竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

いのちひたすら囀りに血のひほひ たけし

2019-03-31 | 入選句
いのちひたすら囀りに血のひほひ たけし




朝日俳壇 高山れおな先生の選をいただいた

1席ということで選評も載っている



この句は初案では

不義に略奪囀りに血の匂い だった



句会では「不義に略奪」が問題だった

なんどか推敲して「いのちひたすら」を得たもの



句意は同じでも措辞で評価はこうも異なることを痛感する



「匂い」も「にほひ」でやさしい感じがでてすくわれたようだ

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みよし野は右往左往の花見かな 貞室

2019-03-30 | 今日の季語


みよし野は右往左往の花もかな  貞室


桜を見ながらの宴席は
昔も今も無条件にたのしい
花見時は日本列島を桜前線が貫いて北上する
およそ2週間の花の盛りを
貪るように昼用をとおして楽しむ

大和路のみよし野での花見の景
右往左往は今も同じだ(小林たけし)

みよし野は右往左往の花見かな 貞室 「大和順札」
平樽や手なく生まるる花見酒 西鶴 「大矢数」
骸骨のうへを粧うて花見かな 鬼貫 「鬼貫句選」
草枕まことの花見しても来よ 芭蕉 「茶のさうし」
景清も花見の座には七兵衛 芭蕉 「翁草」
京は九万九千くんじゆの花見哉 芭蕉 「詞林金玉集」
花見にとさす船おそし柳原 芭蕉 「蕉翁句集」
四つごきのそろはぬ花見心哉 芭蕉 「炭俵」
花見にと母につれだつめくら児 其角 「続虚栗」
何事ぞ花見る人の長刀 去来 「曠野」
半ば来て雨に濡れゐる花見かな  太祇 「太祇句選後篇」
花見戻り丹波の鬼のすだく夜に 蕪村 「蕪村遺稿」
傾城は後の世かけて花見かな 蕪村 「蕪村句集」
恋ゆゑや花見の場の色紙売り 凉菟 「眉山」
たらちねの花見の留守や時計見る 正岡子規 「子規句集」
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撃ち合いのように異国語古都の秋 たけし

2019-03-29 | 


撃ち合いのように異国語古都の秋 たけし

地梼圏77号に掲載の拙句
78号にて「祭演」の森須蘭氏の推薦15句の選をいただいた

地梼圏は季刊誌なのでこの季節に揚げる句ではないが
私なりの自得句であったので共感者がいてくれたことが嬉しい

観光地にはたくさんの外国からの旅行者が居て
愉しまれておられる

その甲高い早口は
時に撃ち合いのように感じられた

決して不愉快ということではない
私達も同様にその国ではおもわれているに相違ないだろう
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世の中は三日見ぬ間に桜かな  大島蓼太

2019-03-28 | 今日の季語


世の中は三日見ぬ間に桜かな  大島蓼太

句の「世の中」は、自然的環境を指している。戸外、周囲の意味。「あな寒といふ声、ここかしこに聞ゆ。風さへはやし。世の中いとあはれなり」(『蜻蛉日記』下)の用法だ。句意は説明の必要もあるまいが、桜の開花のはやさを言ったもの。たしかに、咲きはじめると、すぐに満開になってしまう。散るのも、またはやい。ところで、この句を諺か警句みたいな意味で覚えている人がいる。いや、そう覚えている人のほうが多いかもしれない。「世の中」を社会的環境ととらえ、桜花の咲き散るようなはやさで、社会は変化するものだという具合に……。落語のマクラにも、その意味でよく使われる。ただし、こういうふうに覚えている人は、たいてい原句を間違ってそらんじているのが普通のようだ。「世の中は三日見ぬ間に桜かな」ではなく「世の中は三日見ぬ間の桜かな」と、助詞を勝手に入れ替えている。「に」と「の」の入れ替え。なるほど、これでは警句に読めてしまう。無理もないか。たった一文字の違いによる、この激しい落差。地下の作者は泣いているだろう。蓼太(りょうた)は、18世紀の江戸に住んだ俳人。信州出身とも伝えられるが、出自は明らかでない。『蓼太句集』所収。(清水哲男)

【初桜】 はつざくら
◇「初花」
その年の春に初めて咲く桜の花。また、咲いて間もない桜の花。桜の咲くのを待ち受ける人の心があらわれている。
例句 作者
初花の夜をたゆたひ雨泊り 吉田鴻司
初花の水にうつろふほどもなき 日野草城
徐ろに眼を移しつつ初桜 高浜虚子
初花や一日青空きはまりて 中村汀女
浜に火を焚けば濃き色初桜 茨木和生
初花の薄べにさして咲きにけり 村上鬼城
初花も落葉松の芽もきのふけふ 富安風生
初花の夕べは已にほの白く 高野素十
初花やななめに降つて山の雨 草間時彦
燭をもて初花仰ぐ酔ひにけり 永井東門居
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雪原を奔る雲影春兆す    たけし

