strong>竜胆は若き日のわが挫折の色 田川飛旅子
竜胆(りんどう)は、さながら「秋の精」のように美しい。吸い込まれるような花の色だ。しかし、その色を「挫折の色」とする人もいる。花の色が美しいだけに、傷の深かったことが想像されて、いたましい。挫折の中身はもちろん不明だが、失恋などではなくて、むしろ青春期の思想的ないしは政治的な挫折だと私は読んでおく。「挫折」という言葉を俳句で使った人を、他に知らない。ところで、あなたにかつて挫折の時があったとすれば、その「挫折の色」はどんな色でしょうか。(清水哲男)
竜胆】 りんどう(・・ダウ)
◇「笹竜胆」 ◇「深山竜胆」(みやまりんどう) ◇「筆竜胆」
リンドウ科の多年草。茎の梢や葉の腋に、鐘状で先が五裂した青紫色の可憐な花をつける。日中に開花し、夕方や雨の日は閉じる。根は漢方薬で健胃剤となる。
例句 作者
山の日の片頬にあつき濃竜胆 富安風生
雲に触れ竜胆育つ美幌越 大野林火
竜胆に遠きひかりの流れ雲 小口雅広
竜胆や馬柵に掛け干す牧夫服 浦岡泰広
りんだうのひらかぬ紺を供ふなり 柴田白葉女
竜胆や少女の腰に山刀 西本一都
竜胆やかがめば遠嶺も草の丈 花田春兆
竜胆をみる眼かへすや露の中 飯田蛇笏
竜胆や朝はきらめく白馬岳 水原秋櫻子
野に摘めば野の色なりし濃りんだう 稲畑汀子
暁闇にたしかな吐息濃竜胆 たけし
そぼ降るや竜胆そっと吐息せり たけし