行く春や心の中の蓑一つ 長谷川櫂 「初雁」
心象、心奥ののこる思い蓑とは何だろう
もう春も終わろうとするのに私の心はまだ閉じたままだ
きっとこの蓑は墓場まで運ぶほどの秘密めいた
作者だけが知りえた秘密
あるいは他人には明かせない作者自身の秘事かもしれない
(小林たけし)
【行く春】 ゆくはる
◇「春の名残」 ◇「春の別れ」 ◇「春の限り」 ◇「春の果」 ◇「春逝く」(はるゆく) ◇「春を送る」 ◇「春尽」(しゅんじん) ◇「春尽く」 ◇「春の泊」(はるのとまり)
まさに終わろうとする春。暮れの春と同義であるが、行く春というと詠嘆が加わる。
例句 作者
逝く春や木綿豆腐の生成いろ 楠原幹子
ゆく春やおもたき琵琶の抱ごゝろ 蕪村
春尽きて山みな甲斐に走りけり 前田普羅
ゆく春の田螺ほろりと沈みけり 小島 健
行春や版木にのこる手毬唄 室生犀星
行春を近江の人とおしみける 芭蕉
ゆく春や四国へわたる旅役者 吉井 勇
ゆく春や屋根のうしろのはねつるべ 久保田万太郎
園の戸に鎖おろす春の名残かな 几菫
ゆく春の阿修羅の声を聴きたしや 大野崇文
ゆく春やおもたき琵琶の抱ごゝろ 蕪村
春尽きて山みな甲斐に走りけり 前田普羅
ゆく春の田螺ほろりと沈みけり 小島 健
行春や版木にのこる手毬唄 室生犀星
行春を近江の人とおしみける 芭蕉
ゆく春や四国へわたる旅役者 吉井 勇
ゆく春や屋根のうしろのはねつるべ 久保田万太郎
園の戸に鎖おろす春の名残かな 几菫
ゆく春の阿修羅の声を聴きたしや 大野崇文