生き死には小さきことかも花氷 2016-07-28 | 夏 生き死には小さきことかも花氷 どんな命も生老病死はまぬがれない 大宇宙の創造主のてのひらで生かされている 一生の間に困難辛苦、喜怒哀楽にゆすぶられるが この一生も一瞬でたいした長さではない 懐かしい花氷 この中に閉じ込められた命と人の命になんの隔たりもない
ふりむきし顔の逆光夏盛り 2016-07-27 | 入選句 ふりむきし顔の逆光夏盛り 横浜山下公園の近くに「人形館」がある 先日ワイフと訪れた ガラス張りの大きな窓から公園越しに港が綺麗だ ワイフに写真を撮ろうとして声をかけた 完全なる逆光で写真は撮れなかった この写真はイメージだが現実にはほど遠い 入選 2016/7/27 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
よもすがら身の上ばなし朴の花 2016-07-26 | 夏 よもすがら身の上ばなし朴の花 朴の花は樹の鉄片に咲くので はっきりと正面からみることはほとんどない 真夜中 こうこうたる月光を浴びて 惜しげもなく花芯をあらわに その身の上を話している
滴りの息つぐ間合ひ幾万年 2016-07-25 | 入選句 滴りの息つぐ間合ひ幾万年 ひとりでのトレッキングを楽しんでいたのは3年ほど前だ 箱根の金時山/高尾山//三峰山 富士山は1年かけて紫蘇のを一周した 山で遭遇する滴りはなんとも嬉しいものだった 背負いのリュックを下して手ですくう 思わず合唱する自分がいた 滴りの長い長い旅路に感謝と感動である 入選 2016/7/25 下野新聞 速水峰邨選
箱庭に原発という墓標おく 2016-07-23 | 夏 箱庭に原発という墓標おく あの事故からもう5年半の歳月をかぞえる 5年後には居住困難地域の解除をめざす との報道があった この国のノーテンキな懲りないという気風はどこからくるのだろう 石棺も撤回された 不可能なことへの挑戦は一見きれいごとのようだが愚かでしかない 原発は人類の尊い犠牲の上での墓標にするべきだろう
古希六日ゆるりと大暑とおりおり 2016-07-22 | 夏 古希六日ゆるりと大暑とおりおり 古希を三年前にむかえた 還暦/古希/喜寿/傘寿/米寿/卒寿/白寿 最近は茶寿というのまであるという 草冠を二十に数えて茶は八十八 百八才を祝うのだそうだ 長命は少しもめでたいとは思えないのだが
裏がへる真昼が闇の蟻地獄 2016-07-21 | 夏 裏がへる真昼が闇の蟻地獄 炎天下 蟻の動きはいつもどおりに忙しい 巣の中はおそらく天然の空調で 快適なのだろう 真昼と闇 賢く使い分けている蟻族の知恵に脱帽だ
黙祷の黒手袋や蟬時雨 2016-07-20 | 夏 黙祷の黒手袋や蟬時雨 8月が近い 日本人は廃線といわず終戦という 東京大空襲/沖縄の玉砕/広島/長崎 終戦の決断はとっくにできたはずだったが 慰霊のための式典が行われ 必ず黙祷が行われる ときおり見かける老婦人の黒い長い手袋 蝉の声は今年も焦げているような・・・・
ひとことが新茶にまぎれ干されたる 2016-07-19 | 夏 ひとことが新茶にまぎれ干されたる 新茶を丁寧にふくんでゆっくりといただく 飲み干したころには あの高ぶった気持ちや 荒んだ胸の動悸はなくなっている
余生とはただ休むこと蝸牛 2016-07-17 | 夏 余生とはただ休むこと蝸牛 余生のはじまりはいつだったか 職場での役割や家庭での役割 職業人としての責任義務から解放され 家庭では家長としての亭主父親として 責任義務を果たし終えたころが始まりだろうか あるいは種の役目として子孫を残したときからが余生 あの蝸牛 生まれつきの余生のようにゆっくりだが 必ずパートナーを見つけて交合するのだそうだ
梅雨晴間腹を空かせた蝶ばかり 2016-07-16 | 春 梅雨晴間腹を空かせた蝶ばかり 今年の梅雨はなんとも異常だ 空梅雨と思えば記録的な大雨でゲリラ豪雨と云ったりされる そんな天候のなかで蝶はどこに避難しているのだろうか 梅雨晴間いっせいに飛んでいる 落ち着かなく忙しないのは 腹を空かした人間のようだ
年来の友を待つ間のかき氷 2016-07-14 | 夏 年来の友を待つ間のかき氷 30年ぶりに故郷ヨコハマで友人に会う 待ち合わせ場所は馬車道の入り口 氷 の暖簾がめじるしの甘味店 どんな顔してくるのだろうか 少し早めに着いたので 「かき氷」をつつき始めた
風の波くの字への字に渡り鳥 2016-07-13 | 秋 風の波くの字への字に渡り鳥 渡り鳥の季節がやってくる 秋の空は鳥たちにとっては風を波ととらえるようだ サーファーが波に乗るのに似ている くの字 への字 にかたちをかえて
でで虫の黙に習ひし余生かな 2016-07-12 | 夏 でで虫の黙に習ひし余生かな 余生のはじまりはいつからだったか なんとなく遠慮がちな物言いが習慣になってから久しい 近頃は話しかけ荒れることも減ってきて会話はどんどん苦手になってきた いつも微笑んで無口 なんともやりきれないがこれが晩節 余生なのだろう 蝸牛は生まれついての余生の達人なのかもしれないy