竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

霜柱男はいつも少年に 丈子

2024-01-31 | 第一句集「裂帛」自選


霜柱をザクリザクリと踏み砕いた
記憶をだれもが持て要る
男はいつだって霜柱の前では少年になる

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駅頭に重たい時間冬灯 丈子

2024-01-30 | 第一句集「裂帛」自選


冬の駅頭は
空も空気も話し声までもが
重くさびしげだ
たくさんの灯もくぐもっている

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木の葉髪墓誌の余白を目でなぞる 丈子

2024-01-29 | 第一句集「裂帛」自選

墓誌に水をかけたりするが
ここのところその余白が妙に気にかかる
薄くなった髪を手に
次はきっと自分の名が刻まれると思うのだ
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通夜灯り冬満月のうすっぺら 丈子

2024-01-28 | 第一句集「裂帛」自選


通夜の斎場はやけに明るい
帰途に見上げた
冬の満月はうすっぺらだった

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寒星や土竜たたきのように通夜 丈子

2024-01-27 | 第一句集「裂帛」自選


寒中の最中に知友の訃報がとどく
もぐらたたきのように二度も三度も


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山茶花の近づけば散る人嫌い 丈子

2024-01-26 | 第一句集「裂帛」自選

山茶花の生垣がある
おや咲き始めたなと近づくと
いやいやするようにポトリと落ちる
人ぎらいなのか私が嫌いなのか

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煮凝りに重心の無い安堵感 丈子

2024-01-25 | 第一句集「裂帛」自選


煮凝りは箸で掴むのはなかなか難儀だが
その重心のないところに何やら
不思議な安堵感を感じる

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海鼠腸の秘密めきたる暗紫色 丈子

2024-01-24 | 第一句集「裂帛」自選


海鼠は好物のひとつだが
海鼠腸はこの上ない珍味である
原形の欠片もみせない
その暗紫色の毛色の悪さも良い

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虎落笛魍魎の子の乳せびる 丈子

2024-01-23 | 第一句集「裂帛」自選


魍魎(みえない化物)の子が乳
を欲しがって泣いている
それがこの虎落笛なのだ





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哲学の道後ろ手の寒鴉 丈子

2024-01-22 | 第一句集「裂帛」自選


第一句集「裂帛」自選京都の哲学の道が好きで何度も訪れている
人影の少ないこの季節も風情がひとしおだ
出会った一羽の鴉が姿は哲学者に重なった

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オートキー仕事納めの事もなし 丈子

2024-01-21 | 第一句集「裂帛」自選


昭和期の仕事納めは一大イベントだったが
今ではなんでもワンタッチ
きのうと何も変わらない
デジタルには汗も血も涙もない

推敲 事も無し仕事納めのオートキー

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逆賊に理義のあれかし冬桜 丈子

2024-01-20 | 第一句集「裂帛」自選


静岡県由比への吟行での句
由井正雪ゆかりの寺社でのもの

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薬喰理性のへこむ好奇心 丈子

2024-01-19 | 第一句集「裂帛」自選


好奇心は理性を阻む
はじめての食材への好奇心は止まらない
好奇心に素直に行動して後悔したためしはない

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煮大根何度も本音聞き返す 丈子

2024-01-18 | 第一句集「裂帛」自選


少年期の母との会話である
聞き返したのは私だが読者は大根を煮ている人と捉えたらしい
煮大根との取り合わせを評価された

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冬のしゃぼん玉鳴いているのはだーれ 丈子

2024-01-16 | 第一句集「裂帛」自選


冬のしゃぼん玉は何故かもの哀しい
小さな子の泣顔が浮かぶ

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