2019-03-27 | 



雪原を奔る雲影春兆す    たけし





俳句は自得の文芸と割り切っているが

独りよがりに陥る危険がある



自身でもある程度の得心があって

他から評価される句を佳としている



今回掲句が毎日のようにトライしている

「俳句大学」の投句で安倍真理子氏の選をいただいた



鑑賞文は過分で赤面ものなのだが参照いただきたい





安倍真理子 一句鑑賞】(3月24日「一日一句互選」より)



雪原を奔る雲影春兆す    たけし



 大地はまだ雪に覆われている。その上を雲の影が奔る。ただそれだけのことだけれど、作者はその景に、冬とは明らかに異なる春の気配を感じている。
 「雪原」の白と「雲影」の黒のコントラストがとてもいい。「雲影」が「奔る」、そのスピード感もとてもいい。降りそそぐ陽差し、雪の煌めき、青空を流れる雲、雪の匂いの風、そのなかにある、動き出そうとする樹々の匂い。簡潔な描写と「春兆す」という季語の働きによって、情景がいきいきとひろがってゆく。
 いつの間にか、私も雪原に立っていた。



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巻き込んで卒業証書はや古ぶ   福永耕二

2019-03-26 | 今日の季語




巻き込んで卒業証書はや古ぶ   福永耕二


時のめぐり合わせで、わたしは卒業式というものにあまり縁がありません。高校の卒業式は、式半ばで答辞を読む生徒(わたしの親友でした)が、「このような形式だけの式典をわれわれは拒否します」と声高々と読み上げ、舞台に多くの生徒がなだれ込み、そのまま式は中止になりました。時代は七十年安保をむかえようとしていました。そののち大学にはいったものの、連日のバリケード封鎖で、構内で勉強する時間もろくに持たないまま4年生になり、当然のことながら卒業式はありませんでした。学部の事務所へ行って、学生証を見せ、食券を受け取るように卒業証書をもらいました。実に、悲しくなるほどに簡単な儀式でした。式辞も、答辞もありません。高らかに鳴るピアノの音もありません。窓から見える大きな空もありません。薄暗い事務室で、学部事務員と会話を交わすこともなく、卒業証書を巻き込んで筒に入れて、そそくさと高田馬場駅行きのバスに乗り込みました。後に考えればその当時は、時代そのものの卒業であったのかもしれません。掲句、わたしの場合とは違い、卒業証書には、きれいに込められた思いがあるようです。証書はきつく巻き込むことによって、すでに細かな皺がよります。皺がよったのは証書だけではなく、それまでの日々でもあります。卒業した身を待っているのは、筒の中とはあきらかに違う世界です。「古ぶ」と、決然と言い放つことによって、これからの時間がさらにまぶしく、磨かれてゆくようです。『角川俳句大歳時記 春』(2006・角川書店)所載。(松下育男)


【卒業】 そつぎょう(・・ゲフ)
◇「卒業生」 ◇「卒業式」 ◇「卒業歌」 ◇「卒業証書」
学校の全課程を履修し終えること。小学校から大学まで、卒業式はいずれも3月末である。
例句 作者
口に出てわれから遠し卒業歌 石川桂郎
君に降り吾に降る雪卒業す 北澤瑞史
交換日記少し余して卒業す 黛 まどか
鉛筆に残りし歯形卒業す 古屋 元
波ふえて卒業の日の沖見えず 藤田湘子
下駄箱の別れそのまま卒業す 田口風子
山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男
巻き込んで卒業証書もう古し 福永耕二
卒業の兄と来てゐる堤かな 芝不器男
校塔に鳩多き日や卒業す 中村草田男

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方丈の大庇より春の蝶 高野素十

2019-03-24 | 素十鑑賞


方丈の大庇より春の蝶 高野素十

ここのところ毎月鎌倉を訪れる
散策や句会が目的だが
寺社詣では欠かさない

季節のうつろいはそれは顕著で
境内の草木、風や鳥の気配もその趣を変化させる

掲句の蝶に遭遇する眼福を心待ちにして歩いてみた (小林たけし)

