竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

宿下駄のびっこひゃっこや春の雪 たけし

2022-02-28 | 今日の季語で一句


宿下駄のびっこひゃっこや春の雪 たけし

山間の温泉地のこと
朝起きると雪が舞っている
流石に3月ともなれば暖かく
雪の叙景はうれしい眼福だ
外に出て心なしか気がはしゃぎ
つっかけちゃ下駄のびこひゃっこもご愛敬だ
(たけし)



春の雪】 はるのゆき
◇「春雪」
春になって降る雪。冬の雪と違い、溶けやすく、降るそばから消えて積もることがない。大きな雪片の牡丹雪になることが多い。

例句 作者

忘恩の春の雪降り積りけり 上田 操
春雪をふふめば五体けぶるかな 加藤耕子
火をすこし二階にはこぶ春の雪 丸山しげる
刈り込みの丸きへ丸く春の雪 良知うた子
湯屋までは濡れて行きけり春の雪 来山
うつすらと中洲のかたち春の雪 広渡敬雄
春雪のあとの夕日を豆腐売 大串 章
春雪に火をこぼしつつはこびくる 橋本鶏二
春の夜の雪のひそかにしたたかに 清水青風
手鏡の中を妻来る春の雪 野見山朱鳥

耕や声のかさなる午後三時 たけし

2022-02-27 | 今日の季語で一句


耕や声のかさなる午後三時 たけし

2月も下旬になると春耕だ
ときおり冷たい風を感じながらも
耕人の顔は華やいでいるように見える
待ちかねた春、農作業をできる幸せの顔だ
お茶の時間が近づくと、あちこちで呼び交う声がする
(たけし)


春(三春)・生活・行事
【耕】 たがやし
◇「耕」 ◇「耕す」 ◇「春耕」(しゅんこう) ◇「耕人」 ◇「耕牛」(こうぎゅう) ◇「耕馬」(こうば) ◇「耕耘機」
田返すの意。冬の間手入れをしない田や畑の土を起こして、植え付けの準備をする。かって、春の野良には、営々として鋤鍬をふる人や、牛や馬にすきをひかせて、着々と土を鋤起こして行く真剣な姿が見えたが、今では機械化され大分様子が違ってきた。

例句 作者

遠目には耕しの鍬遅きかな 福永鳴風
耕して天にのぼるか対州馬 角川源義
耕してふるさとを捨てぬ一俳徒 大木さつき
耕していちにち遠き父祖の墓 黛 執
耕牛やどこかかならず日本海 加藤楸邨
気の遠くなるまで生きて耕して 永田耕一郎
春耕の振り向けば父き消ゆるかな 小澤克己
春耕や熊野の神を住まはせて 鈴木太郎
耕人に余呉の汀の照り昃り 長谷川久々子
千年の昔のごとく耕せり 富安風生


蕗の薹やっぱり空は青かった たけし

2022-02-26 | 今日の季語で一句


蕗の薹やっぱり空は青かった たけし

天候異変 世情不安
今日の平穏が明日は保証されていない
空の青さに安堵する
蕗の薹の安堵の気息
(たけし)


春(初春)・植物
【蕗の薹】 ふきのとう(・・タウ)
◇「春の蕗」 ◇「蕗の芽」 ◇「蕗の花」
きく科の多年草。早春まだ野山に雪が残っている頃、土手の上や藪影に、萌黄浅緑色の花穂を土中からもたげる。花の開かぬ前に摘み取って食べるとほろ苦い春の味がする。蕗味噌。

例句 作者

花蕗をわけて石狩川となれ 長谷川かな女
襲ねたる紫解かず蕗の薹 後藤夜半
みほとけの素足はるけし蕗の薹 原 和子
山峡をバスゆき去りぬ蕗の薹 三好達治
円墳の一処ほころび蕗の薹 中山嘉代
蕗の薹まじめな貌の山ばかり 倉橋弘躬
蕗の薹おもひおもひの夕汽笛 中村汀女
師弟ほどのへだたり蕗の薹二つ 今瀬剛一
水ぐるまひかりやまずよ蕗の薹 木下夕爾
蕗の薹傾く南部富士もまた 山口青邨


どの顔も信じる未来龍太の忌 たけし

2022-02-25 | 今日の季語で一句


どの顔も信じる未来龍太の忌 たけし

どの子にも涼しく風の吹く日かな 飯田龍太
今日の季語は龍太の忌 平成19年2月25日没
私はこの<どの子にも・・・>の句が最も好きな句だ
本歌取りのようだが
龍太の子供らへの深い愛の眼差しを感じ得た句
(たけし)




