竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

雪原を奔る雲影春兆す    たけし

2019-03-27 | 



雪原を奔る雲影春兆す    たけし





俳句は自得の文芸と割り切っているが

独りよがりに陥る危険がある



自身でもある程度の得心があって

他から評価される句を佳としている



今回掲句が毎日のようにトライしている

「俳句大学」の投句で安倍真理子氏の選をいただいた



鑑賞文は過分で赤面ものなのだが参照いただきたい





安倍真理子 一句鑑賞】(3月24日「一日一句互選」より)



雪原を奔る雲影春兆す    たけし



 大地はまだ雪に覆われている。その上を雲の影が奔る。ただそれだけのことだけれど、作者はその景に、冬とは明らかに異なる春の気配を感じている。
 「雪原」の白と「雲影」の黒のコントラストがとてもいい。「雲影」が「奔る」、そのスピード感もとてもいい。降りそそぐ陽差し、雪の煌めき、青空を流れる雲、雪の匂いの風、そのなかにある、動き出そうとする樹々の匂い。簡潔な描写と「春兆す」という季語の働きによって、情景がいきいきとひろがってゆく。
 いつの間にか、私も雪原に立っていた。




キエンセラ組まれ解かれて花の塵 たけし

2018-05-04 | 
キエンセラ組まれ解かれて花の塵




東北、北海道の桜もいよいよ終わった
あとは「花は葉に」なって夏の到来だ

散り際の桜が好きだという人も少なくない
また川をゆるやかに下る花筏も風情がある

花筏と雅な呼称もあるが「花の塵」との呼名も捨てがたい
これを眺めていてあのスペインの「キエンセラ」の音調が浮かんだ


キエンセラの日本語訳

俺を好きになってくれる人は誰
誰だろう、誰だろう
俺に恋愛をくれる人は誰
誰だろう、誰だろう

出会えるのかも分からない
分からない、分からない
また、寄りを戻せるのか分からない
分からない、分からない

また、恋愛での情熱の元で生きるようこと望んでいた
きのうのように、幸福に感じさせてくれる恋愛での

俺を好きになってくれる人は誰
誰だろう、誰だろう
俺に恋愛をくれる人は誰
誰だろう、誰だろう

鳥曇なかなか消せぬ涙あと  たけし

2018-05-02 | 
鳥曇なかなか消せぬ涙あと




泣きぬれた顔を隠して
夕暮れの道を歩いた幼年期
だれもいない公園でぶらんこを漕いでいると
何故か悲しkなったこともあった

そんな時は泣いた痕跡は消さないと帰れない
今の子供らにはこんな感傷はあるのだろうか



初案 2017/2/16
半仙戯なかなか消せぬ涙あと
「半仙戯」は適当でなかったように思っていたが
「鳥曇」の空をみて閃いた

【鳥曇】 とりぐもり
◇「鳥風」 ◇「鳥雲」
秋から冬にかけて日本で越冬した渡り鳥が北へ去るころの曇り空。その頃の風を鳥風ともいう。
例句 作者
鳥曇波のこみあふ隅田川 久保田慶子
また職をさがさねばならず鳥ぐもり 安住 敦
廃園にただ来しのみぞ鳥曇 藤田湘子
眼鏡より曇りはじめし鳥曇 亀田虎童子
腰痛のゆゑの不機嫌鳥ぐもり 原 赤松子
海に沿ふ一筋町や鳥曇 高浜虚子
振つてみるアフガンの鈴鳥曇 川崎展宏
毎日の鞄小脇に鳥曇 富安風生

冥界に更衣とや石仏 たけし

2018-05-01 | 
冥界に更衣とや石仏





更衣は6月1日と決められているが
しばらく以前からこの風潮は一部の官公庁を除いて
自由のようだ

四季を通じて個人が自由な服装を楽しむ
鎌倉の寺社廻りなどをしていると
外国人も多く、コートを羽織る日本人の列に
半袖の外国人がいたりするのは珍しくない

そんな光景を路傍の石仏が
訝し気な眼差しをむけている


初案 2013/4/15
冥界も更衣なり石仏

「売切御免」蕎麦に昼酒蕗の薹 たけし

2018-04-30 | 
「売切御免」蕎麦に昼酒蕗の薹




馴染みの蕎麦屋に見慣れた貼紙
「売切れ御免 蕗の薹あります」
毎年、春を告げる蕗の薹の天婦羅を提供する
十割蕎麦をたのんで
この天婦羅で昼酒の至福を味あう
ことになるのも毎年の決まりだ

初案 2018/3/8
「売切御免」蕎麦を待つ間に蕗の薹
待つ間はいらない

奇書悪書ルーペ片手に春燈下 

2018-04-29 | 
奇書悪書ルーペ片手に春燈下 




終活なる言葉は他人事だと思っていたが
書棚には家人に見せられない書物が少なからずある

妻には許されるとしても
子供や孫には知られたくない

少しばかりの矜持と尊厳が氷解する
始末しようとするが
ページをめくりだして捗らない

初案 2017/3/14 
春燈下ルーペ片手に奇書悪書

葉脈の陽の突き通る春紅葉 たけし

2018-04-28 | 
葉脈の陽の突き通る春紅葉




春、新緑の紅葉が美しい
私は錦秋の山よりもこの新緑を好む
若葉の初々しい葉脈を
春光が浮き上がらせる
見上げると折り重なった何枚もの葉が
濃く薄く影なしていて時間が止まる


初案 2014/4/15
濃く薄く日をかかえおり春もみじ

自分史の戦中戦後山桜 たけし

2018-04-27 | 
自分史の戦中戦後山桜




春宵は人をやさしくするようだ
読み止しの本を整理したり
旧い写真を探してみたり
昔の日記を眺めたりする

小学校でのあの脱脂粉乳のミルクとコッペパン
街中で唄う傷痍軍人

自分史のなかはまだまだ戦後が克明だ
最近のきな臭さが気がかりだ

社案 2015/4/15
自分史の戦前戦後春燈下
季語を工夫し 戦前を戦中(昭和18年生)に正しく改めた

サンパンの吃水線に春の潮 たけし

2018-04-24 | 
サンパンの吃水線に春の潮




サンパンは沖に停泊の船に
乗組員や物資を運搬する小さな舟だ
一昔前までは横浜港の埠頭にたくさんあった
岸からサンパンへは頼りない板が渡されていて
そこを荷物を担いだ荷役妊婦がひょうひょうと渡る

揺れる船につれて喫水線は定まらない

子供心に感動と憧れを覚えて見とれていた
時に気さくなニンプが乗せてくれたりもしたくれた


発表 2016/12/26