難波高島屋の6階の美術画廊で堺の竹工芸家、田辺君の襲名展が行われていた。朝の比較的お客様の少ない時間にお邪魔して、会場を見せていただいた。可愛い奥さんが迎えてくれる。田辺君は10年ほど前、別府の竹の学校に勉強に来ていたが、その時から、別府で学んだ技術に代々受け継がれた感性がプラスされ独特の魅力ある作品を作っていた。やはり、小さい時から養われた感覚というものは大したものである。その後、作家として日本のみならず、海外でも大きな評価を受け、自分の作風を作りつつある。今回の「もののふ」シリーズなどは彼の持ち味が出て素晴らしい物であった。
「職人」と「作家」。竹細工を生業にしていく上で、どちらの方向を目指すのか?意見が分かれるところであるが?彼は作家としての道を、当然、高度な技術と表現方法、その中に彼の主張したいテーマが見えてくる。量産するものではなく、一品物ばかりなので当然高額な作品になってしまうが、美術画廊でハイエンドなお客様に的を絞ったやり方になる。もちろん、この背景には代々受け継がれている「田辺竹雲斎」という大きな看板と、彼の作家としての活動で生まれた価値付けが物を言う。決して、簡単に此処まで来れるわけでは無い。
竹工芸家の名門の家に生まれたプレッシャーなどは、私たちには想像できない物であろう。名家に生まれ、若くして名を成す、しかし、天狗になることなく礼儀正しい彼の人柄はこれからも多くのファンを作っていくのだろう。