低気圧が発達して946hPa。
天気図によると、その台風並みの低気圧が街の上を通過したらしい。
台風でさえ通ることが珍しい私の街。建物がミシミシと不気味な音を立てた。
軒先が楽器のように細かく震え、電線は大きく揺れながら風を切り裂いている。
ニュースが屋根の飛んだ家を映し、冠水した河原の写真が新聞に載っている。
「何とか飛ばずに耐えてくれ」と屋根に手を合わせて祈る。
2Fの屋根の上に載っていた凍った雪が、「ズン」と云う不気味な音を立てて1Fの屋根に崩れ落ちた。
昔、「キャッ」と云う可愛い声を出して私にしがみついてきたルンバは、
「ウオッ」と云うオッサンみたいな声をだすものの、地蔵のようにその場を動かない。
私の方が怯えて、「ズン」と云う音のたびに悲鳴を上げてルンバに近付く。
可愛い悲鳴と共に抱きつき、ドサクサに紛れて久し振りに乳に触れてやろうかと企むのだけれど、それを察したのか微かにビリビリとした空気。
もしかしたら・・・・・これは殺気❔
「これ以上寄るな」と云う殺気❔
私は地蔵の前から一歩引き下がった。