竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

鳶の乗る空気重たき二月尽 正木浩一

2021-02-28 | 今日の季語


鳶の乗る空気重たき二月尽 正木浩一

二月の空はまだまだ重く冷たい
掲句の詠む鳶はおそらく海上の空だろう
鳶は一年中活動している
そんの活動は生きるための狩である
春を待つの鳶も同様だ
(小林たけし)

【二月尽】 にがつじん(ニグワツ・・)
◇「二月尽く」 ◇「二月果つ」
2月が終わること。2月は暦の上ではほとんどが春であるが、実際にはまだまだ冬のような寒さを感じる日が多い。「二月尽」にはようやく冬が終るという感じを伴う。

例句  作者

粗朶の束納屋に崩れて二月尽く 高原一子
みちのくにはん女の訃報二月尽 粟野孤舟
二月尽くかがやかざりし一日もて 綾部仁喜

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献体の戻らぬ遺骨霜の声 たけし

2021-02-27 | 入選句


献体の戻らぬ遺骨霜の声 たけし

2021年2月26日 朝日新聞 栃木俳壇
 石倉夏生先生の選をいただきました

投稿日が1月初めだったので
季語が冬になっています

原句は上5が<献体に>だったのところ
掲句の添削をいただきました
助詞の扱いは難しいとつくずく思います

句友のお母様の献体のお話を聞いての作です
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リハビリの妻を叱咤す春一番 川北昭二

2021-02-26 | 今日の季語


リハビリの妻を叱咤す春一番 川北昭二

句意はなんとも明解だが
励ましているのは作者
春一番に励まされているのは作者自身のようにも受け取れる
(小林たけし)


【春一番】 はるいちばん
◇「春一」 ◇「春二番」 ◇「春三番」
春になって最初に吹く強い南風のこと。2月中旬から3月初め頃になる。普通、強い日本海低気圧によるもので、その風で木々の芽がほころび始める。湿気を含み、裏日本ではフェーン現象を伴い、春先の災害のもととなる。春一。

例句 作者

どの顔も漫画めいたり春一番 竹内草華
みちのくは荒神が好き春一番 安田龍泉
ものを言って春一番に吹き飛ばされ 前田吐実男
ダブルスクールとは塾通い 春一番 赤瀬ノブ
下校子の寄り道急かす春一番 矢澤正夫
女学生春一番は目玉焼き 岩田信
悔一つ胸にし行けば春一番 佐野麦葉子
憂きことをドミノ崩しに春一番 竹中芳羊
春一番くれなゐの豚降つてくる 渋谷栄子
春一番さらに短く子の返事 日置正次
春一番しずかにひらく自動ドア 須﨑美穂子
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いのちひとつ母の手にあり梅真白 髙橋三津子

2021-02-24 | 今日の季語


いのちひとつ母の手にあり梅真白 髙橋三津子

上五が六音の字余りが効いているようだ
このゐのちは梅花のようでもあり
母のようでもある
真白も梅のようでもあり母の細く痩せ手のようでもある
梅になぞらえた病室の母と解したが
(小林たけし)

梅】 うめ
◇「白梅」 ◇「野梅」(やばい) ◇「飛梅」(とびうめ) ◇「臥竜梅」(がりゅうばい) ◇「枝垂梅」 ◇「老梅」 ◇「梅林」 ◇「梅園」
バラ科の落葉高木。古く中国より渡来。百花にさきがけて開く花は、五弁で香気が高く、古来春を告げる花として、和漢の詩人、画家に、その清香、気品を愛されている。万葉時代は花といえば埋めであった。花の色は白・紅・薄紅、一重咲・八重咲など多様。

例句 作者

うめ咲いて午後の悦樂俟てば来る 相原澄江
かるくなる空につまづく梅の花 井田茂治
けむりめく衰え白梅まっさかり 政野すず子
ここにいることが遠景梅咲けり 守谷茂泰
これからと言ふ白梅の曲りやう 福原瑛子
しら梅の泥を破りて咲きにけり 照井翠
しろしろと畠の中の梅一本 阿波野青畝
そこここに手焙置かれ梅まつり 富本茂子
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からだじゅうきみどりいろの春の風邪 水口圭子

2021-02-21 | 今日の季語


からだじゅうきみどりいろの春の風邪 水口圭子

からだじゅうがきみどりいろ
現実にはありえない様相なのだから
作者の感性が呼んだ言葉なのだろう
言われてみれば冬の大病の、
前触れともいえる風邪とは違う春の風邪
そうかもしれない、感性に乏しい筆者は納得させられてしまった
(小林たけし)