大きな方丈の大屋根から舞い降りた一匹の蝶
蝶は春の季語だが作者はこの蝶こそが春そのものだと言っている


蝶】 ちょう(テフ)
◇「蝶々」 ◇「白蝶」 ◇「黄蝶」 ◇「しじみ蝶」 ◇「大紫」 ◇「小紫」 ◇「胡蝶」(こちょう) ◇「紋白蝶」 ◇「紋黄蝶」 ◇「山蝶」
いかにも春をおもわせる昆虫である。幼虫は毛虫・青虫の類で、草木を食べて成長し、蛹を経て成虫となる。一般に繭は作らない。種類が多く、日本だけで約250種を数える。昆虫界で最も美しい。蛾と違って昼間飛びあるき、止まるときは多く羽をたたむ。ぜんまいのような口をのばして花の蜜を吸う。胡蝶。かわらびこ。

例句 作者
蝶がくる阿修羅合掌の他の掌に 橋本多佳子
てふてふのひろげてゆきし水の音 奥名春江
失せものにこだはり過ぎぬ蝶の昼 星野立子
蝶を見に船の行交ふところまで 榎本好宏
蝶になほ蝶の黄昏ありにけり 相生垣瓜人
あをあをと空を残して蝶分れ 大野林火
一睡のてふてふとなり遠くまで 大井戸 辿
てふてふや遊びをせむとて吾が生れぬ 大石悦子
蝶去りて磧にのこる石の数 遠藤若狭男
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ひたひたと春の潮うつ鳥居かな 河東碧梧桐

2019-03-23 | 碧梧桐鑑賞


ひたひたと春の潮うつ鳥居かな 河東碧梧桐

壁悟桐にはめずらしいと思える句
有季定形の写生、客観的は俳句だ
「ひたひたと」も平易な措辞
安芸の宮島の大鳥居を連想したのは
私ばかりではあるまい(小林たけし)


【春の潮】 はるのしお(・・シホ)
◇「春潮」
春になると潮の色は藍色が淡くなり、明るく澄んでくる。干満の差が大きくなり、干潮時にはひろびろと干潟を残して落ちてゆく。

例句 作者
水哭くや弥生十日の大潮に 戸恒東人
春潮の底とどろきの淋しさよ 松本たかし
春潮を観る黒髪を身に絡み 石原八束
春潮に指をぬらして人弔う 橋本多佳子
春潮の入水に叶ふ色といふ 吉田汀史
春潮といへば必ず門司を思ふ 高浜虚子
春潮に飽かなく莨すひをはる 横山白虹
春潮の上に月光の量を増す 飯田龍太
累々と熔岩春潮のそこひまで 小川斉東語

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大田螺種田山頭火と似たり 大串 章

2019-03-21 | 今日の季語
大田螺種田山頭火と似たり 大串 章




句意は明解だ
田螺があの種田山頭火にそっくりだというのだ
作者の山頭火への憧憬が伺える
ただの田螺ではなく大田螺にしてこそ
山頭火への畏敬までもが推察される (小林たけし)

【田螺】 たにし
◇「田螺取」 ◇「田螺鳴く」
タニシ科の淡水産巻貝。貝殻は卵円錐形で暗褐色、殻口は広く角質の蓋がある。卵胎生で6、7月頃子貝を生む。水田・池沼に産し、食用。古い時代の農村の動物性蛋白質の供給源として貴重な食品であった。
例句 作者
静さに堪えて水澄む田にしかな 蕪村
籠をもる小さき田螺や水に落つ 高浜虚子
民宿の椀の重さよ田螺汁 小路紫狹
水入れて近江も田螺鳴くころぞ 森 澄雄
白凰の塔の真下の田螺かな 宮岡計次
月の出のおそきをなげく田螺かな 久保田万太郎
田螺見えて風腥し水のうへ 太祇
拾ひのこす田螺に月の夕べかな 蕪村
蓋とぢし田螺の暗さはかられず 加藤かけい
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大の字に地球を背負う大朝寝  たけし

2019-03-20 | 入選句





大の字に地球を背負う大朝寝  たけし


本日の朝日新聞 栃木俳壇で石倉夏生先生の選をいただいた
20句選のうち第2席に採ていただくのは滅多にない
家族の「おめでとうライン」が殺到している

句材は朝寝大好きな家族の一人
家族全員が微苦笑している

地球を背負うことはあるまいが彼の背には
いずれ大きな荷物がのしかかってくるはずだ

せいじ今のうちに朝寝を貪っていれば良い
こんな朝寝の幸せを懐かしく思い出すこともあるだろう
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尼寺や彼岸桜は散りやすき 夏目漱石

2019-03-19 | 今日の季語



尼寺や彼岸桜は散りやすき 夏目漱石


尼寺やの上5でしっかり切れてはいる形だが
句意はは切れてはいない
尼になった女人をさくらに取り合わせて鑑賞すると
女人の尼になった背景、、出がしのばれてくる
女人の一生のはかなさを感じてくるのだ (たけし)