例句 作者

龍太の忌近づく梅の空まさを 小坂智恵子
朧より波の切先龍太の忌 伊丹さち子
梅の空ことに芳し龍太の忌 遠井俊二
紅白の梅の遅速も龍太の忌 遠井俊二
龍太忌や二月の谷に耳澄ます 石川のぶよし
龍太亡き虚空さまよふ春の鳶 山口正

春の水五感に満たす花手水 たけし

2022-02-24 | 今日の季語で一句


春の水五感に満たす花手水 たけし

手水舎に花手水
なんとも春は爛漫である
五感どれにも春を告げる
(たけし)


春(三春)・地理
【春の水】 はるのみず(・・ミヅ)
◇「春水」(しゅんすい) ◇「水の春」
春の、満々たる水量の川や湖沼の水。感触は冷たくなく、ぬるむ水の感じである。

例句 作者

春の水とは濡れてゐるみづのこと 長谷川 櫂
暮れつつも物ながれゆく春の水 多田裕計
春水と行くを止むれば流れ去る 山口誓子
浮かぶものなく春水の平かに 辻本斐山
春水の鳴り流るるを子に跳ばす 細見綾子
春水や蛇籠の目より源五郎 高野素十
春水のほとりに麩屋のありにけり 鈴木しげを
両の手に提げてたぷたぷ春の水 梅本豹太
あふれんとして春水は城映す 今瀬剛一
一つ根に離れ浮く葉や春の水 高浜虚子

しばらくは生気のままに落椿 たけし

2022-02-23 | 今日の季語で一句


しばらくは生気のままに落椿 たけし

見事な五弁の椿がポトリと落ちる
その鮮やかな彩は生気そのままだ
椿はおのれの落首を知らぬ気である
(たけし)


春(三春)・植物
【椿】 つばき
◇「白椿」 ◇「紅椿」 ◇「藪椿」 ◇「山椿」 ◇「八重椿」 ◇「落椿」 ◇「乙女椿」 ◇「玉椿」
ツバキ科の常緑樹。藪椿は暖地に自生、高さ数メートルに達する。春、赤色大輪の五弁花を開く。園芸品種が極めて多く、花は一重・八重、花色も種々。乙女椿は桃色で、八重。花はそのままのかたちで落ちるので,目に付き、根元に多く落花している様は美しい。

例句 作者

落つるまで海鳴りきゝし椿ならん 安達しげを
ふり出して雪ふりしきる山つばき 森 澄雄
落椿まだ藪を出ぬ魂ひとつ 丸山海道
落椿まだ藪を出ぬ魂ひとつ 丸山海道
落椿われならば急流へ落つ 鷹羽狩行
落椿昨日は沖のごとくあり 田川飛旅子
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 石田波郷
気安さの数を咲かせて薮椿 谷口智鏡
落つる時椿に肉の重さあり 能村登四郎
藪椿おちてより色あたらしき 酒井弘司


三寡婆のなれそめ話春炬燵 たけし

2022-02-22 | 今日の季語で一句


三寡婆のなれそめ話春炬燵 たけし

人生百年時代の到来とはいへ
男は女より平均で10年ほど短命らしい
残った寡婦はみな90才に近いのだが
なんとも元気
先だった夫が案ずることは何もない
今日は今日とて三婆がそろった
炬燵に入って先だった亭主との馴れ初めはなしに花を咲かせている
(たけし)


春(三春)・生活・行事
【春炬燵】 はるごたつ
春になっても片付けてしまわずに、まだ使う炬燵。東京の2月の平均温度は摂氏4度ぐらいなので、相当に寒さを感じる。3月末ごろまでは炬燵が欲しい。

例句 作者

忘れもののやうに母ゐる春炬燵 猪口節子
小説の女に惚れて春炬燵 原 赤松子
火を足して人無き春の炬燵かな 京極杞陽
ひといろに湖昏れてゆく春炬燵 斎藤梅子
書を置いて開かずにあり春火燵 高浜虚子
ことば尻とらへられたる春炬燵 神崎 忠
春炬燵風北寄りに変りけり 永方裕子
春炬燵みんな出かけてしまひけり 黛 執
借りて読む七番日記春炬燵 黒田杏子
家々の春の炬燵や三国町 成瀬正とし

春兆す雲に零れる轍魚かな たけし

2022-02-21 | 今日の季語で一句


春兆す雲に零れる轍魚かな たけし

2月の寒さもどうにか和らいできた
冬耕の轍に溜まった水たまりに
小さな魚が蠢いている
雲が映っていちぇまるでその雲から零れてきたよう
(たけし)