【春の風邪】 はるのかぜ
◇「春風邪」
風邪は冬に引きやすいが、春になっても余寒が厳しかったりすると、風邪を引くことが多い。冬の風邪と違って、厳しい感じがなく、なんとなく艶めいた趣がある。春の風邪はいつまでも、ぐずぐずと癒らない。

例句 作者

春の風邪机の果の没日かな 加藤楸邨
からだじゅうきみどりいろの春の風邪 水口圭子
しんがりに春風邪引きし男をり 平イチ子
どんよりとまんばうのゐる春の風邪 奧坂まや
会合の不義理を二つ春の風邪 岩永千恵子
右脳のうつらうつらと春の風邪 野木桃花
春の風邪あの世の門は自動ドア 下田幼和
春の風邪ときには弥陀もひき給え 橋閒石
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春曙何すべくして目覚めけむ 野澤節子

2021-02-20 | 今日の季語


春曙何すべくして目覺めけむ 野澤節子

心地よい朝の眠りもいつか目が覚める
特になんら用事の無い日常なのだが
さて何をしようか
何もしなくともさしさわりはない
この目覚めは何のための目覚めなのだろう
作者は目覚めた己を悔やんでもいるように詠める
(小林たけし)


【春暁】 しゅんぎょう(・・ゲウ)
◇「春の暁」 ◇「春の曙」 ◇「春曙」(しゅんしょ) ◇「春の夜明」 ◇「春の朝」
春のあかつき。春の夜明け。春の曙と秋の暮れは日本詩歌が強く心ひかれた春秋二題。

例句 作者

松島や春あけぼのゝ島いくつ 桑田青虎
春暁や死の恍惚も少し知り 能村登四郎
帰りなん春曙の胎内へ 佐藤鬼房
春暁のものの香にある机かな 森 澄雄
春暁や平らたひらに湾展き 上田日差子
春暁の枕いでゆく櫓音かな 佐々木 咲
春暁や人こそ知らね木々の雨 日野草城
物思ふ春あけぼのの明るさに 高木晴子
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釣銭に体温のあり初諸子 松王かをり

2021-02-19 | 今日の季語


釣銭に体温のあり初諸子 松王かをり

売店で焼いている諸子をほおばった
春はまだ浅く風は冷たい
いただいたつり銭にはまだ体温のぬくもりが
実は手が冷え切っていたせいかもしれない
初諸子に春浅をかんじる
(小林たけし)


【諸子魚】 もろこ
◇「諸子」(もろこ) ◇「諸子魚」(もろこうお) ◇「柳諸子」 ◇「初諸子」 ◇「諸子鮠」(もろこはえ)
コイ科の淡水産の硬骨魚。鮠に似た小魚で全長7、8センチ。琵琶湖のものが有名。本もろこ。

例句 作者

比良ばかり雪をのせたり初諸子 飴山 實
火にのせて草のにほひす初諸子 森 澄雄
諸子舟伊吹の晴に出しにけり 茨木和生
水を追ふ近江の旅や初諸子 古賀まり子
初諸子比良も伊吹も湖に見て 斎藤梅子
諸子焼く春の夕べとなりにけり 角川春樹
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人海の波打つ花の無人駅 たけし

2021-02-18 | 入選句



人海の波打つ花の無人駅 たけし

2015年3月15日 朝日新聞
栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただいたもの

渡良瀬渓谷鉄道の駅はほとんどが無人駅だが
桜と紅葉の時期は大変に賑わう

桜を求めて一人吟行をしたおりの作品だ
桜も見事で十分に楽しめたが
あまりにもたくさんの人手に驚愕した
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春寒しシャッター通りに古本屋 たけし

2021-02-17 | 入選句


春寒しシャッター通りに古本屋 たけし

2016年3月8日
朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただいた

宇都宮のアロオン通りは
店のほとんどというほど廃業のようにシャッターを閉じている

そんななかで古本屋が店を開いていたのだが
なんとも春だというのに寒々しく感じられた
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貯炭場の細き真黒き春雨なり 西東三鬼

2021-02-16 | 今日の季語



貯炭場の細き真黒き春雨なり 西東三鬼



【春の雨】 はるのあめ
◇「春雨」
3、4月頃、若芽の出る頃に静かに降る細かい雨。長雨になることが多い。

例句 作者

春雨のかくまで暗くなるものか 高浜虚子
春の雨瓦の布目ぬらし去る 細見綾子
蓮甕のひとつ傾ぎて春の雨 鈴木沙万沙
もつれつゝとけつゝ春の雨の糸 鈴木花蓑
春の雨博多の寿司のくづれをり 角川源義
春雨の遅参の傘をどこへ置く 嶋田麻紀
春雨を嘉すべく世に出でにけむ 中里麦外
厨子王と呼ばれふりむく春の雨 秋篠光広
春雨や小磯の小貝ぬるるほど 蕪村
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春耕の田や少年も個の數に 飯田龍太

