だれにでも嬉しい記憶林檎の木 2014-11-30 | 冬 だれにでも嬉しい記憶林檎の木 先日の勉強句会に出句の一句 得点はゼロ 「りんご」という兼題でのものだったが評価は厳しかった 「嬉しい記憶」でだれにでも思い起こす過去の いくつかのシーンがあると思うのだが 自分としては気に入っている作品
冬波の冬波を生む声やまず 2014-11-29 | 冬 冬波の冬波を生む声やまず たけし 冬の海 その波はたえまなく 真っ暗な空を色なく映して 時に波間に月光を受ける 波は波を生み その営みは地球創生期から続く 激しく穏やかに命を生み続けている 冬の海には四季一番の荘厳さ感じる そして来し方行く方をおもわずにはいられない
四才児ぼくの魔法と白い息 2014-11-28 | 冬 四才児ぼくの魔法と白い息 寒い朝 吐く息の白いのは普通だが 幼児期の子供らには不思議でなんとも面白いようだ 近くに保育園があって運動場の彼らを見かけるが 手に自分の息をためるような仕草をしていたり お友達に吹きかけっこしていたり 孫のセリフを思い出す
木枯の切っ先を背に登校児 2014-11-27 | 冬 木枯の切っ先を背に登校児 たけし 木枯らしの朝 登校の子らは元気にウウオーキングバスに乗る バスの後尾には木枯らしの切っ先が襲う それに押されてバスの速度は次第に早まる 駆け出しそうな列もある この季節この体験を6年間 みんな強く逞しく 自然との対話と対応を覚えてゆくのだ ウオーキングバスとは小学校の登校班の列のこと
枯野には色鉛筆の二三本 2014-11-26 | 冬 枯野には色鉛筆の二三本 たけし 枯野 芒野 が好きである 春からたくさんの命のいとなみを生んだ大地が 冬という眠りの季節に向かう ひとしきりの休息も次なる命への設えなのだが 吹き荒ぶ風も侵入者を拒んでいるようだ 単色の荒野には色鉛筆の二三本があれば スケッチは十分だろう
山眠る朱きいただき大鳥居 2014-11-25 | 冬 山眠る朱きいただき大鳥居 錦秋の山もそろそろ眠る準備を始めたようだ 北方の山、高い山から冠雪が報じられる どの山にも山頂には小さな神社と立派な鳥居が据えられている 山によっては山麓からその鳥居の鮮やかな朱色がみえることがある 風雪に踏ん張っている鳥居はありがたきかな
舞い降りぬこれより呼び名浮寝鳥 2014-11-24 | 冬 舞い降りぬこれより呼び名浮寝鳥 渡り鳥の生態には驚くことばかり 何千キロもの移動も驚異的だが 子を産み育て戻って行くのだから恐れ入る そして毎年同じところに越冬にやってくる 海亀や鮭の地球全体を棲家とする生き様には尊厳すら覚える 渡り鳥は懐かしい匂いを確認したのか 舞い降りるとずーっとそこに居たかのように浮いている
青空がもったいなくて木守柿 2014-11-21 | 冬 青空がもったいなくて木守柿 二日間パソコンが使用不能で悪戦苦闘 PCメーカ0の電話サポーチ述べ六時間 娘(45才)の手助けを仰いでなんとか初期化に成功 いくつかのファイルは喪失したがこれは仕方がないとあきらめるとする 庭に出たらなんと青い空 柿木には木守柿が二つ三つ 愛き時も鬱たる時も青蜜柑 町役場での句会 「愛き」で議論百出 私は「うきときもうつたるときも」と詠んだのだがそうは読めないという意見が多い 気持ちの躁鬱にかかわらずその時はものの始まり 経過の途中である との句意なのだが理解されなかった 佇むを佳人にしたて冬灯り 冬のおぼろにかすむ灯り そこに佇む夫人 人を待つのだろうか 夜のとばりは姿かたちを明らかにはしないが 佳人であることは容易にうかがえる