春(初春)・時候
【春めく】 はるめく
◇「春動く」 ◇「春兆す」
春らしい気候になる事。春めいてくる気配が感じられるのである。

例句 作者

空も星もさみどり月夜春めきぬ 渡辺水巴
砂場に砂どかと足されて春きざす 小林清之介
春めきし山河消え去る夕かげり 高浜虚子
春めきてものの果てなる空の色 飯田蛇笏
水の影春めく障子あけにけり 野村泊月
片手ぶくろ失ひしより春めくや 及川 貞
銭湯の春めく暖簾くぐりけり 佐々木 咲
雪車立てて少し春めく垣根かな 一茶
草よりも影に春めく色を見し 高木晴子
春めくと雲に舞ふ陽に旅つげり 飯田龍太


枝垂梅空の真澄を折り返す たけし

2022-02-20 | 今日の季語で一句


枝垂梅空の真澄を折り返す たけし

雲一つない真っ青に澄み切った空
その下に見事な枝垂梅の古木
思わず浮かんだ<折り返す>の表意でした
(たけし)

春(初春)・植物
【梅】 うめ
◇「白梅」 ◇「野梅」(やばい) ◇「飛梅」(とびうめ) ◇「臥竜梅」(がりゅうばい) ◇「枝垂梅」 ◇「老梅」 ◇「梅林」 ◇「梅園」
バラ科の落葉高木。古く中国より渡来。百花にさきがけて開く花は、五弁で香気が高く、古来春を告げる花として、和漢の詩人、画家に、その清香、気品を愛されている。万葉時代は花といえば埋めであった。花の色は白・紅・薄紅、一重咲・八重咲など多様。

例句 作者

此谷の梅の遅速を独り占む 高浜虚子
借景の天城嶺も暮れ梅月夜 小川斉東語
梅咲いて十日に足らぬ月夜かな 暁台
梅林の高さに夕日落ちんとす 吉原一暁
白梅のあと紅梅の深空あり 飯田龍太
我れ去れば水も寂しや谷の梅 渡辺水巴
青空に触れし枝より梅ひらく 片山由美子
山の日の移りて梅の白さかな 福島壺春
白梅の影白梅へ伸びてをり 柏木喜美恵
白梅や老子無心の旅に住む 金子兜太


雨水かな老農の採る塵芥 たけし

2022-02-19 | 今日の季語で一句


雨水かな老農の採る塵芥 たけし

農作業の始動も近い
用水路の水嵩は低いが堰に溜まった塵芥を
老農夫が綺麗にしている
雨水に相応しい光景だ
(たけし)


春(初春)・時候
【雨水】 うすい
二十四節気の一。陰暦で正月の中頃。陽暦で2月18、19日ごろ。「雨水がゆるみ、草木の芽が萌え出るころ」の意。

例句 作者

水をもて土を癒しぬけふ雨水 辻 美奈子
扁桃腺赤々として雨水かな 仲原山帰来
亡命は雨水の頃に夜の闇に 小野元夫
雨水とは辞書を頻りに繰る一日 澁谷 道

春の潮追いて追われて老いにけり たけし

2022-02-18 | 今日の季語で一句


春の潮追いて追われて老いにけり たけし

海は勇気と挑戦のエールを惜しみない
春潮は色も濃く香もこころなしか強い
そのエールは退却や挫折を許さない
トライ&トライの来し方に後悔はない
(たけし)



【春の潮】 はるのしお(・・シホ)
◇「春潮」
春になると潮の色は藍色が淡くなり、明るく澄んでくる。干満の差が大きくなり、干潮時にはひろびろと干潟を残して落ちてゆく。

例句 作者

春潮といへば必ず門司を思ふ 高浜虚子
春潮に飽かなく莨すひをはる 横山白虹
春潮を観る黒髪を身に絡み 石原八束
春潮の底とどろきの淋しさよ 松本たかし
累々と熔岩春潮のそこひまで 小川斉東語
水哭くや弥生十日の大潮に 戸恒東人
春潮に指をぬらして人弔う 橋本多佳子
春潮の入水に叶ふ色といふ 吉田汀史
春潮の上に月光の量を増す 飯田龍太
ひたひたと春の潮うつ鳥居かな 河東碧梧桐

