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5:00に岩尾別温泉木下小屋を出発、天候は次第に回復と信じて登ります。北海道の夏山はオプタテシケ以来です。北海道の山は奥行きが深く、足場の悪い、ハードルが高いイメージを持っています。覚悟していましたが、意外にも良く整備された登山道でさすが百名山、ですね。極楽平あたりから、さらに北に位置する硫黄山(1,562m)が見えました。
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大沢出合からは沢筋を伝い斜度を上げます。沢筋と言っても水の流れはなく、初夏であれば一面のお花畑となるのでしょう。
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大沢を登り切ると羅臼平に出ます。広大な這松の広場で、南に羅臼岳山頂、北に三ツ峰(1,509m)を配して実に雄大な眺めです。風が強くなく、日差しがあれば一日中いたくなるような、そういう場所でした。
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羅臼平から山頂までは急な岩登りでした。そもそも僕は高所恐怖症なのでこういうところは勘弁して欲しいのですが、山頂からの眺めには変えられません。そしてその甲斐あって、知床の山々、オホーツク海と国後島、これから登る斜里岳まで一望できました。
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山頂は切り立った岩山です。どのくらい怖がっているかは引けた腰と引き攣った笑顔からご推察ください。
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東には国後島が見えます。反対の西にはウトロ港、あのKAZ1が出航した港も見えます。この船が沈没したとされるカシュニの滝も、この山頂の北西です。今の視界が届く中で多くの方が犠牲になったと思うと、胸が痛みます。
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南は遠音別、海別、斜里岳と続きます。この一帯は、馬鈴薯、甜菜の大産地で、以前は良くこの地を訪れていました。ある冬に見た斜里岳の姿が忘れられません。
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素晴らしい山頂ではあるのですが、どうにも落ち着かず、下山を開始します。下りの時には登りでは目に入らないものが良く見えます。大沢は今も高山植物が多く見られます。
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そして紅葉です。まだ浅い色合いですが、季節は確実に進んでいました。僕はこのくらいの紅葉の始まりが好きです。
先月、8月15日に父が亡くなりました。94歳での、いわゆる大往生です。僕が登山をするきっかけは、幼い頃に父に連れて行かれた登山です。秋田の駒ヶ岳や乳頭山に毎年のように、当時は、登らされたものです。勿論、その時は嫌でたまりませんでしたが、世の常で、大人になって、これを趣味とするようになりました。まだ49日も終わっていませんが、予定していた北海道山行は弔い登山、とこじつけてフェリーに乗ってやってきました。おやじ、これが羅臼岳だよ。
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