さもしさを隠すもさもし懐手 2014-11-20 | 冬 さもしさを隠すもさもし懐手 たけし 懐手といえば直ぐに頭に浮かぶのは坂本竜馬だが 彼にさもしさなどがあるわけもなく掲句には不似合いだ 懐手は和服の言葉だから現代では 手を外にださない仕草態度 本心をみせないいつわりのポーズみたいに感じられる 人間がどんどんさもしくなってきている 原理主義による優勝劣敗 常に敗者は勝者よりも多数だ さもしさを隠すのもまたさもしさと思われる
無表情悴み知らぬ子の不幸 2014-11-19 | 冬 無表情悴み知らぬ子の不幸 たけし 最近の子供たちは表情が乏しいと思われてならない 小学校に入学する頃からは 「大声で泣く」などという事はなくなってしまうのではないか 切れたりはじけたりはあっても 普通の喜怒哀楽の直接的な感情が少ないようだ 痛い 寒い 苦しい 熱い などどの肌に感じる五巻を使うことが減ったことが原因なのではないか 子が温室で培養されているから感覚は鈍くなるし いざというときには対応のすべがない 困惑し混乱し「切れる」「はじける」ことになる 悴む この言葉を知る子供がどのくらいいるのだろう
冬暁や歩む烏と見合いけり たけし 2014-11-18 | 冬 冬暁や歩む烏と見合いけり たけし 毎朝のウオーキングも防寒着をまとって白い息を吐きながら いつしか速足になっている 空はまだ完全には明けきっていない カラスの鳴き声が遠くに聞こえれいる 行きかう人の姿もここのところ減ったようだ 目の前に黒く大きな影 烏が一羽輪ヤシの行く手から歩いてくる 互いに目を合わせて擦れ違う 烏を可愛いとおもったのは70年超の人生で初めてだ
はたきあう母子のはしゃぎぬわか雪 たけし 2014-11-17 | 冬 はたきあう母子のはしゃぎぬわか雪 たけし たけし 小さな子供に若い母親 おりからのやわらかな雪模様の道を歩いて帰ってきた 母親は娘の服の雪を払う 娘もまねて母親の雪を払う いつしか力が入って痛いほど激しくなる それでも二人は笑顔がはりさけるほどに幸せだ 少し前の時代にはみかけた風景だった
北風うけていよいよ丸く石仏 たけし 2014-11-16 | 冬 北風うけていよいよ丸く石仏 たけし 街道にある道祖神はなかなかの趣で道標の役割をこえて楽しませてくれる 先日は名を知らぬ寺であったが殉死の武士たちの石に遭遇した 地蔵の石像は子供の頃からの馴染みだ 枯野を歩いていると大小の石を重ねただけのものを発見する これも仏様 北風をうけて動かない石仏 毎年少しずつその風体は丸くなる 風雪の年月はたくさんのことを教えているようだ
冬立つや鉄塔の四肢踏ん張りぬ たけし 2014-11-15 | 冬 冬立つや鉄塔の四肢踏ん張りぬ たけし 第15回竹とんぼ句会たより」vol.7 今回は管理人の筆者たけしです 多作多捨多読はもう週間になってしまい 納得のできる作品を生むよりも 数多く作ることに拘泥しているようで困っている 表題句は吟行なのに持参の既作 優しい俳友に採っていただいた 立冬の日に自宅の窓から臨む鉄塔を詠んだ 来し方を諾うように照紅葉 初案「満ち足りて仰ぐひとりや照落葉」 吟行での鮮やかな紅葉を仰いで眺める老どち仲間 どの顔もほころんでいて憂いや寂しさの影がない 今までの人生に悔いるこよはない 鮮やかな日をうける紅葉によく似合う 私もまた同じだった 錦秋を折りたたみたり含満ヶ淵 初案「錦秋を呼び込んでいる含満ヶ淵」 初案はあまりにも感じたままで切れ、おまぇれば余韻もない 少し添削してみたがどうだろう とりどりの紅葉は広がった景を読む事が多いが 渓流や小滝の壺、淵などには景が凝縮しる それをおりたたむ としてみたが
冬の海五感鋭く尖らせし 2014-11-08 | 冬 冬の海五感鋭く尖らせし たけし 秋の海は誰をも詩人にする 激しい季節を過ぎての一抹の寂しさそして安息 しかし冬の海は人を素直にさせるようだ 海浜に長くは居られないが 波音のたえまない響きは体中の五感を働かせて 悔恨のいくつかを呼び覚ます 次から次へと尖った五感はとめどない