竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

秋分の正午の日ざし真向にす 管 裸馬

2021-09-23 | 今日の季語


秋分の正午の日ざし真向にす 管 裸馬

昼と夜とが同一時間という秋分
掲句はその様を言いえて妙だ
真向かいに が言えそうでなかなか言えない
(小林たけし)


【秋分】 しゅうぶん(シウ・・)
◇「秋季皇霊祭」(しゅうきこうれいさい)
二十四節気の一つ。9月23日ころ。昼と夜の時間がほぼ等しく、この日を境に夜の時間が長くなる。ここを境に「秋の夜長」がはじまる。また「秋季皇霊祭」は秋分の日に天皇が、皇霊殿で歴代の天皇・皇后・皇親の霊を祀る祭祀のこと。

例句 作者

山かがし秋分の日の草に浮く 松村蒼石
秋分の日の音立てて甲斐の川 廣瀬町子
秋分の男松より夕日さす 田平龍胆子
秋分の明るき昼の仮寝かな 山田葱風
秋分やもみづりはやき岩蓮華 那須弥生

秋彼岸足音ばかり空ばかり あざ蓉子

2021-09-20 | 今日の季語


秋彼岸足音ばかり空ばかり あざ蓉子

春野彼岸と違って
空は高く空気は澄んでいて爽秋の墓参
掲句はそんな様子がうかがえる
感傷的な心情も感じられて好感のもてる句だ
(小林たけし)



【秋彼岸】 あきひがん
◇「後の彼岸」(のちのひがん) ◇「秋彼岸会」(あきひがんえ)
秋分の日(9月23日ごろ)を中日とした1週間。彼岸会として仏事を行うことは春の彼岸と同じ。単に「彼岸」といえば春の彼岸をさす。単に「彼岸」というと春の彼岸なので、「後の彼岸」ともいう。

例句 作者

畑中に火を焚く音の秋彼岸 三谷道子
いくつかは乳の出る草秋彼岸 河村四響
それとなく御飯出てくる秋彼岸 攝津幸彦
一匹の猫を地べたに秋彼岸 岩尾美義
口むすぶ鯉みて帰る秋彼岸 桂信子
棕櫚縄の縛る竹垣秋彼岸 坪野谷公枝
生者には大きなおはぎ秋彼岸 平賀節代
秋彼岸まだ呼ばないで倶会一処 戸沢吉江

イエスよりマリアは若し草の絮 大木あまり

2021-09-19 | 今日の季語


イエスよりマリアは若し草の絮 大木あまり

なんという断定だろう
こうした句に遭遇すると
つくずく俳句はなんでもありなのだと納得する
取り合わせた季語に妙があるのだと感じる
(小林たけし)


【草の穂】 くさのほ
◇「草の絮」(くさのわた) ◇「草の穂絮」 ◇「穂草」
秋の雑草から出た穂。イネ科やカヤツリグサ科の雑草(えのころ草、蚊帳吊草など)は、秋に穂花を出す。一見、花も実も区別がつかない。

例句 作者

この先は太平洋ぞ草の絮 八木マキ子
風に乗るまでの逡巡草の絮 佐藤国夫
一靡きしたる穂草の力なし 高野素十
けふはけふのかぎりをとんで草の絮 鷹
草の絮飛びゆくものの羨まし 窪田英治


あをあをと瀧うらがへる野分かな 角川春樹

2021-09-16 | 今日の季語


あをあをと瀧うらがへる野分かな 角川春樹

滝がうらがえる
野分を作者独特の語彙で表現
あをあをもなかなか言えそうで言えない


【野分】 のわき
◇「野わけ」 ◇「野分晴」 ◇「野分後」(のわきあと)
雨を伴わない秋の強風。草木を吹き分けるほどの風というのでこの名がおこった。野分のあとはからりと晴れるが、秋草や垣根の倒れた哀れな情景が見られる。「秋の風」より激しく吹く。

例句 作者

いろいろの枕の下を野分かな 加藤郁乎
なんと云ふさだめぞ山も木も野分 細谷源二
アフリカの縞馬迷う野分かな 田井淑江
オリーブは眠れる木なり野分だつ 浦川聡子
ハルモニの後ろ手に立っていて野分 橋本直
モンゴルの野分の音か馬頭琴 今泉三重子

みないるぞ南洲墓地の虫しぐれ 中尾和夫

2021-09-14 | 今日の季語


みないるぞ南洲墓地の虫しぐれ 中尾和夫

西郷南洲の墓所での虫時雨
作者は思わず万人に愛された南洲に声をかけてしまった
(小林たけし)


南洲顕彰館は
1977年、西郷隆盛没後100年を記念して建設されました。西郷の生涯・思想・業績などをわかりやすく紹介したジオラマやビデオをはじめ、西郷の衣服や西南戦争に関する資料などを展示しています。
その他、西郷を祭った南洲神社や、西南戦争で戦死した2千人以上の人々が埋葬されている南洲墓地が隣接しています。南洲墓地は1955年1月14日に鹿児島県指定史跡に登録されています。


【虫】 むし
◇「虫の声」 ◇「虫の音」 ◇「虫時雨」 ◇「虫の秋」 ◇「虫の闇」 ◇「昼の虫」 ◇「すがれ虫」 ◇「残る虫」
秋鳴くコオロギやキリギリスなどの虫の総称。ただし鳴くのは雄のみ。虫の音色にはそれぞれ風情があり、秋の夜の寂寥を深める。また、盛りの時期を過ぎ、衰えた声で鳴いている虫を「残る虫」という。

