竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

寒卵まさかと思う双子かな たけし

2022-01-31 | 今日の季語で一句


寒卵まさかと思う双子かな たけし

句意は平明、明瞭
何かしあわせ気分になる
こうした些事に感じる感性を失いたくないと思う
句としては双子を自分の子としても良いだろう
(小林たけし)


冬(晩冬)・生活・行事
【寒卵】 かんたまご
◇「寒玉子」
鶏が寒中に産んだ卵のこと。卵はもともと滋養に富んでいるが、特にこの時期のものが良いといわれている。

例句 作者

寒玉子一つ両手にうけしかな 久米三汀
寒卵薔薇色させる朝ありぬ 石田波郷
大つぶの寒卵おく襤褸の上 飯田蛇笏
寒卵二つ置きたり相寄らず 細見綾子
つつましく日を過しをり寒卵 森 澄雄
寒卵割る一瞬の音なりき 山口波津女
寒卵割れば直ちに自転かな 星野紗一
ぬく飯に落して円か寒玉子 高浜虚子

咳ぶけば失禁のごと狼狽える たけし

2022-01-30 | 今日の季語で一句


咳ぶけば失禁のごと狼狽える たけし

コロナ禍の市井
みなマスクして黙の人混み
咳などすれば大顰蹙だ
失禁したかのように狼狽ええる
(小林たけし)


【咳】 せき
◇「咳く」(しわぶく) ◇「咳く」(せく)
風邪の症状のひとつ。気管支が寒気に刺激されても出る。

例句 作者

ジャズの中咳を落してわが過ぎぬ 石田波郷
行く人の咳こぼしつゝ遠ざかる 高浜虚子
咳熄んで大きな石をみつめゐる 菅原鬨也
咳をして言ひ途切れたるままのこと 細見綾子
ふるさとはひとりの咳のあとの闇 飯田龍太
咳くと胸の辺に月こぼれきぬ 角川源義
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女
妻の留守ひとりの咳をしつくしぬ 日野草城
そこここに虚子嫌ひゐて咳払ひ 鷹羽狩行

切干や稜線尖る妙義山 たけし

2022-01-29 | 今日の季語で一句


切干や稜線尖る妙義山 たけし

切干の季語を用いての作句ははじめてだ
切干→空→風→山 の連想からの1句
こうした作り方もあるか?
(小林たけし)


冬(三冬)・生活・行事
【切干】 きりぼし
大根、さつまいもの保存方法のひとつ。切ったものを筵などの上に晒してつくる。切り方により輪切り干し、千切り干しなど。季語においては大根をさす。

例句 作者

切干や家郷捨てたるにはあらず 小島 健
切干やいのちの限り妻の恩 日野草城
切干の煮ゆる香座右に針仕事 高浜虚子
切干の夜目にも白く浦貧し 鈴木泊舟
切干大根ちりちりちぢむ九十九里 大野林火
切干のむしろを展べて雲遠し 富安風生
切干刻んで根が生えたやう老婆の座 加藤楸邨

毛糸帽ひとりが好きでさみしくて たけし

2022-01-28 | 今日の季語で一句


毛糸帽ひとりが好きでさみしくて たけし

この句の主人公には誰もがなれる
最近はこのような平易なすっきりした句が詠めなくなっている
キャリアは時に邪魔になるのかも知れない
自分的には捨てられない1句になっている
2016年冬に詠んだもの
角川平成俳壇岩岡中正氏の選にて佳作入選した
(小林たけし)



冬(三冬)・生活・行事
【毛糸編む】 けいとあむ
◇「毛糸」 ◇「毛糸玉」
セーター、マフラー、手袋などを毛糸で編むことをいう。機械編みもあるが、女性が編み棒で一目一目編むことが本意であろう。

例句 作者

離れて遠き吾子の形に毛糸編む 石田波郷
毛糸玉まろぶ日差のある方へ 黛 執
毛糸編む一つ想ひを追ひつづけ 波多野爽波
母となる日の遠からず毛糸編み 遠藤若狭男
毛糸あめば馬車はもしばし海に沿ひ 木下夕爾
家のこと何もせぬ娘が毛糸編む 口友静子
久方の空いろの毛糸編んでをり 久保田万太郎
誰もゐぬ夜へ転がす毛糸玉 宮倉浅子
白壁に消えも入らずに毛糸編み 平畑静塔
毛糸編み来世も夫にかく編まん 山口波津女


