手帚のひとりあそびや松落葉 たけし 2018-05-31 | 夏 手帚のひとりあそびや松落葉 玄関先におちている松の落葉 留守居して母を待っている幼女 指でその落葉を掃き寄せる 母はなかなか帰らない 落葉の重なってきて積み上がる しだいに何故か哀しくなってくる 初案 2015/6/15 指先の幼児かえりや松落葉
黄泉路とも前世の憶え蛍の夜 たけし 2018-05-30 | 夏 黄泉路とも前世の憶え蛍の夜 毎年どこかしかで蛍狩をしている 一度は「蛍舟」を経験した 蛍の乱舞している 真っ暗な川を何艘もの小さな舟が音もなく下る 初めての体験なのだが何か懐かしい 前世の記憶 ふとよぎる不思議な感覚 初案 2015/6/15 黄泉路まで案内されさう蛍の火
あさまだき逸れ蛍の灯の翳り たけし 2018-05-29 | 夏 あさまだき逸れ蛍の灯の翳り 蛍のあの乱舞は生の競演なのだが 蛍は死出の案内とも ときおり群れからはなれての逸れ蛍もいるようだ 明け方まで彷徨い続けて 命の灯ははかなく尽きるのを覚悟のようでもある 初案 2014/7/15 灯の淡き逸れ蛍の吹かれおり
富士おろし列びて揺るる青ひさご たけし 2018-05-26 | 夏 富士おろし列びて揺るる青ひさご 富士の裾野を12回に分けて一周したことがある 夏に入ったばかりの瓢箪の棚がたくさんある光景に遭遇した 文字通り鈴なりのまだ青い瓢箪の実がぶら下がっていて おりからの富士山からの風に揺らいた 初案 2015/8/15 青ひさご列びて揺れし富士の風
病んだ眼にヤンチャの衒いサングラス たけし 2018-05-24 | 夏 病んだ眼にヤンチャの衒いサングラス 目を病んでもう10年を数える 仕事を早期に辞めたのもこの病気が影響しているが 現在の平穏な日常は このおかげかも知れないと ポジティブに考えている 4ヶのサングラスを楽しんでいる
箱庭に原発という墓標おく たけし 2018-05-20 | 夏 箱庭に原発という墓標おく 原発の廃炉作業は100年単位とか 100という数字はカウント不可能の時の便利な数字 不可能の別称とも言える パンドラの箱を空けてしまったのだから 原発はもう墓標でしかない 箱庭はの原発は現実だ 発表 7/15/2015
風葬の欠片もかろき夏の浜 たけし 2018-05-18 | 夏 風葬の欠片もかろき夏の浜 風葬はもはや歴史上の事実でしかないが 山や川、海で古くは普通のことのようであった 現在では鳥獣が自然に任せての風葬に委ねられる 夏の浜辺 海鳥の風葬の名残のような羽が風に乗っていたりする 初案 2013/5/15 海鳥の風葬の痕夏の浜 6/15/2013
大仏の螺髪の滂沱虎が雨 たけし 2018-05-17 | 夏 大仏の螺髪の滂沱虎が雨 鎌倉長谷大仏に虎が雨 虎御前の大泣きのような雨が 大仏の螺髪に滝のように流れている 発表 2017/6/22 夏(仲夏)・天文 【虎が雨】 とらがあめ ◇「虎が涙雨」 ◇「曽我の雨」 陰暦5月28日に降る雨。この日は曾我兄弟が討れた日で、それを悲しんだ大磯の遊女虎御前(兄十郎祐成の恋人)の流した涙が雨となったという言われに基づく言葉。 例句 作者 海女が戸の牡丹ぬるゝ虎が雨 富安風生 こよろぎの浜はほろほろ虎ケ雨 下村梅子
とめどなく彼の日の話心太 たけし 2018-05-16 | 夏 とめどなく彼の日の話心太 心太はノスタルジックで 思い出話が良く似合う 悩みや哀しみ、恨みや嫉みは似合わない みな優しい柔和な面持ちで ゆっくりと会話する 日本人が本当の日本人に戻っている 初案 2015/6/15 心太ないしょばなしの良く似合う 内緒話は似合ってはいなかろう
梅雨の雷通夜の挨拶口ごもる たけし 2018-05-15 | 夏 梅雨の雷通夜の挨拶口ごもる 梅雨どきの葬儀はひときわ哀しい 梅雨明けの近きを報せる雷鳴が 遠くに聞こえたりするとそれはもう溜まらない 通夜の挨拶はだれもが苦手で口ごもる こんな夜はほとんど言葉にならない 初案 2014/7/15 口ごもる通夜の挨拶送り梅雨 大分表現が変わってしまったが句意はほとんど変わらない 「送り梅雨」がつきすぎと言われそう
皇帝ダリア背伸びして腰を折る たけし 2018-05-14 | 夏 皇帝ダリア背伸びして腰を折る 皇帝ダリアの威勢は見事だ 夏の日盛りにも衰えをみせることはない 丈の伸びる速さも目をみはる 花の大きさも色の鮮やかさも申し分ない 突然に茎の途中から折れてしまったりもある 背伸びのし過ぎは危険を伴う 人の世界に変わらない 発表 2016/11/7
筍に自慢話のついてくる たけし 2018-05-13 | 夏 筍に自慢話のついてくる 採りたての筍をよく頂く 泥のついた丸々と太った見事な出来栄え ひとしきりの世間話をするうちに 筍だけでなくいつのまにか己の来し方を とうろうと自慢話になっていて止まらない さてこの筍 二人暮らしには手に余る 発表 201586/15
走馬燈もう休んでもよくないか たけし 2018-05-11 | 夏 走馬燈もう休んでもよくないか 走馬燈はもう死語になりかけている 追っているのか追われているのか 限りなく回り続ける走馬燈 暗がりに浮き上がる灯をみていると 現世の哀しみを覚える 句意は晩年の思いである 怠惰な日常への言い訳でもしているような 初案 2016/11/2 晩節や追ひて追はれて走馬燈 走馬灯、走馬燈(そうまとう)とは内外二重の枠を持ち、影絵が回転しながら写るように細工された灯籠(灯篭)の一種。回り灯籠とも。中国発祥で日本では江戸中期に夏の夜の娯楽として登場した。俳諧では夏の季語。
勤行にあわせて来たる朝の蟬 たけし 2018-05-10 | 夏 勤行にあわせて来たる朝の蟬 宿坊にお世話になって 朝の勤行に同席させていただいた 俄か仏心でも荘厳な空気に身がしまる 勤行の開始に合わせたように蝉の声 蝉時雨ほどのやかましさはなく 休み休みに遠慮がちに まるで勤行の調子をはかるようだった 発表 2016/7/28
軍服を解きたるここち更衣 たけし 2018-05-07 | 夏 軍服を解きたるここち更衣 企業戦士の溝鼠色の背広姿はいただけない 夏日だというのに長袖ワイシャツにネクタイ 戦場へ出向く軍服のようだ 歳々更衣は速まってきているようだが 背広を脱いでクールビズの軽装が許されたときの 解放感は忘れられない 初案 2015/5/6 軍服を脱ぎて漢のクールビズ