例句 作者

あかつきや歩く音して籠の虫 岸本尚毅
ある闇は蟲の形をして哭けり 河原枇杷男
いさみ足で今日が終りて虫しぐれ 井川春泉
きのうのように出土の甕棺昼の虫 松本昌平
けふはけふの山川をゆく虫時雨 飴山實
どっこい生きて蟲の挽歌を聞いている 平川義光
アンコール曲ハミングはみんぐ 虫すだく 山本和子
コンビニの外は深海虫時雨 尾崎竹詩
チリリリコとうっとりさせる秋の虫 末広鞠子
バス去りて虫の音高くなりにけり 中村圭作
一筋に夜明けし路地や虫の声 佐野青陽人
五六人降りてゆく駅虫の声 田中不鳴
今日よりはこの世の虫として笑う 行川行人

物置で少年倶樂部読む厄日 星野明世

2021-09-10 | 今日の季語


物置で少年倶樂部読む厄日 星野明世

少年期の回想だろうか
物置に叱られて逃げ込んだのか、閉じ込められたか
本人にとってはたまさかの厄日
それでも「少年倶楽部」が手元にあるのだから
(小林たけし)



【二百十日】 にひゃくとおか(・・トヲカ)
◇「厄日」 ◇「二百二十日」
立春から二百十日目で、9月1日、2日ころ。二百二十日はそれから10日後。この頃は暴風雨に襲われることが多く、また稲の開花期にも当たることからその被害を案じ、農家では厄日としている。

例句 作者

恙なき二百十日の入日かな 伊藤松宇
移り行く二百二十日の群鴉 高浜虚子
川波も常の凪なる厄日かな 石塚友二
高う飛ぶ蜻蛉や二百九日尽 松内大隠
たゞ鰡の釣れに釣れたる厄日かな 河原白朝
魚匂う俎板二百二十日過ぐ 青木千秋
砂濱に藻を焼く煙り厄日過ぐ 棚山波朗
厄日過ぐ身を締むるものみな外し 神田ひろみ

色鳥とイエスの見える厠かな 谷口慎也

2021-09-08 | 今日の季語


色鳥とイエスの見える厠かな 谷口慎也

作者は憚りの最中である
小窓から観える景
渡ってきたさまざまな渡り鳥をやさしい目で愛でている
ふとあのイエスがあえあわれたように感じた
作者の得たりの顔が浮かぶ
(小林たけし)


【色鳥】 いろどり
秋に渡ってくるいろいろの小鳥類。色彩の美しい鳥が多いので総称して色鳥という。人里の木々の葉の間に見え隠れするときの美しさは、秋ならではのものといえる。

例句 作者

色鳥や籠ごと量る赤ん坊 美濃部英子
色鳥や公園横の帽子店 福島壺春
色鳥やむしろすがしき朝の飢 金子 潮
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
色鳥に枯山水の景緊まる 成田昭男
雨の庭色鳥しばし映りゐし 中村汀女
色鳥やナプキン尖る朝の卓 橋本栄治
色鳥や黒姫よりの雲の帯 久米三汀

草ごもる鳥の眼とあふ白露かな 鷲谷七菜子

2021-09-06 | 今日の季語


草ごもる鳥の眼とあふ白露かな 鷲谷七菜子

作者は朝のウオーキングだろうか
露に濡れた草の中の巣から鳥がゐる
とおみったらその鳥と目があった
朝の一刻の体験を切り取った
シャッターを切ったような写生だ
(小林たけし)

【白露】 はくろ
二十四節気の一つ。秋の陰の気が積もって露を結ぶの意。陽暦の9月7日、8日頃に当たる。同じ「白露」でも「しらつゆ」は草などに結ばれた露の白さを表現するものである(秋・天文)。

例句 作者

かの地主白露に白き鶏放ち 久保田慶子
ゆつくりと湯呑砕ける白露かな 小豆澤裕子
二階から声のしてゐる白露の日 桂信子
白露に薄薔薇色の土龍(もぐら)の掌 川端茅舎
白露に阿吽(アウン)の旭さしにけり 川端茅舎
白露の日神父の裳裾宙に泛き 桂信子
白露の月窓にしみじみ帯を解く 河野多希女
白露や一匹の虫のわれが佇つ 新谷ひろし
白露過ぐ鯉に長途のあるごとし 戸田和子

水平線大きな露と思ひけり 大串章

2021-09-01 | 今日の季語


水平線大きな露と思ひけり 大串章

これ以上大きな景はまたとあるまい
地球まるごと露にしてしまうちは
言葉も無い
(小林たけし)


【露】 つゆ
◇「白露」 ◇「朝露」 ◇「夜露」 ◇「露の玉」 ◇「露けし」 ◇「露葎」(つゆむぐら) ◇「芋の露」
夜分、草木や地面が冷えると周りの空気も冷え、水蒸気が凝結して水滴となったもの。秋に最も多いので秋季とする。

例句 作者

漂へるごとくに露の捨箒 富安風生
無呼吸の鼓動ころころ芋の露 川崎益太郎
照り昃る信濃つらぬく露軌条 桂信子
病む母のひらがなことば露の音 成田千空
白露なり立ち上がるとき息を吸う 丸木美津子
白露に薄薔薇色の土龍(もぐら)の掌 川端茅舎
白露に阿吽(アウン)の旭さしにけり 川端茅舎
白露の日神父の裳裾宙に泛き 桂信子
白露の日葦ことごとく風に伏し 新井秋芳
白露の月窓にしみじみ帯を解く 河野多希女