春満月嘘にうなずく母ありき たけし

2022-02-17 | 今日の季語で一句


春満月嘘にうなずく母ありき たけし

昨年の2月の句会で主宰の特選を得た作
句意は平明だが句会では好評だった
だれにでも無条件に味方してくれる母が居た
無き妣に寛大な春の月を取り合わせた
(たけし)


春(三春)・天文
【春の月】 はるのつき
◇「春月」(しゅんげつ) ◇「春月夜」 ◇「春満月」 ◇「春三日月」
春の月は橙色を深めてぼってりとしている。いくぶんぼんやりとして、ほのぼのとした風情がある。

例句 作者

酒蔵は酒醸しつつ春の月 山田弘子
熊笹に虫とぶ春の月夜かな 前田普羅
春の月一重の雲に隠れけり 正岡子規
春月の出にいとまある浜明り 上田五千石
もの忘れせし手つめたし春の月 松村蒼石
春月に瑪瑙色あり大伽藍 森 澄雄
春の月寝つきたる子の涙あと 福田和子
春の月産湯をすつる音立てゝ 石

春服を買う好日のしるし たけし

2022-02-16 | 今日の季語で一句


春服を買う好日のしるし たけし

無為無聊の晩節
刺激のない毎日だが
久の外出
町は明るく人の装いもすっかり春
古い草臥れた服ばかりの自分に春服を買った
余命を考えたら何もできない
今日という好日の記念だ
(たけし)

春(三春)・生活・行事
【春服】 しゅんぷく
◇「春服」(はるふく) ◇「春の服」 ◇「春装」(しゅんそう) ◇「春の着物」
春になって身につける洋服のこと。明るい柄や色彩のものが多い。

例句 作者

人形の春服人の前に立つ 阿波野青畝
春服や武家町ふかく鴎来る 大峯あきら
春の服買ふや余命を意識して 相馬遷子
春装に真間の継橋踰えゆけり 大野林火

涅槃西風ひと日かぎりの仏徒かな たけし

2022-02-15 | 今日の季語で一句


涅槃西風ひと日かぎりの仏徒かな たけし

仏教徒でなくとも仏像の前では
厳粛な気持になる
大きな足を投げ出して空を見上げる寝釈迦は
あまり有難くないお姿だが
なんでも聞いてくれそうな親しみがある
今日只今だけの仏心をも疑わない
気持ちの良い爽やかな風があたりを包んでくれている
(たけし)


春(仲春)・宗教
【涅槃会】 ねはんえ(・・ヱ)
◇「涅槃」 ◇「お涅槃」 ◇「涅槃像」 ◇「涅槃図」 ◇「涅槃絵」 ◇「寝釈迦」(ねしゃか) ◇「涅槃寺」 ◇「仏の別れ」 ◇「常楽会」(じょうらくえ)
陰暦2月(今は3月)15日。釈迦入滅の日。涅槃像を掲げ遺教経を読誦し、涅槃会を営む。毎年この会のころ降る雪を「涅槃雪」といい、「雪の果」という。またこの頃吹く西風を「涅槃西風」と言っている。春の農事の初めの日として、祭日にしている地方も多い。

例句 作者

山寺や涅槃図かけて僧一人 星野立子
人々の眼のなまなまし涅槃見る 飯田蛇笏
涅槃図に洩れて障子の外の猫 村越化石
山うらに赤き日のある寝釈迦かな 佐々木 咲
涅槃会の水に穴あく鯉の口 三橋敏雄
緋の色の他は薄れて涅槃絵図 田所節子
物臭さの屋根に雪積む涅槃かな 市掘玉宗
葛城の山懐に寝釈迦かな 阿波野青畝
涅槃図の嘆きに燭の揺らぎけり 栗原憲司
青鬼の背中が泣いて涅槃絵図 福神規子


魚は氷に上るハモニカはスナフキン たけし

2022-02-14 | 今日の季語で一句


魚は氷に上るハモニカはスナフキン たけし

魚氷上(うおこおりをいでる)七十二候がそのままの季語
孤独の達人といわれるスナフキンも
春が身近になってくると
ハモニカの独唱に余念がない
(たけし)


春(初春)・時候
【魚氷に上る】 うおひにのぼる(ウヲ・・)
春になって氷が割れ、魚が氷の上に躍り上るということ。中国古代の天文学による七十二候の一。陽暦で、おおよそ2月10日から19日の頃に当たる。

例句 作者

魚は氷に上り鳴り出すオルゴール 吉田鴻司
山影や魚氷に上る風のいろ 鷹羽狩行
氷に上る魚や夕星したたれる 六本和子
魚は氷にのぼり宇宙に星生まる 中村多阿子