褞袍から見上げた記憶父の髭 たけし

2022-01-27 | 今日の季語で一句


褞袍から見上げた記憶父の髭 たけし

褞袍はもう死語にちかいのではないだろうか
丹前はきくこともあるが同一物には思えない
褞袍の方があたたかい感じがして掲句のような思老いがある
これは私の実体験だったはずだが定かではない
(小林たけし)


冬(三冬)・生活・行事
【褞袍】 どてら
◇「丹前」
綿を厚くした袖広の防寒着。「どてら」は江戸名、関西地方では「丹前」という。

例句 作者

昨今の心のなごむ褞袍かな 飯田蛇笏
汐風呂に千鳥きく夜や貸どてら 岡野知十
病み暮らす月日も古りし褞袍かな 稲田都穂
山茶花を愛す褞袍にくつろいで 遠藤梧逸
声高に湯の町をゆく褞袍かな 渋沢渋亭
褞袍の脛打つて老教授「んだんだ」と 加藤楸邨

鉄塔の四肢の地団駄寒九朗 たけし

2022-01-26 | 今日の季語で一句


鉄塔の四肢の地団駄寒九朗 たけし

小寒から九日目を寒九という
その寒さを寒九郎と呼ぶ
送電塔が吹く虎落笛
足元は寒さに凍えて地団駄を踏んでいるようだ
(小林たけし)

冬(三冬)・時候
【寒し】 さむし
◇「寒さ」 ◇「寒気」 ◇「寒冷」
漠然と、寒いこと、またその程度を言い、寒き朝、寒き夜などと用いられる感覚的な冬の季語。しかし、「寒」の字を付した熟語は秋・春にも多く、さらに転じて貧しさ、賤しさを現すこともある。用例には「寒さかな」を座五に据えたものが多い。

例句 作者

日雀来てすぐ去る寒き日なりけり 水原秋櫻子
二十世紀過ぎてしまひぬただ寒し 桂 信子
切支丹坂を下り来る寒さかな 芥川龍之介
下北の寒きほくろに酔はされし 菅原鬨也
馬小屋に馬のをらざる寒さかな 茂木連葉子
無言館に入るは英霊訪ふ寒さ 鈴木榮子
鐘の音のとどのつまりの寒さかな 山田真砂年
埴輪より寒げなる頬してをりぬ 行方克己
いちにちをなんにもせずに寒かりき 今井杏太郎
わが影の付き来て楽し寒き日も 高橋信之


性悪の強情ぞろい泥大根 たけし

2022-01-25 | 今日の季語で一句


性悪の強情ぞろい泥大根 たけし

泥大根を洗った経験はないが
川水や堀水で大根を洗いながら
農家の主婦が笑顔を交わしながらの姿を
報道などでよく見かけた
二股に分かれたもの
澄んずまりでやたら太いもの
それぞれに個性がありそう
性悪も強情もそれは個性だ
(小林たけし)


冬(三冬)・植物
【大根】 だいこん
◇「だいこ」 ◇「おおね」 ◇「すずしろ」 ◇「赤大根」 ◇「大根畑」
ダイコンの古名「おほね」は、今日の「大根足」とは大いに異なり、女性の白いつややかな腕の枕詞であった。七草の清白(すずしろ)の呼び名も、かつてのダイコンのイメージを伝える。ダイコンは、漬けたり、干したり、煮たり、卸したりと、その用途は広く、根の大きな白い野菜として、特に冬の味覚となっている。

例句 作者

畑大根皆肩出して月浴びぬ 川端茅舎
晩年も父欲し大根おろしつつ 岡部六弥太
身を載せて桜島大根切りにけり 朝倉和江
流れ行く大根の葉の早さかな 高浜虚子
大根煮て昔のやうに抱かれけり 星野明世
大根に実の入る旅の寒さかな 園女
大根と肩を並べてゐるとする 桑原三郎
菊の後大根の外更になし 芭蕉
この火の色は祖母のだ大根煮えている 伊丹公子
大根を抱き碧空を見てゆけり 飯田龍太


山小屋に終生の友雪月夜 たけし

2022-01-24 | 今日の季語で一句


山小屋に終生の友雪月夜 たけし

20代前半まではよく山を歩いた
とぃのは中級程度の登山も経験した
尾瀬の山小屋で出会ったAは
生涯の友となり50年後の現在も
親しく交流がある
あの時の雪月夜は忘れられない
(小林たけし)