【彼岸桜】 ひがんざくら
◇「小彼岸」 ◇「江戸彼岸」 ◇「姥彼岸」(うばひがん)

桜では開花が最も早く、彼岸の頃、葉より先に淡紅色の美しい花が咲く。日本の中西部に多い桜の一種。花は小さく、一重咲き。江戸彼岸は別種だが、これをふくめて詠むひともある。

例句             作者

ひと息ひと息彼岸桜の開きゆく 中嶋秀子
谷々に彼岸ざくらの枯木灘 角川源義
日は西に廻りし彼岸桜かな 斎藤優二郎


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ブログ炎上

2019-03-18 | 雑感


昨日のこのブログが炎上した


「竹とんぼ」なのだが昨日とんでもなく訪問者があったので仰天した
ここ1週間の訪問者数とアクセス数は下記のとおり
100人内外の訪問者と200アクセスが平均だったところ
一桁アップだったのだ
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このブログは俳句同好の初心者が8人集って
「竹とんぼ」という勉強会をつくりその記録が始まりだった
2年ほどしてその集いは解散したのだが
私の俳句のアレコレを記している

先達の俳句鑑賞
新聞俳壇、雑誌などへの投稿記録
自作の投稿
句会報告
現代俳句鑑賞

脈絡もこだわりもないブログなのだが
継続が長くなれば記事数も増加するので
検索でのヒット数も増えるということだろう

そうとは理解している者の
280万ものブログでの100番台のランキングは
快挙だと喜びたい
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母校より廃校通知春北風  たけし

2019-03-14 | 入選句


母校より廃校通知春北風  たけし



3月13日水曜日 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

大都市横浜の高等学校です

私の卒業年度は昭和38年で

最高学年時にははしなくも生徒会長を務め

開校80周年の行事に携わったものでした



廃校式はみなとみらい地区でのホテル

卒業生の一人として参加しましたが

知った顔はほとんど無くて

寂しさはいよいよ深まりました



港からの風はなんとも厳しい冷たいものでした
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すぐそこに火薬のにほひ花菜風 たけし

2019-03-13 | 入選句


すぐそこに火薬のにほひ花菜風 たけし



毎日新聞 俳壇 3月11日 片山由美子先生の選を頂いた

今年はじめからの投稿で

この句の投稿日は2月13日のもの



鬼籍に入った大峯あきら先生の選も何回かいただいたのだが

先生の選を望んでいたこともあって昨年はこの俳壇への投句をしなかった



毎日新聞では小川軽舟、鷹羽狩行、西村和子、

各先生の選をいただいたことがある



この俳壇は投句に際して選者を指定しないといけないのが難しい

落選に際しては厚顔にも、選者の好みにあわなかったのだろうと

都合よく解釈したりしている



入選すると我が家では家族LINEで報告、孫や娘からの

「ヤッタネ」の返信がなによりも励みになっている
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朧夜の四十というはさびしかり 黒田杏子

2019-03-11 | 今日の季語


朧夜の四十というはさびしかり 黒田杏子


年齢を詠みこんだ春の句で有名なのは、なんといっても石田波郷の「初蝶やわが三十の袖袂」だろう。三十歳、颯爽の気合いが込められている名句だ。ひるがえってこの句では、もはや若くはないし、さりとて老年でもない四十歳という年齢をひとり噛みしめている。朧夜(朧月夜の略)はまま人を感傷的にさせるので、作者は「さびし」と呟いているが、その寂しさはおぼろにかすんだ春の月のように甘く切ないのである。きりきりと揉み込むような寂しさではなく、むしろ男から見れば色っぽいそれに写る。昔の文部省唱歌の文句ではないけれど、女性の四十歳は「さながらかすめる」年齢なのであり、私の観察によれば、やがてこの寂しい霞が晴れたとき、再び女性は颯爽と歩きはじめるのである。『一木一草』(1995)所収。(清水哲男)


  俳句          作者名

おぼろ夜のかたまりとしてものおもふ 加藤楸邨
おぼろ夜の潮騒つくるものぞこれ 水原秋櫻子
おぼろ夜の霊のごとくに薄着して 能村登四郎
おぼろ夜の鬼ともなれずやぶれ壺 加藤楸邨
おぼろ夜や旅先ではく男下駄 あざ蓉子
朧夜のどの椅子からも子が消える 松下けん
朧夜のむんずと高む翌檜 飯田龍太
朧夜の船団北を指して消ゆ 飯田龍太
朧夜や久女を読みて目を病みぬ 久保田慶子
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