竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

寝袋をかつぎ黄金週間へ 滝沢伊代次

2021-04-30 | 今日の季語


寝袋をかつぎ黄金週間へ 滝沢伊代次

ゴールデンウィークの過ごし方は人それぞれだ
昨年今年はなべて自粛で巣ごもり週間となったが
作者は一人、寝袋をかついで出かけるよ言う
慣れ親しんだ山へ行くのが習慣のようだ
(小林たけし)


黄金週間
四月末から五月初めにかけての休日の多い週をさす。黄金週間、
大型連休とも。観光地や各イベント会場はにぎわい、交通機関が
混雑する。「ゴールデンウィーク」は和製英語。

例句 作者

ジャムの渦に終わりぬ黄金週間は 高野ムツオ
チーズケーキつるんと黄金週間 松本 翠
厨出ては入りてはゴールデンウィーク了ふ 寺岡捷子
子を看護り黄金週間須臾に過ぐ 轡田 進
砂丘より足跡ゴールデンウィーク 檜 紀代
靴きゆんと鳴らして黄金週間了る 清水衣子
大型連休とや万年床から首出して 前田吐実男
電池替えて黄金週間の義足 関谷寛一呂
黄金週間泣いてみるのもひまつぶし 横須賀洋子
GWの窓からピアノ飛びだした 武藤童山
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春雷や通夜の写真の笑いすぎ たけし

2021-04-28 | 入選句


春雷や通夜の写真の笑いすぎ たけし



角川俳句5月号夏井いつき先生の兼題 <通>の選をいただきました

角川俳句は雑詠部門での選は多数の選者がおられるので

どなたの選をいただけるかは不明なのですが

この兼題部門は夏井先生お一人なのでなかなか選は難しい



久しぶりに掲句が佳作に採っていただいた



通夜に参列した際の遺影の

あっけらかんとした笑顔に悲しみは増長されてくる

おりからの春雷

ほとけの別れの霊音のように思える

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魚島の瀬戸の鴎の数しれず 森川暁水

2021-04-26 | 今日の季語


魚島の瀬戸の鴎の数しれず 森川暁水

瀬戸の鯛の産卵時の光景を
魚島とは言いえたり
海も空も激しく荘厳な生のいとなみ
魚島の季語を識るだけで句意は明快だ
(小林たけし)


【魚島】 うおじま(ウヲ・・)
外海の鯛が産卵のため瀬戸内海に入り込み、群がって水面に盛り上がり、さながら小島のような感じを呈する状態。その最盛期は、おおむね4月20日前後が多いという。

例句 作者

魚島の舟待つ犬は尾を立てて 辻田克巳
うを島をいを島といひ鮒の湖 湊君子
魚島をとほくに母の母らしく 大石雄鬼
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死ぬ人の大わがままと初蛙 飯島晴子

2021-04-24 | 今日の季語


死ぬ人の大わがままと初蛙 飯島晴子

死ぬ人の大わがまま
この措辞がなんとも深い悲しみを
そして個人への非難までもを採ろしていて胸に迫る
初蛙とは通夜の帰途での出会いだろう
ただ合唱するその声がまた悲しみを囃すように感じる
(小林たけし)


【蛙】 かわず(カハヅ)
◇「蛙」 ◇「赤蛙」 ◇「殿様蛙」 ◇「土蛙」 ◇「初蛙」 ◇「遠蛙」(とおかわず) ◇「昼蛙」 ◇「夕蛙」
カエル目(無尾類)の両生類の総称。色は多彩、種によっては変色する。蛙の鳴声は春から夏にかけての欠かせぬ風物詩である。古来、人間生活に近い存在で、田や雨の神とする地域もある。かえる。殿様蛙。初蛙。遠蛙。昼蛙。夕蛙。

例句 作者

水中に逃げて蛙が蛇忘る 右城暮石
漣の中に動かず蛙の目 川端茅舎
牛蛙途上の思いばかりなり 和知喜八
田の蛙月を揺らして鳴きにけり 田端将司
田蛙の囃すよ我が師と決めしより 小野元夫
田蛙の赤胴ごゑや月ひとつ 亀田蒼石
眠れぬ夜萬の蛙の暗黒と 鈴木六林男
眠れねば眠らぬことよ遠蛙 仙田敬子
祝電を打ってその夜の遠蛙 髙際君子
結論の出ぬ集会や遠蛙 小野玉桂