冬(晩冬)・天文
【雪】 ゆき
◇「小雪」 ◇「深雪」(みゆき) ◇「六花」(むつのはな) ◇「雪の花」 ◇「粉雪」 ◇「積雪」 ◇「根雪」 ◇「細雪」(ささめゆき) ◇「小米雪」(こごめゆき) ◇「雪月夜」 ◇「雪景色」 ◇「暮雪」(ぼせつ) ◇「飛雪」(ひせつ) ◇「雪明り」
月・花とともに日本の三大季語の一つ。古くから冬を代表する伝統的な美として意識され続けている。したがって雪に関わる言葉は沢山生まれ、雪の結晶の形から雪の質、その降りかた、暮しの中での雪等々、枚挙に遑がないほどである。詠み手の思いや感じ取り方を生かした季語の選定に心がけたい。

例句 作者

鯉食うて雪の深さに居坐れり 小島千架子
匂ひして雪が来るなと思ひけり 能村登四郎
雪尖るレイテに果てし兵の墓 品川鈴子
大雪を連れて父の忌来たりけり 勝又星津女
雪はげし灯して碧きなまこ切る 吉野義子
ゆきふるといひしばかりの人しづか 室生犀星
まだ誰も入りてはをらぬ雪の寺 森田公司
いまだ生を知らず雪片耳に入り 伊藤白潮
酒のめばいとゞ寝られね夜の雪 芭蕉
人の世は淋しからむと雪降らす 片山由美子


ひとり子のまあるい背中寒椿 たけし

2022-01-23 | 今日の季語で一句


ひとり子のまあるい背中寒椿 たけし

寒椿で詠んだ句はなかった
今日の日めくりカレンダーは「寒椿」
すと浮かんだ1句である
私の幼年期の懐旧だ
母を待門口に寒椿があった記憶
寒さに背中はまるくなっていた
(小林たけし)


冬(晩冬)・植物
【寒椿】 かんつばき
◇「冬椿」
春の花である椿が、寒中に真紅の花を咲かせたもの。寒気に耐えて咲く寒椿には健気なイメージがある。しかし一方で、カンツバキという植物学上の種類も存在し、八重咲きのサザンカに似た赤い花をつける。これは本来冬季に花を咲かせるサザンカの仲間であり、花は「落つ」ではなく、花弁がぱらぱらと「散る」。

例句 作者

寒椿落ちたるほかに塵もなし 篠田悌二郎
寒椿赤し一揆の血が流れ 関口ふさの
冬椿落ちたる音もなかりけり 鷲谷七菜子
汲みたての水揺れてゐる寒椿 桂 信子
ふるさとの町に坂無し冬椿 鈴木真砂女
汐入りの池あたゝかし寒椿 中村汀女
飲食に倦むときのあり寒椿 森 澄雄
海の日に少し焦げたる冬椿 高浜虚子
一つ咲く冬の椿を切りにけり 富安風生
我が誕生日祝ぐ色揃へ寒椿 五十嵐播水


竜の玉忌明けの朝の深眠り たけし

2022-01-22 | 今日の季語で一句


竜の玉忌明けの朝の深眠り たけし

実際の私のことである
母の七回忌を無事に済ませた翌朝
心地用疲れと安堵感で
朝寝をむさぼった
竜の玉の斡旋は
突然のひらめきだが自分は気に入っている
母もやすらかにの感じがあるのではないか
(小林たけし)



冬(三冬)・植物
【竜の玉】 りゅうのたま
◇「蛇の髯の実」(じゃのひげのみ) ◇「竜の髯の実」
ジャノヒゲ(別称リュウノヒゲ)の実を指す。公園の花壇や歩道の縁などによく植えられているが、冬になると艶やかなコバルト色の種子が目に付く。直径7mmほどの種子は、床に落すとよく弾むので「はずみ玉」の名もある。

例句 作者

故郷はいつも夕暮れ竜の玉 今城知子
わが胸のうちにもあるぞ竜の玉 青柳志解樹
人ごゑの坂下りて来る龍の玉 小笠原和男
人の手に惜しみ返しぬ竜の玉 皆吉爽雨
少年の夢老年の夢竜の玉 森 澄雄
竜の玉深く蔵すといふことを 高浜虚子
深々と沈みて碧し竜の玉 野村喜舟


狼に永久の哀愁寒の月 たけし

2022-01-21 | 今日の季語で一句


狼に永久の哀愁寒の月 たけし

狼が冬の季語とは知っていたが
狼だけでは季節感が乏しい
害獣として駆除された狼だが
その遠吠えの姿に哀愁を感じてならない
寒の月 を斡旋したがどうだろう
(小林たけし)


冬(三冬)・動物
【狼】 おおかみ(オホ・・)
◇「山犬」
食肉目イヌ科イヌ属。まさにイヌの祖先。ニホンオオカミはすでに明治38年に絶滅したとされる。家畜を襲うことから害獣とされたり、毛皮が高値で取引されたこともその一因であろう。しかし一方でオオカミを神の眷属として祀る神社もある。人間との深い関わりを示す例であろう。

