高江雅人  竹工芸職人の独り言  竹工房オンセ

高江雅人  竹工芸を初めて37年、徒然なる出来事をアップしています。

職人の置かれた立場

2009年02月21日 08時34分31秒 | 工房

毎年、年初めに工房のメンバーと個別面談をして、「今の工房の状況と今年一年をやる気があるのか?」の話し合いをしている。特に今年は、世界的な経済危機を背景に毎日、毎日、「派遣労働者の解雇だ。人員削減、減益、減収、リストラ……」とそんなニュースばかり流れている中での個別面談であった。

私の所でも、既存の作品群を同じように作っているだけでは、生き残っていけない!新しい作品つくりをしていくので、製作作品が変わることになる旨、話をした。その中で、ある職人さんが、「もう、止めようと思う。丁度良い機会だと思う。」と切り出された。よくよく、話を聞いてみると、以前20年近く厚生年金をかけていたのだが、今の状態の国民年金のままでは、60歳を過ぎてから、少ない国民年金だけでは生活できそうにない。そこであと5年ほど厚生年金の掛けれる会社に勤めて、以前の厚生年金とプラスして、ある程度の年金が貰えるようにしたい!」という事であった。「ある程度の年金が取れるようにしてから、副業的にここに戻ってこれれば?」と。

その後、よくよく話を聞いてみると、この人は結構な頑張り屋さんで、以前は毎月20万円以上生産していた。しかし、「5年ほど遣って、手仕事では、これ以上にはならない!どんなに頑張っても、何年やっても変わらない!」と思った時から、気持ちが切れてしまったそうだ。それからは、どんどん、生産量が減っていった。確かに、一般の社会に比べて、職人の生産量は低い、もっと生産性の良い職種であれば、もっと、もっと、彼のモチベーションを持続できるような対応も出来たかも知れないが、残念ながら、今の私の置かれた状況では無理である。

昨年入ったばかりの職人さんにも「5年を目処に技術を付けなさい!一生懸命やれば、手取りで20万円になるだけの技術は付く。それと、5年間のするだけの仕事は作ってあげる!」と言っている。しかし、手取りの20万円と言っても、サラリーマンの手取りとは違う、その中から健康保険を払い、国民年金を払わなければ為らないのだから。

厳しいけど、これが現実である。

竹工房オンセ

コメント (2)
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