竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

どの貌も般若阿修羅や稲びかり 丈子

2023-09-15 | 第一句集「裂帛」自選


吟行での夜の露天風呂
突然の稲びかり
居合わせただれもの顔が
般若や阿修羅のように怖く不気味の光る

コメント

画数の合わぬ虫偏秋灯下 丈子

2023-09-14 | 第一句集「裂帛」自選


虫偏の漢字ははどれも難解だ
指折り何度数えても画数が合わない
蚯蚓・蟋蟀・蟷螂 みんな手に負えない

コメント

温め酒話の棘に先手打つ 丈子

2023-09-13 | 第一句集「裂帛」自選


旧友の突然の来訪を喜び
先ずはと燗の支度をする
どうやら金の無心が目的のようだと知り
切り出されぬうちに
こちらからとりとめのない話をもちかける
大事な友人を失いたくはない

コメント

鰯雲町の名今もんゆータウン 丈子

2023-09-12 | 第一句集「裂帛」自選


バブル期に登場した大型の開発分譲地
現在は空家も多く住民は高齢者ばかり
ニュータウンの名はそのままだ

コメント

木の実独楽その一癖のただならず 丈子

2023-09-11 | 第一句集「裂帛」自選

幼少年期に興じた木の実独楽
どの独楽にも癖があって一様ではない
斜めになってなかなか止まらないのが私の独楽だ
持主に似て往生際が悪い

コメント

一呼吸おくれる返事秋扇 丈子

2023-09-10 | 第一句集「裂帛」自選


二人暮らしも長くなって
気楽とも手持無沙汰のような日常がつづく
会話にこれという事もなく
お互いに返事は一呼吸おくれがちだ

コメント

黙に言い分背高泡立ち草 丈子

2023-09-09 | 第一句集「裂帛」自選


外来種の背高泡立草の繁殖力は強い
油断していると手が付けられないほどに成長する
故郷から不本意に
連れ去られてきた彼らにも言い分はありそうだ

コメント

誉められて売れることなし大南瓜 丈子

2023-09-08 | 第一句集「裂帛」自選


農作物が異常に大きく育ったり
珍奇な形をみせたりするとニュースになる
大きな南瓜は褒められてもまず売れない


コメント

念仏の色は血の曼殊沙華 丈子

2023-09-07 | 第一句集「裂帛」自選


曼殊沙華は彼岸花とも
墓参の帰途曼殊沙華の群生を見て
ふと浮かんだ一句

コメント

もの欲しき吾にまとわる秋思かな 丈子

2023-09-06 | 第一句集「裂帛」自選


秋思はもの欲しき人を襲って離れない
孤独・悔恨・五欲
今の私に欲しいものはないはずなのだが

コメント

秋の波片方だけのハイヒール 丈子

2023-09-05 | 第一句集「裂帛」自選


人気のない秋の浜辺に
片方だけのハイヒール
たくさんの青春が生まれて消えた

コメント

いぼむしり水琴窟の遠き闇 丈子

2023-09-04 | 第一句集「裂帛」自選


秋の蟷螂はなぜかさびしそう
水琴窟のかすかな音に吾を忘れている

コメント

古手紙残らず焼べて秋収め 丈子

2023-09-03 | 第一句集「裂帛」自選


処分に逡巡のままの古い手紙を
全て燃やした
一通ずつ焼べるたびに気持ちが軽くなってくる


コメント

今年藁氏子総出で大蛇編む 丈子

2023-09-02 | 第一句集「裂帛」自選


栃木県小山市の間々田地区で行われるジャガマイタの奇祭
八幡様の境内に氏子が総出で編んだ新藁大蛇が
街中を練り歩き最後は八幡様の池中まで
コメント

生身魂思うほどには草臥れず 丈子

2023-09-01 | 第一句集「裂帛」自選


傘寿を超えれば生身魂と心得るが
思っていたほどには草臥れていない
己に戸惑っている

コメント