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ゆびきりの指が落ちてる春の空 坪内稔典

2021-04-23 | 今日の季語


ゆびきりの指が落ちてる春の空 坪内稔典

指が空に落ちるわけもないが
はるかなる昔日の指切りを
春の青い空をみて懐かしく思ったのだろう
だれにでも甘酸っぱい青春はあったのだ
(小林たけし)


【春の空】 はるのそら
◇「春空」 ◇「春天」
春の空は、雲のない青空でもほの白く溶かしたような色をしている。その色を「浅緑」と形容している。のどかな日光がかがやいて、明るく麗らかな感じがする。

例句 作者

巻き登るつるあぢさゐの春の天 大西岩夫
手を容れて冷たくしたり春の空 永田耕衣
春の空刹那で区切る観覧車 松王かをり
春天に鳩をあげたる伽藍かな 川端茅舎
春空に虚子説法図描きけり 阿波野青畝
死は春の空の渚に遊ぶべし 石原八束
箒星来るといふ日の春の空 金山桜子
象の鼻ゆるやかな弧を春の空 加藤瑠璃子

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千里より一里が遠き春の闇 飯田龍太

2021-04-22 | 今日の季語


千里より一里が遠き春の闇 飯田龍太

里は距離をはかる単位だが
人との距離は理屈でははかればい
春の夜旧恩の人への不義理を思うこともありそうだ
(小林たけし)


【春の闇】 はるのやみ
月のない春の夜のおぼろに暗いのをいう。神秘的で、それと定めがたい不安な感じがある。柔らかい、薄絹をかけられた闇が、万物を匂やかに塗りこめる。そういう情感が春の闇の心持といえる。

例句 作者

石臼を廻せば廻る春の闇 小田津音
帰り来てこのまま春の闇に座す 石川旭峰
をみなとはかゝるものかも春の闇 日野草城
慧星の尾に目を凝らす春の闇 福田和子
春の闇渚も音ををさめけり 田村木国
春の闇よりつぎつぎに涛頭 清崎敏郎
大涛が動かしゐるや春の闇 青木月斗
めつむりてひらきておなじ春の闇
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掘り返す塊光る穀雨かな 西山泊雲

2021-04-20 | 今日の季語


掘り返す塊光る穀雨かな 西山泊雲

句意は明解でリズムが心地良い
格調もあってこれぞ俳句の感じだ
つちくれの響きが穀雨にしっかりと底通している
句材は現代にはフイットしないが貴重な句として記憶した
(小林たけし)


【穀雨】 こくう
二十四節気の一。清明の後15日。陽暦4月20日頃。春雨が降って百穀を潤し芽を出させるという意。

例句 作者

石臼のはればれ打たる穀雨かな 滝沢伊代次
伊勢の海の魚介豊かにして穀雨 長谷川かな女
あれこれと母に買ひ置く穀雨かな 川上弘子
白隠像眼の炯々と穀雨かな 本宮鼎三
地図になき村しんかんと穀雨かな 宇井十間
父在らば何を蒔くらむ穀雨の日 竪阿彌放心
穀雨かな世の一隅に安らぎて 松本文子
穀雨かな固まるまでの皮膚呼吸 奥山和子
穀雨なる決断の指開きつつ 松田ひろむ
穀雨来て村は一気に華やげり 山内康典


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芽柳の光とび交ふ城下町 大庭きぬ江

2021-04-17 | 今日の季語


芽柳の光とび交ふ城下町 大庭きぬ江

吟行か、いずれにしても訪れた地での句だろう
濠渕の柳は平凡だが旅先での作句としてはじゅうぶんだ
(小林たけし)


【柳の芽】 やなぎのめ
◇「芽柳」 ◇「芽ばり柳」
中国原産の高さ10メートルに達する落葉高木の芽。芽柳・目ばり柳ともいう。柳には20種以上の種類がある。早春、伸び始めた新枝に萌黄色の新芽が吹き出し、枝垂れるさまは、いかにも春の風情である。葉の出る前に黄緑色の花が咲くが、芽の美しさに比べて、余り気をひかない。

