蟻穴を出る知るよしなきの派遣先 2016-02-14 | 春 蟻穴を出る知るよしなきの派遣先 世界中が不穏な空気に包まれている この国も決して他人事ではない 一触即発は憲法を薄っぺらなものに変えてしまう 国家の大事には超法規が許される などと発言する政治家も売る 派遣先も知らされずに 出撃する自衛隊は幻であってほしい
裸電球ひとつの記憶紙雛 2016-02-13 | 春 裸電球ひとつの記憶紙雛 雛人形はなにかもの哀しい顔が多いように感じられてならない 豪華な内裏雛の顔にも笑顔はない 戦中戦後の裸電球の記憶が蘇る 紙雛には救われる
春灯やシャッター通りの古本屋 2016-02-12 | 春 春灯やシャッター通りの古本屋 古本屋という響きより古書店のほうが好みだが 最近はチェーン展のブックオフなどが大勢になっている 頑固で無愛想な店主の親しみが懐かしい 何代も続いているお店も商店街の衰退に流されて シャッター通りの一部になった 人通りのない道の春の明かりがなんとも優しい
三代の犬の埋け墓蕗の薹 2016-02-11 | 春 三代の犬の埋け墓蕗の薹 飼い犬が我家から絶えたことがない 家族のだれもが犬好きで4番目の孫娘はトリマーを目指しているほどである 犬の墓所を求めて供養したこともあるが ここ3代は火葬の後に自宅の庭の隅に埋葬している そのあたりに何年か前から蕗の薹が芽をだす
選りまどうふ己の遺影春の夜 2016-02-10 | 春 選りまどうふ己の遺影春の夜 「春の夜」はなんとも艶っぽい日武器にあふれている ふりかえればいくつかの忘れえぬ記憶も鮮明にある 娘から「いざという時のために遺影を選んでおくように」との言葉 素直に聞いたが なかなかはかどる作業ではない」
猫の子に命のそなえ甘え声 2016-02-09 | 春 猫の子に命のそなえ甘え声 まだ目のあかない子猫 その動きや鳴き声には 計算しつくされたような見事なものがある 命を守る備えだろうか 周囲のなにもかもが彼らの味方になってしまう 愛くるしい仕草 澄んだなにかを訴えるような瞳 何にもましてその声の甘さ艶っぽささえも
首筋にやはらかきもの春隣 2016-02-06 | 春 首筋にやはらかきもの春隣 春隣はきふぉとしては冬だが 首筋の風がやわらかく感じたらそれはもう春 釣り糸をたれる湖畔の日差しも 雪をやわらかくつつみようだ
陽炎にけむる子のこゑ忠魂碑 2016-02-05 | 春 陽炎にけむる子のこゑ忠魂碑 空気がゆるんできている感じがある しばらくすれば草木の息吹が陽炎となるだろう 小さな子供が外で駆け回る姿もみえる季節がやってくる 忠魂碑のある公園 戦争を知らない若い母親がいる この国はいつも楽観論が優勢だ
立春吉日墨書のきまりつつがなき 2016-02-04 | 春 立春吉日墨書のきまりつつがなき 立春には毎年家を守るというお守りを極暑する 玄関と裏口には「悪者防止」のもので災いをもたらす者を家に入れないというもの 神棚には「家内安全」をお願いするもの 3枚のお札をつくり昨年のものと交換する 昨年のものは庭で燃やす 今朝は上天気 焼却の灰が真っ青な空に舞い上がった
子の帰る光のなかの垂氷かな 2016-02-03 | 冬 子の帰る光のなかの垂氷かな 今日で冬の季節は終わりだそうだ 季語はいつも実際の季節よりも先行している 旧暦との差異はあるものの先人の前向きさにはいつも感心する 垂氷は初案では軒氷だったが軒氷は意味が全く違うらしい
大啼きは孤りの気張り寒烏 2016-02-02 | 冬 大啼きは孤りの気張り寒烏 やけに鴉の鳴き声の高い時がある なかなか泣き止まないことも多い そんな鴉は概ね単独だ 仲間を呼んでいるのか 強がっているのか
冬菫閉じて久しき長屋門 2016-02-01 | 冬 冬菫閉じて久しき長屋門 この地に住みついて凡そ40年になる 近所に大きな屋敷があって白壁の長屋門が見事な佇まいをみせている その門の開いたのを目にしたことは無い その門前に咲く冬菫 しばし立ち止まってしまった 「冬菫」スミレは春のシンボル的な草花であるが、暖かい野山の日だまりでは、春を待たずに芽を伸ばし咲いているスミレに出逢うことが出来る。小さな春の発見であるが、同時に健気さに対する感動もある。