繕ひをしない性分古簾 2015-05-31 | 夏 繕ひをしない性分古簾 たけし 長い人生 失敗もあれば後悔することも多い それでも繕うことはしないできた 反省をしそれなりの犠牲も背負ってきたが 恩義のただのりや 善意への甘えは好まない そんな自分は味のある敗れた古い簾 風通しはすこぶるよろしい
紙魚の痕ガリ版刷りの初詩集 2015-05-30 | 夏 紙魚の痕ガリ版刷りの初詩集 たけし 17才 55年も昔になるのか 定時制高校でのサークル「横浜瞳詩好会」で活動していた 「逃げた顔」なるガリ版刷の詩集を作った 一部を当時の友人が先日送ってくれた 紙魚の痕もあるが 青春のたくさんのシーンが浮かんでくる これも懐かしい紙魚である この時に顔は逃げ出した この時じゃら偽りに仮面を繕って生きてきた そして今あの時失った貌を探している
絵手紙の旅は万緑朱き印 2015-05-29 | 夏 絵手紙の旅は万緑朱き印 たけし ワゴン車を簡易なキャンピングカーに設えて 旅を楽しんでいる友がいる 単身ででかけるこよが多いそうだが 奥様を同伴のこともあるという 連泊の時はホテルを利用したり 各地の温泉を梯子したりとなんとも羨ましい 絵手紙がとどいた 全山緑一色 その濃淡が鮮やかだ 朱色の印がある ちょっと気取った感じのなかに 誤らなかった人生が誇らしげで 受け取った当方も嬉しくなった
父の日や選んでみたり吾遺影 2015-05-28 | 夏 父の日や選んでみたり吾遺影 たけし 6月第3日曜日は「父の日」だそうだ 母の日に比べてなんとも影が薄い 祝うだか感謝だかの品をもらても 無防備な笑顔は表すのは不得手でぎごちない 今年はそろそろ遺影の写真でも選んでおこうか そんな気分になってくる
忠魂碑七十年の蟻の道 2015-05-27 | 夏 忠魂碑七十年の蟻の道 たけし 忠魂碑は全国のどこにでも建てられている 国中から戦地へ若者が送られて亡くなったという印だ 建立した人々も殆どがなくなっている戦後70年 どうにも懲りない人類という生き物は 世界の彼方此方で戦争をしている 忠魂碑に蟻の列 彼らは滅びることは無い
空だけにほんとの話朴の花 2015-05-26 | 夏 空だけにほんとの話朴の花 たけし 泰山木と朴が同じなのか 違うようでもあるが 花の形態を検索すると同じ写真が掲載されていたりする 我家には泰山木があるが 俳句の葉朴の花のほうが使い勝手が良い この花は空に向かって大きく開く 高所にあるのでこの花を眺めることは困難だ 空と語るのは何か きにまるところだ
退くを知らぬ産まれや蝸牛 2015-05-25 | 夏 退くを知らぬ産まれや蝸牛 たけし 蝸牛はなんとも奇妙な生き物だ 幼少期には蝸牛との記憶はたくさんある 苛めたりしたことも胸のいたむ記憶だ 虫かごで飼っていたこともある 60年ほどの空白をおいて 今は蝸牛を庭先でみつけては しばらく同じ空気を嗅いでいる 蝸牛のあとずさりをみたことはない
短冊の失せし風鈴居直りぬ 2015-05-24 | 夏 短冊の失せし風鈴居直りぬ たけし 風鈴を軒先に吊るす家が少ない 風鈴は家屋の外と内の境界を無くしいぇしまう なんとも日本的な生活様式に相応しい 風鈴の姿が消えたのは こんな日本的な生活様式が 消えたということかもしれない 短冊の無くなってしまった風鈴 始末もされず憮然とそこに居直っているかのようである
山宿や諷経のやうに滝の音 2015-05-22 | 夏 山宿や諷経のやうに滝の音 たけし 滝の姿 滝の音 滝をみる旅 ふいに発見するような滝はうれしい 遠くに滝の音のひびく山宿 その滝音はありがたく諷経のようだ 心の奥底まで洗われる
絡みあふ人のかたちの枯蓮 2015-05-21 | 冬 絡みあふ人のかたちの枯蓮 たけし 蓮池をみている 蓮の花が威勢が良くて華やかだ ふと枯れた蓮の茎が絡み合っている冬の景がうかんだ 花の盛りはほんのいっとき 人間世界もまったく同じというわけだ 四季おりおりに その季のおのちがある
夏祭どうにもならぬ浪費癖 2015-05-20 | 夏 夏祭どうにもならぬ浪費癖 たけし 生来にぎやかに人と戯れるのが好みである 人を構い構われる時は幸せである 人に喜んでもらうのが嬉しい 人に信越に扱われると幸せである 気分はいつも祭りのようでありたいのだ 明日の事はおいておく 今日のこの現在に精一杯の生きがいを求める どうにもならない浪費癖 いいじゃーありませんか
昼顔のみさかいのなくからみをり 2015-05-19 | 夏 昼顔のみさかいのなくからみをり たけし 植物の生命力は動物をはるかに凌駕する この星の生命体としても先住の偉大さがある 夕顔 可憐なうすいピンク色の花 その蔓は強靭で枯れても強い あたりにあればなににでも絡み付く あいての都合や迷惑は構うことは無い 生きることにルールは無用 生きることが正しいと信じて疑わない
黒南風やますます強く人嫌い 2015-05-18 | 夏 黒南風やますます強く人嫌い たけし 梅雨のはしりの季節 生臭い南風が吹いてくる 湿気をたくさん含んだやりきれない不快な風だ こんな時は期限が悪くなる ふだんでも無愛想なのに ますます近寄りがたお 貌をする
青田風なにも持たない遊行期 2015-05-17 | 夏 青田風なにも持たない遊行期 たけし 古来インドでは人生を4期に分類して その期にふさわしい生き方を実践したいとの思想があるという 日本でも五木寛之氏が紹介して一冊の書籍にしている その題名が「遊行期」で人生の最終期だ 学ぶ、働く、楽しむの期を超えたなら 好きな事だけを何事にも囚われずに生きる 何も持たない、欲しがらない、羨まない こんな期の事らしい 青田の風を受けながら早朝の鳥の声を聴く これで良いと思えてくる
夕つばめ真新な壁の長屋門 2015-05-16 | 夏 夕つばめ真新な壁の長屋門 たけし 朝の散歩コースは5コースある およそ40分4kmを自宅から5方向に選んでいる 20分すすんでスマホのタイマーの音がなるとUターンする そのコースの一つ 大きな農家の長屋門に工事用のシートがかかっていたが 一週間ほど間をおいて前をとおると 屋根を葺き替えて漆喰の壁が塗り替えられて それはそれは見事に完成していた おりからの新緑に映えていてしばし立ち止まってしまった 燕がその門を出入りしている景がうかんだ