パチンコをして白魚の潮待ちす 波多野爽波
海辺の観光地であろうか
楽しみにしていた「白魚のおどり食い」
もう少しすれば船が戻る
あるいはあと少しで白魚の潮どきだ
作者はそれをパチンコでもして待とうと決めたらしい
ひと時代さかのぼった原風景を味わった
(小林たけし)
日常の中のあらゆる瞬間に「詩」が転がっている。「私」の個人的な事情をわがままに詠えばいいのだ。素材を選ばず、古い情緒におもねらず、「常識」に譲歩せず、そのときその瞬間の「今」を切り取ること。爽波俳句はそんなことを教えてくれる。悩んでいるとき迷っているとき、その人に会って談笑するだけで心が展けてくる。そんな人がいる。これでいいのだ、それで大丈夫だと口に出さずとも感じさせてくれる人物がいる。爽波俳句はそんな俳句だ。これでいいのだ。『骰子』(1986)所収。(今井 聖)
【白魚】 しらうお(・・ウヲ)
◇「しらお」 ◇「白魚捕」(しらおとり) ◇「白魚汲む」(しらおくむ) ◇「白魚網」(しらおあみ) ◇「白魚舟」(しらおぶね) ◇「白魚火」(しらおび) ◇「白魚汁」(しらおじる) ◇「白魚飯」(しらおめし)
シラウオ科の硬骨魚。姿が美しく、煮ると潔白となり、味は淡泊で上品。体長約10センチ。体は瘠型で半透明。春先、河口をさかのぼって産卵。日本の各地に産する。シロウオ(素魚)は外観も習性も本種に似るが別種。しらお。白魚汲む。白魚火。
例句 作者
雨に獲し白魚の嵩哀れなり 水原秋櫻子
白魚の水ごと秤り賣られけり 成田智世子
暮るるころ空晴わたり白魚汁 櫨木優子
やがてまた日暮るゝ橋に白魚舟 角川春樹
白魚の水の色して汲まれけり 伊藤通明
旅装解かぬまま白魚火を見てゐたり 関口祥子
白魚に会ひ酒にあふひと日かな 石川桂郎
白魚や星ことごとくうるみだす 菅原鬨也
白魚にすゞしさの眼のありにけり 石橋秀野
一陣の風の行方や白魚舟 西村風香