例句 作者 

川風にままよままよと芽の柳 今井園子
芽柳の音符すばやく盗まれる 山崎文子
芽柳は漂流民のあおさかな 堀之内長一
芽柳やコキコキ廻す首の凝り 公文弘子
退屈なガソリンガール柳の芽 富安風生
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田楽に舌焼く宵のシュトラウス 石田波郷

2021-04-16 | 今日の季語


田楽に舌焼く宵のシュトラウス 石田波郷

石田波郷に
こんな句があるとは少し驚いて
救われた気持ちになった
波郷の心落ち着いた春宵を感じる
田楽とシュトラウスの絶妙さは
おそらく実体験だろうと思われる
(小林たけし)


【田楽】 でんがく
◇「木の芽田楽」 ◇「田楽焼」 ◇「田楽刺」 ◇「田楽豆腐」
山椒の芽を味噌に擂りまぜて方形に切った豆腐に塗り、串に刺し、火にあぶった料理

例句 作者

打興じ田楽食うて明日別る 大野林火
田楽や山家に揃ふ織部皿 水原秋櫻子
宿世にか田樂の串抜きしよな 中原道夫
一軒が田楽茶屋として今も 新村寒花
田楽を喰らひ悪態ひとくさり 井坂景秋
田楽に夕餉すませば寝るばかり 杉田久女
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春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子

2021-04-15 | 今日の季語


春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子

鎌倉の春の浜辺だろう
だれが描いたか大きな円がくっきりと見える
人はいないが何かの後に相違ない
親子は子供らの集団化
句意には春の和み、安寧などが流れている
(小林たけし)

【春の海】 はるのうみ
◇「春の浜」 ◇「春の渚」 ◇「春の磯」
春の、明るくきらめいている長閑な海。のたり、のたりと静かに悠長な感じ。

例句 作者

春の海 戦陣訓の散りにけり 谷山花猿
春の海かく碧ければ殉教す 岩岡中正
春の海のたり潜望鏡が出る 梅原昭男
春の海まつすぐ行けば見える筈 大牧広
春の海一灯つよく昏れにけり 桂信子
春の海億光年のいのち満つ 飯島昭子
春の海名句それぞれ屹然と 彦坂範子
春の海小波を寄する巨き船 今井操庵

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誘われて風の残花の中にいる 寺井谷子

2021-04-14 | 今日の季語


誘われて風の残花の中にいる 寺井谷子

どのような誘いなのかは読み手の鑑賞次第
残花の中の風を感じながら
思い人を待っているとと思いたくなる
現代の代表的な女流俳人の青春がまぶしい
(小林たけし)


【残花】 ざんか(・・クワ)
◇「残桜」(ざんおう) ◇「残る花」 ◇「名残の花」 ◇「残る桜」
散り残った花。春も末の頃、咲き残った桜の花のこと。

例句 作者

上人に一人の客や残る花 高野素十
月明に名残りの花のとびにけり 茨木和生
残る花それもしきりに散つてをり 藤﨑久を
現つなや花も名残りの甲斐の空 中村苑子
登り来て残花の雨に見えけり 吉田鴻司
にんげんのほのめきわたる残ん花 松澤昭
残花残照さすらう雲がかたち変え 村田まさる
残花残照俳句は時空の座標軸 益田清
殘花かな藤田湘子のめがねかな 八田木枯
鐘一打残花の道を辿りけり 藤本和子

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鶏合せ水吹く祖父の目に気合 たけし

2021-04-12 | 入選句


鶏合せ水吹く祖父の目に気合 たけし

2021年4月10日 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選を頂きました

この句は私の幼少時代の実景です
祖父は軍鶏の闘鶏の差配をしていたようで
軍鶏を篭に入れて関東一円を旅していたようでした

横浜市内でも戸塚や保土ヶ谷で行われていて
お祭りのように出店が出るほどの賑わいもありました
私も祖父にまとわりついて何度も行きました

いざ土俵(茣蓙を敷き茣蓙で円を作って作る))に軍鶏を放つ前に
決まって祖父は口に水を含んで
軍鶏に一気に吹きかけます
軍鶏に戦いの前の気合を入れるのです

実は祖父自身に気合が入るのです

軍鶏と祖父を詠んだ句を何度かトライしましたが
今回初めて選をいただきました
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うつくしき嘘朧夜の腕伸ばす 久行保徳

