで3冊目。
もしかしたら最後の文章から書き始めるのではないかと思う程に、最後の数べーしに力が込められている。
暗く貧しい暗い世界に咲く愛を書かせたら勝てる作家はそういないと思う。
続けて「蛇行する月」を読んだ。

これは高校の同級生それぞれが卒業後に生きる様を描いているのだが、最後に最も貧しく病に倒れた女性に焦点が絞られ「私は幸せなんだよ」と云われて・・・・・
いや、これから先は先入観無しに、読むのではなく感じて欲しい。
彼女の描く世界は、私がこの田舎街に生まれたことを喜びに代えてくれた。
ただ彼女は男の大切なアレを「矢印」と書くんだ。まぁ矢印に見えないことは無いけれど、もしかしたら今までヒドイ男にばかりに逢ってきたのではないだろうか。
自慢じゃないけれど私の「矢印」は、どこまでも優しい。
頑張る時には頑張るし、時には腰が抜ける程に突き進む。
いや、「突き進んだ」と云い直した方が良いだろうか。
何しろ、過去のことだから・・・・・。