2021-02-14 | 句集鑑賞


春耕の田や少年も個の數に 飯田龍太

少年もというのだから田には家族だと解る
田起こしの景だろう
みな黙々と自分の手元足元をみての作業である
少年もしっかりと一人前だ
(小林たけし)


【耕】 たがやし
◇「耕」 ◇「耕す」 ◇「春耕」(しゅんこう) ◇「耕人」 ◇「耕牛」(こうぎゅう) ◇「耕馬」(こうば) ◇「耕耘機」
田返すの意。冬の間手入れをしない田や畑の土を起こして、植え付けの準備をする。かって、春の野良には、営々として鋤鍬をふる人や、牛や馬にすきをひかせて、着々と土を鋤起こして行く真剣な姿が見えたが、今では機械化され大分様子が違ってきた。

例句 作者

耕やせば土のぬくみの戦友くる 奥山甲子男
気の遠くなるまで生きて耕して 永田耕一郎
耕人に余呉の汀の照り昃り 長谷川久々子
耕していちにち遠き父祖の墓 黛 執
春耕や熊野の神を住まはせて 鈴木太郎
遠目には耕しの鍬遅きかな 福永鳴風
耕してふるさとを捨てぬ一俳徒 大木さつき
耕牛やどこかかならず日本海 加藤楸邨
耕して天にのぼるか対州馬 角川源義
春耕の振り向けば父き消ゆるかな 小澤克己
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服薬の水持ち歩く花ぐもり たけし

2021-02-13 | 句集鑑賞



服薬の水持ち歩く花ぐもり たけし

2017年4月1日 読売俳壇にて
宇多喜代子清子先生の選をいただきました

全国紙の入選はなかなか難関で
もう4年m前のことですが
わが目を疑うほどの頼子美でした

句材も句意も素直で
初心の頃の作だと納得できます
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『再来年の約束』田中雅秀第一句集

2021-02-12 | 句集鑑賞



『再来年の約束』田中雅秀第一句集



連句から俳句へと活動の場をする著者の第一句集。



東京から会津に移住一五年、季語の実景を享受する豊かな日常を「あとがき」に語っている。

「花冷え」「幸いあれ」「新しい感動」の三章の名は敬愛する金子兜太師から贈られた色紙二枚と、大切にするようにと言われた師の言葉からのものだという。



「海原」 新潟支部代表北村美都子氏の 跋より

「ほうほたる弱い私を覚えてて」雅秀(まさほ)俳句の表現は一貫して口語体である。軽やかに口語を駆使し、現代に生きる女性の哀歓を呟くように語りかけるように書き留める。

 

自選より



桐の花本音はいつまでも言えず
タイミングが合わない回転ドアと夏
夏野かな何もしないという理想
ファルセットここからはもう雪の域
乗り継いでナウマン象に会う春野
初蝶にもうなっている遺稿かな
海亀は岸に寄りけり赤児泣く
麦の秋青いザリガニ胸に飼い
紅葉かつ散る乾電池切れるまで
白鳥の声する真夜のココアかな



昭和三八年東京生まれ、平成一二年より連句に親しみ、平成一五年「海程」会員、平成一七年「青山俳句工場」参加、平成一八年福島県文学賞奨励賞受賞、平成二〇年福島県文学賞準賞受賞、平成二〇年「海程」同人、

「海程」「青山俳句工場」同人

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命日が二日増えてる古暦 たけし

2021-02-05 | 入選句


命日が二日増えてる古暦 たけし

2021年2月5日 朝日新聞 
栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

昨年末の投句です
年の終わりにカレンダーを取り換えますが
知人の何人かの忌日が記されています

ここ数年、その忌日を手帖に記録することが
習慣になっています

ふと自分自身の余日を思ったりします
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殉死者の墓に寄りそい犬ふぐり たけし

2021-02-04 | 入選句


殉死者の墓に寄りそい犬ふぐり たけし


 朝日新聞 栃木俳壇
石倉夏生先生の選をいただきました

2015年3月17日 もう6年も前のものです 

日光にはたくさんの寺社があります
門外に組石が並んでいることがあります

殉死者の墓だと知りました
殉死はみとめられていなかったので寺社の門内にjは弔われなかったそうです

この季節
そっと犬ふぐりがよりそっているのを観ました
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