方丈の大庇より春の蝶 高野素十
ここのところ毎月鎌倉を訪れる
散策や句会が目的だが
寺社詣では欠かさない
季節のうつろいはそれは顕著で
境内の草木、風や鳥の気配もその趣を変化させる
掲句の蝶に遭遇する眼福を心待ちにして歩いてみた (小林たけし)
大きな方丈の大屋根から舞い降りた一匹の蝶
蝶は春の季語だが作者はこの蝶こそが春そのものだと言っている
蝶】 ちょう(テフ)
◇「蝶々」 ◇「白蝶」 ◇「黄蝶」 ◇「しじみ蝶」 ◇「大紫」 ◇「小紫」 ◇「胡蝶」(こちょう) ◇「紋白蝶」 ◇「紋黄蝶」 ◇「山蝶」
いかにも春をおもわせる昆虫である。幼虫は毛虫・青虫の類で、草木を食べて成長し、蛹を経て成虫となる。一般に繭は作らない。種類が多く、日本だけで約250種を数える。昆虫界で最も美しい。蛾と違って昼間飛びあるき、止まるときは多く羽をたたむ。ぜんまいのような口をのばして花の蜜を吸う。胡蝶。かわらびこ。
例句 作者
蝶がくる阿修羅合掌の他の掌に 橋本多佳子
てふてふのひろげてゆきし水の音 奥名春江
失せものにこだはり過ぎぬ蝶の昼 星野立子
蝶を見に船の行交ふところまで 榎本好宏
蝶になほ蝶の黄昏ありにけり 相生垣瓜人
あをあをと空を残して蝶分れ 大野林火
一睡のてふてふとなり遠くまで 大井戸 辿
てふてふや遊びをせむとて吾が生れぬ 大石悦子
蝶去りて磧にのこる石の数 遠藤若狭男