「もう少し左を」とルンバが耳元に口を寄せる。
素直に向きを少し変えてグイッと押し込む。
夫婦の激しい息遣いが交差する。
猛吹雪の中、雪かきをしているのは私の家だけだ。
目を開けられない程の強風が作り上げた膝程もある吹き溜まりをスノーダンプに載せて空地へ運ぶ。
「山を築くと運ぶのが大変だから、平らに捨てて」とルンバが寄って来て云う。
近寄らないと声が風で吹き飛ぶからだ。
2時間程前にえりも町の暴風雪警報が解除されたから、もうそろそろこちらも解除されると思うのだが、風の勢いは衰えない。
何とか車を道路まで出せるようになりスリスリが出勤していった。
向いの家は積もった雪を見たくないのだろう。カーテンを開けないで籠っている。
「その場所は陽が当たるから適当にして、こちらを重点的にしよう」と提案する私の声に「そだね」と珍しく素直なルンバ。
夫婦の喘ぐ声が1時間程続き、「もう良いんじゃないか」と一度目の頑張りは終了。
家に入りナイロン地の服を脱いだが、なんと下着にまで雪が浸み込んでいた。
強い風と共に縫い目から吹き込んだらしい。
ストーブの前に新聞紙を広げ、濡れた服を広げた。
ファスナーを閉め忘れていたとルンバの笑い声。
見ると広げたファスナーの奥に水色の婆パンツが見えた。
夕食後に黄色の回転灯を光らせながら大型車が家の前を通り過ぎた。
除雪車が入ったのだ。
除雪車は道路を通りやすくなるので嬉しいのだけれど、構造上除けられた雪が道の端に積みあがる。
と云うことで、また腰痛ベルトを巻いて外へ。
除雪車が築いた石のように硬い雪を突き崩しては運ぶ。
無限地獄のような戦いが また始まった。