耕運機孕み雀の従きまわる 丈子

2024年　春
孕み雀が耕運機のあとを追う

追うや逃水ハーレーダビッドソン 丈子

2024年　春
追いついたことのない逃水
これならどうだ

塗畔を検べる鳩の緩歩かな

2024年　春
田植えも近い
塗り終えた畔を鳩がゆっくり呂歩いているけん

ものの芽のほぐれる気配こぬか雨 丈子

2024年　春
浅春のの小糠雨にうたれる万物の芽
みなほぐれていく

動体視力嘲るようにつばくらめ 丈子

 燕の巣
2024年　春
序都市も軒下に燕が巣作りに忙しい
私の動体視力を嘲るように飛び回っている

紙風船ただいっときの有頂天 丈子

2024年　春
満願の有頂天の喜悦
紙風船のようにもうあとは萎むだけ

ぽつねんと人を待つ顔紙風船 丈子

2024年　春
紙風船は一人遊びも良いが
ほんとうは寂しくてさびしくて

亀鳴くや百仏ねむる絵天井 丈子

2024年　春
寺社詣での鎌倉路
本堂の天井にたくさんの仏さまの絵
清明の庭から亀の鳴声

不器用にひとつのじょうず目刺焼く 丈子

目刺焼く
2024年　春
賞罰のない不器用な一生
目刺を上手に焼くのが取りえ

早とちり硬い頭のつくつくし 丈子

2024年　春
頑固では世情の変化についていけない
分かったちもりでの早とちりは土筆ばかりではない

苗札の声出して読む花言葉 丈子

2024年　春
苗札に花言葉の添え書き
思わず声を出して読んでしまった
心身が春なのだ

ぶらここに余生を休む八十路かな 丈子

2024年　春
毎日が休日の余生の日々
こんな気分もあるあるある

風花や母似の多き三回忌 丈子

２０２４年　春
風花が舞う墓参の三回忌
伯父伯母子供たちだれもが
母の面影を映している

見送ればこっぱみじんに薄氷 丈子

2024年　春
登校の児童を見送る
あとには散らばるこっぱみじんの薄氷

春燈（はるともし）日記はいつも懺悔録 丈子

2024年　春
就寝前の日記
きょう一日の言動をふりかえれば
また反省と後悔

日記は懺悔の記録にあふれている