例句 作者

狼の声そろふなり雪のくれ 丈草
天に天狼日本狼死に絶えし 島 世衣子
沼涸れて狼渡る月夜かな 村上鬼城
狼や剣のごとき月の弦 細木芒角星
山河荒涼狼の絶えしより 佐藤鬼房

大寒の朝は大股三千歩 たけし

2022-01-20 | 今日の季語で一句


大寒の朝は大股三千歩 たけし

朝の弱い孫を誘って
毎朝ウオーキングをしていた時期があった
3日坊主でなかなか習慣づかない孫だったが
朝のウオ^キングは2年近くつづいた記憶がある
その頃の1句だ
私にとっては大切な1句となった
今から思えば孫が私を鍛えていたのかもしれない
彼はもう今年27才になる
(小林たけし)


冬(晩冬)・時候
【大寒】 だいかん
二十四節気の一つ。小寒に続く1月20、21日頃からの15日間を云う。陰暦では12月中であり、まさに厳寒の時季。しかし寒くはあるが、空には早春のひかりが宿り始めており、梅の便りも聞こえてくる。

例句 作者

大寒の埃の如く人死ぬる  高浜虚子
大寒の犬急ぐなり葛西橋 殿村莵絲子
大寒の紅き肉吊り中華街 池田秀水
大寒のここはなんにも置かぬ部屋 桂 信子
大寒の一戸もかくれなき故郷 飯田龍太
大寒の入日野の池を見失ふ 水原秋櫻子
大寒や小浜しぶとき紙相撲 野家啓一
大寒をただおろおろと母すごす 大野林火
大寒や水あげて澄む茎の桶 村上鬼城
馬の顔大寒の日にあたたまる 中里麦外

雪雲やかそけき父の荼毘けむり たけし

2022-01-19 | 今日の季語で一句


雪雲やかそけき父の荼毘けむり たけし

先日のお弔い
遺された子息と荼毘の煙を目で追った
おりからの寒気に
今にも雪になりそうな気配だった
(小林たけし)


初時雨】 はつしぐれ
冬の初めに降る時雨のこと。時雨とは、もともと晩秋から初冬にかけて少時間降る雨のことだが、「初」を冠することでいよいよ時雨の季節に入ったとの感慨を強くする。さびしさとともに、一すじの華やぎも詠いこめられている。

通夜灯り冬満月のうすっぺら たけし

2022-01-18 | 今日の季語で一句


通夜灯り冬満月のうすっぺら たけし

旧知が急逝
縁戚は九州ということで小さな家族葬だった
コロナ禍ということもあって
参集者も少なく
読経も簡易なものに感じられた
通夜の帰途
おりからの満月で夜空は煌々としていたが
なにかうすっぺらに感じられた
(小林たけし)


冬(三冬)・天文
【冬の月】 ふゆのつき
◇「月冴ゆる」 ◇「月氷る」 ◇「寒月」 ◇「冬満月」 ◇「寒満月」 ◇「冬三日月」 ◇「寒三日月」
冬の月は悽愴な美しさをたたえる。さびしく、美しく、透徹している様は、他の季節の月からは味わえない。「寒月」は本来的には冬の月と同意だたが、さらに凍てつき、冷え冷えとした月の感じが強い。寂寥感はさらに増す。

手を摶つて粉はらふ昼寒日和 桂信子

2022-01-16 | 今日の季語


手を摶つて粉はらふ昼寒日和 桂信子

はらう粉は何男粉だろうかと思わせる
寒日和 あまりみかけない季語の対語として
浮かぶのは雪、花 やはり雪片か
作者の明るい表情が映ってくる
(小林たけし)


【冬晴れ】 ふゆばれ
◇「冬日和」 ◇「冬晴るる」
冬の冴えわたった晴天。語感は、その晴れようの鋭さ、厳しさを伝える。冬晴れの下でのくっきりとした物象のたたずまいには印象鮮明なものがある。

例句 作者

半世紀過ぎたる社屋寒晴れぬ ひびのせつこ
寒晴のどつと来てゐる涅槃像 桜木久子
寒晴の以後はつつしむ箇条書 森早和世
寒晴やあはれ舞妓の背の高き 飯島晴子
寒晴や嬰のまばたきひびくごと 住谷不未夫
寒晴や観音様の薄き胸 山尾かづひろ
寒晴れの粘土めきたる病み上がり 赤羽根めぐみ
禽獣とゐて魂なごむ寒日和 西島麦南