2021-04-10 | 今日の季語


うつくしき嘘朧夜の腕伸ばす 久行保徳

嘘をついたのは吾子かそれとも思い人か
いずれにしても作者の愛の深さを語っている
朧夜となれば青人か
伸ばす腕は抱擁の初手だろうと感じさせる
(小林たけし)


【朧】 おぼろ
◇「朧夜」(おぼろよ) ◇「草朧」 ◇「鐘朧」 ◇「影朧」 ◇「家朧」 ◇「谷朧」 ◇「橋朧」 ◇「庭朧」 ◇「灯朧」(ひおぼろ) ◇「朧めく」
春は大気中に水分が多いので、物の姿が朦朧とかすんで見える。朧は霞の夜の現象である。ほのかなさま。薄く曇るさま。

例句 作者

あらくさに足をなげだす朧かな 菅原和子
いつの世も朧の中に水の音 桂信子
うすぎぬのおぼろが裏む花の精 西條李稞
おぼろなり割箸で喰ぶパスタかな 永田タヱ子
おぼろなる記憶の底に花電車 竹﨑あき
おぼろにて丸し佳人の言葉尻 永井潮
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花冷えの畳を伝ふ身の音叉 石田よし宏

2021-04-09 | 今日の季語


花冷えの畳を伝ふ身の音叉 石田よし宏

晩春の冴えかえる寒さの室に
身を置く作者である
何も動かない静まりかえった時間
自分の呼吸、小さな動きさへもが
音叉のようにはねかえってくるように感じられる
(小林たけし)


【花冷】 はなびえ
桜の咲く頃に寒さがもどって急に冷え込むことがある。その頃の季感を言うが桜の連想と離れがたい。

例句 作者

花冷えの真正面なり白ふくろふ 高木一惠
花冷えの箱に音する吉野葛 桂信子
花冷えの肌の手ざわり甲斐絹織 根岸たけを
花冷や具足といふも美しく 谷中隆子
花冷の夕べ日当る襖かな 岸田稚魚
花冷やまだしぼられぬ紙の嵩 大野林火
花冷の闇にあらはれ篝守 高野素十
花冷の齢を人に見られけり 竹本健司
花冷えの箱に音する吉野葛 桂 信子
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いつまでも鞄持つくせ花辛夷 松岡耕作

2021-04-07 | 今日の季語


いつまでも鞄持つくせ花辛夷 松岡耕作

句意は明解だ
身に着いた習性はなかなか消えない
作者は鞄を持っての出勤が
定年まで続いた会社員だったのかも知れない
通勤の途次の道に
季節になると決まって辛夷の花が咲いたものだ
今もその辛夷は咲いているだろう
(小林たけし)


◇「木筆」(こぶし) ◇「花辛夷」 ◇「辛夷の花」 ◇「辛夷咲く」 ◇「やまあららぎ」 ◇「こぶしはじかみ」 ◇「幣辛夷」(しでこぶし) ◇「田打桜」(たうちざくら)
モクレン科の落葉高木。山野に自生する。また観賞用に庭園、公園に植えられる。高さは普通5~10メートル。日本の特産。早春、葉に先だって芳香ある白色六弁の大花を開く。地方によっては田打桜と呼んで、この頃から田打ちを始める。古名やまあららぎ。

例句 作者

こぶしの芽今日また更に天を指す 下野美智子
こぶし咲く沈没しさうな蒼い沼 林信江
これからの一路たしかに辛夷咲く 脇本よし子
せりせりと鍬つかふ音花辛夷 亀田蒼石
合格のメールが届く花こぶし 松下總一郎
吐くだけは吸うてゐる息辛夷の芽 神崎朱夏
山々に神々辛夷は静かな木 髙野公一
投げられし言葉は捨てむ辛夷の芽 三井つう
折りとれば風の貌なり山辛夷 高木一惠
捨てことば残して去れり北辛夷 梶鴻風
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