殉死者の墓に寄りそい犬ふぐり 2016-03-31 | 入選句 殉死者の墓に寄りそい犬ふぐり 犬ふぐりの色は春の空のいろ ちいさくてめだたないが どんな花よりもはやく春を告げる 花々が咲き乱れる春本番にはみむきもされない 殉死の兵の些末な小さな墓にそっと寄り添っていrた 入選 2015/3/17 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
花菜漬その送り手の訃報来て 2016-03-30 | 入選句 花菜漬その送り手の訃報来て 毎年信州の友人が山菜の漬物を送ってくれていた 昨年同じようにいただいたのだが その袋を開かないうちに 本人の訃の知らせが奥様からあった 礼も云えない悲しさは言葉にならない 入選 2015/5/9 下野新聞 速水峰邨選
皺ぶきの顔を連ねて小豆粥 2016-03-29 | 入選句 皺ぶきの顔を連ねて小豆粥 季節外れの季題でお恥ずかしい 春の俳句を整理しているところです 季節のうつろうに必ず食事の慣習があるのがこの国 失いたくないもののひとつです 入選 2015/2/23 下野新聞 速水峰邨選
切っ先はまだ尖らせず青芒 2016-03-28 | 春 切っ先はまだ尖らせず青芒 月に似合う枯芒の風情も好みだが 春先の青々としたやさしい芒がすきだ まだ切っ先もやわらかく 春の芽吹きはほかの草花となかよくしている
渡良瀬の花野撫肩風化仏 2016-03-26 | 春 渡良瀬の花野撫肩風化仏 写真は今朝の窓からのもの 渡良瀬遊水地で毎年行われる葦焼の煙だ 風のよわい今頃の季節に行われる 害虫を廃止下萌を促す すこしたてば一面の花野もうれしい 風化物仏もやさしい風体となる
風薫るみな誘われし葉の多弁 たけし 2016-03-25 | 入選句 風薫るみな誘われし葉の多弁 たけし 芽吹きのあとは花の季節 そして若葉の薫る風が心地よい日がつづく 外へ外へと身も心も能動的だ 物静かな人もこころなし多弁のように感じる 入選 2014/6/18 産経俳壇 宮坂静生選
田水張る俄かに雲の立ち上がる たけし 2016-03-23 | 入選句 田水張る俄かに雲の立ち上がる たけし 田圃に水を張る季節が近い この頃になると空の雲の様相も変化してくる 春は天空も忙しい 入選 2014/6/17 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
遺すものなんにもなくて芝焼きぬ 2016-03-21 | 春 遺すものなんにもなくて芝焼きぬ 芝焼きは毎年3月にしている 害虫の育たぬ前での殺生だが 芝の芽吹きを促すことにもなる ふと子供や孫への遺すものの 何もないのが正解なのだと気が軽くなった
苗札の文字半分は土の中 たけし 2016-03-20 | 入選句 苗札の文字半分は土の中 たけし ご近所の庭がきしって華やかになっている 花壇作りの苗の植え込みが盛んだ 多年草や球根も芽吹きだしている 新しい品種は苗札を挿してはいるが 土中にしっかり挿すのでその素性ははっきりしない 入選 2014/4/7 下野新聞 宋岳人選
啓蟄やオイルの足りぬ我が体 たけし 2016-03-19 | 入選句 啓蟄やオイルの足りぬ我が体 たけし 啓蟄は性格には「蟄虫戸を啓く」」と云うのだそうだ 言葉の味わいが深くなる この言葉を聞くと人もこの国のイキモノだと実感する 体中がムズムズして行動的能動的になるのが分かる 節々の乾いた音はオイルふそくだろうか 入選 2014/4/7 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
春光る鳶の笛に磨崖仏 たけし 2016-03-18 | 入選句 春光る鳶の笛に磨崖仏 たけし 宇都宮市の大谷観音である 2500万年前の火山灰に 多種多量の私物の化石が混入している 地球の奥万年の歴史の証明だ この観音像は春が相応しい 鳶が天空高く飛びながら笛をふく この星のいやさかを唄うようだ 入選 2014/3/31 下野新聞 木島松竅選
晩学に手応え少し春立ちぬ たけし 2016-03-17 | 入選句 晩学に手応え少し春立ちぬ たけし 若いころにあった志を掘り返すように 還暦をすぎた人たちがみな学んでいる 絵画・オカリナ・書道・写真・陶芸・俳句・太極拳 趣味とはいわず晩学に近いと感じる 老いさらばえることへの挑戦鴨知れない 結果が評価されたりすれば それはもう少年のように紅潮をはばからない 入選 2014/2/24 下野新聞 宋岳人選
たくさんの生命の響き雪解川 たけし 2016-03-16 | 入選句 たくさんの生命の響き雪解川 たけし 山の雪が緩んでくると 川の様相は変わってくる 雪解けが水が昼夜をまたず長い旅をする 大会までの旅の途中で彼方此方の山からの 雪解の仲間と合流する 眠っていた大地の鼓動は 森羅万象に春を告げている 入選 2014/3/18 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
招いたり追いやったりよ菖蒲束 2016-03-15 | 春 招いたり追いやったりよ菖蒲束 菖蒲湯にはまだ早いが 菖蒲のあの深い緑は他にはない 娘が幼い頃、孫が小さい頃 入浴はいつも長くなって家人にたしなめられた 旅行先での菖蒲湯では 自分の来し方を辿ってみたりで 菖蒲束を手に遊んだ記憶はふるくはない
松の薦はずせば蟲の這い出ずる たけし 2016-03-14 | 入選句 松の薦はずせば蟲の這い出ずる たけし 寒い季節、松の木などに巻かれていた薦をはずすと 見事なほどに たくさんの虫が這い出てくる 子の虫を寄生虫とは言わないで 寄居虫と言うのだそうだ 共存するのは生き物の知恵であり摂理なのだと知る 入選 2013/4/21 下野新聞 木島松竅選