凩や装い軽き念仏僧 流伴 2017-11-30 | 冬 凩や装い軽き念仏僧 念仏僧が托鉢をする姿をみかけることはほとんど無くなったが 鎌倉ではこの寒い木枯らしに吹かれながら 薄い衲衣に身をつつんで若い修行僧をみかける おもわず合掌する私である 発表 2012/12/1 岳36-2
選外といふ一括り菊花鉢 流伴 2017-11-29 | 秋 選外といふ一括り菊花鉢 ちょっと時期遅れになったが菊の展示発表会がさかんだ 毎年この日のために1年がかりで丹精した菊鉢を運び込む 審査で賞を得た鉢には大仰な賞名が冠せられる 選外は一括りで 会場によっては展示すらされることはない 発表 2016/11/7 岳40-1
凩や捜索犬のあばら骨 流伴 2017-11-28 | 冬 凩や捜索犬のあばら骨 遭難や災害に捜索犬の活躍が報道される 最近はチワワやプードルでさへ その能力が証明されている しかしながらシェパードや秋田犬の あの果敢な身のこなしに驚嘆する 彼らはみな この木枯らしの中 痩せていて肋骨がすけて見える 発表 2015/11/15 岳39-1
通夜列に餓鬼大将の大嚏 流伴 2017-11-26 | 冬 通夜列に餓鬼大将の大嚏 旧友に遭遇するのは不祝儀の時がおおくなってきた 通夜や葬式、年回忌などがほとんどだ そんな時には往時の餓鬼大将が大きな嚏をしたりして 場は一瞬なごんだりする 発表 2016/11/2 岳40-1
ぬくもりを溢さぬやうに帰り花 流伴 2017-11-25 | 冬 ぬくもりを溢さぬやうに帰り花 ふと人知れず 静かに一二輪の花を見ることがある 桜もあれば見知らぬ花も見かける みな淡い色をもっていて 初冬の温もりをこぼさない様に静止している 発表 2015/11/15 2016/2/26 地梼圏70
懐手むすんでみたりひらいたり 流伴 2017-11-24 | 冬 懐手むすんでみたりひらいたり 「懐手」という言葉のひびきは好きだ 坂本龍馬、椿三十郎、夏目漱石など 脈絡不順に懐かしく浮かぶのはみな英傑ばかりだ 懐手は便利な仕草だ 深い思考にも、窮乏への忍耐、命を賭す決意にも受け取れる リハビリを隠れてするのは 生きすぎたという照れ隠しだ 発表 2015/11/15 地梼圏66
鶏頭花あげた拳のおきどころ 流伴 2017-11-23 | 冬 鶏頭花あげた拳のおきどころ 鶏頭の花はその形から名付けられたに違いないが 私には握った拳のように見えてくる 振り上げた拳のおきどころに逡巡している 世情はここのところいよいよ腹立たしい 発表 地梼圏70号
数え日や柊の葉のいよ尖る 2017-11-22 | 冬 数え日や柊の葉のいよ尖る 師走の風は肌で感じる以上に冷たくきつい やりかけの仕事も気になる 今年もたくさんの間違いがあった ちくりちくりと柊の葉の棘のように いよいよ年末、ますます胸につきささる 原句発表 2014/11/15遊牧089 柊のいよ尖る懐手 句意の発想時そのままだったが 季語が唐突だったと思っていた
冬波の冬波を生む声やまず 流伴 2017-11-21 | 冬 冬波の冬波を生む声やまず 冬の海は格別のおもむきがある あらゆる思考を静止させて 波の音だけの世界に溶け込んでしまう その波音は次の波を呼んで留まることは無い 発表 2014/11/15 街111
枯野には色鉛筆の二三本 2017-11-20 | 冬 枯野には色鉛筆の二三本 枯野の淡い少ない彩が良い 薄く濃く 二三本の色鉛筆で描けそうだ その枯野にねむるたくさんの命を なでさする 発表 2014/11/15岳38-2
冬怒涛五感たちまち尖らせる 流伴 2017-11-19 | 冬 冬怒涛五感たちまち尖らせる 冬の海は概ねおだやかだが ひとたび荒れると凄まじく咆哮する そんな冬の怒涛が好きだ 頭の中が洗われて五感は研ぎ澄まされる 波濤と呼応して尖ってくるような爽快感が好もしいのだ 原句発表2014/11/15岳38-1 冬の海五感忽ち尖りたる 掲句では五感を尖らせるのは怒涛だと断定した
襟たてて屋台の原発論議かな 流伴 2017-11-18 | 冬 襟たてて屋台の原発論議かな 屋台での隣り合わせの一期一会に 論議ははずむ 熱燗に立てていた襟もいつか収まって 結論は 少々不便でも原発はいらばい 発表 2014/11/15岳38-1
綿虫の見えぬ世界に人ばかり 流伴 2017-11-17 | 冬 綿虫の見えぬ世界に人ばかり 綿虫をみることはほとんふぉなくなった 文明文化の発展は人だけに光を当てようとする 野蛮な行為なのだろう 文明とは自然破壊の歴史だろう 発表 2013/11/15 岳37-1 【綿虫】 わたむし ◇「雪蛍」 ◇「雪婆」(ゆきばんば) ◇「大綿雪虫」 晩秋から初冬の、風のない穏やかな日和のとき、白い綿毛に包まれた微小な虫がふわふわと宙を漂う。これを俗称「綿虫」という。雪国ではこれを、雪の季節の前触れとして「雪虫」と呼ぶ。その他にも、大綿(東京)、白子屋お駒はん(京都)、しろばんば(伊豆)などの呼称もあり、長閑でメルヘンを感じさせる。しかし、アブラムシ類のワタムシの飛翔は、産卵のために有翅・有性の雌が新たな寄生樹種へと移住するときの光景だという。
十二月老いの朝寝は咎ならず 2017-11-16 | 入選句 十二月老いの朝寝は咎ならず 師走ともなれば 「数え日」などの言葉もあるほどに忙しい 年内にしなければならない事 来年の準備 そんな娑婆の些事も老いてくると少なくなって 最近は何もない 朝寝しても困ることもなければ咎められもしない 余命とはよく言ったものだと思う 発表 2015/11/15 地梼圏66 入選 2015/12/15 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
泣いてゐるのはだれ冬のしゃぼん玉 流伴 2017-11-15 | 冬 泣いてゐるのはだれ冬のしゃぼん玉 しゃぼん玉は夏の定番で だれにでも郷愁を感じさせる その郷愁はおおむね笑顔を伴う多い され冬のしゃぼん玉 泣顔がうかんでくるのは何故 発表 街123 2016/11/17