居酒屋の灯に佇める雪だるま 阿波野青畝
繁華街に近い裏小路の光景だろうか。とある居酒屋の前で、雪だるまが人待ち顔にたたずんでいる。昼間の雪かきのついでに、この店の主人がつくったのだろう。一度ものぞいたことのない店ではあるが、なんとなく主人の人柄が感じられて、微笑がこぼれてくる。雪だるまをこしらえた人はもちろんだけれど、その雪だるまを見て、こういう句をつくる俳人も、きっといい人にちがいないと思う。読後、ちょっとハッピーな気分になった。『春の鳶』所収。(清水哲男)
【雪達磨】 ゆきだるま
◇「雪兎」 ◇「雪仏」
雪でつくった大小ふたつのかたまりを重ねて、達磨のかたちにしたもの。木炭などで目鼻をつける。
例句 作者
雪兎つくる夫婦に二人の子 木村蕪城
朱の盆に載せて丹波の雪うさぎ 草間時彦
朱の盆に載せて丹波の雪うさぎ 草間時彦
雪達磨眼を喪ひて夜となる 角川源義
かく生きてかく忘れられ雪だるま 有馬朗人
家々の灯るあはれや雪達磨 渡辺水巴
雪だるま笑福亭の門前に 高野素十
もう誰もゐぬ校庭の雪だるま 立花文江
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男