節くれの指に地卵牡丹鍋 丈子

山間の民宿で囲炉裏を囲んでの夕餉
牡丹鍋に地卵のもてなし
ご主人の指がなんともごつい

節くれの指に地卵牡丹鍋 丈子

山間の民宿で囲炉裏を囲んでの夕餉
牡丹鍋に地卵のもてなし
ご主人の指がなんともごつい

さもしさを隠すもさもし懐手 丈子

さもしさとは「下品・見苦しい・あさましい」など
そんな己の心情を隠す懐手
これまたさもしい

川べりのおでんの屋台「Wi-Fi」可

こんな時代　ありがたいのか微妙だ
夏井いつきさんに採られた一句

梟や長療養の長廊下 丈子

北海道での結核療養所に入院していた
トイレまでの長い廊下を
寒気に耐えながら進む
おりから不気味に梟の声

大寒の朝は大股三千歩 丈子

朝のウオーキングを欠かさない
大寒、いつもより心なし大股で歩く
ノルマの三千歩に白い息

土振りて一日春を引き寄せる 丈子

北海道での農家体験
春を待ちわびての土降りの体験

四温光猫と裸の公孫樹 丈子

冬日和の城址公園
たくさんの猫が日向でくつろいでいる
つい先刻まで黄葉の見事だった銀杏の樹はまるはだかの冬の粧い
季語は＜冬日和＞が良かったようだ

十二月象の尻尾がまたちびる 丈子

象の身体は大きいが
その尻尾は極端に小さい
12月になるうと
形見がせまそうにますますちびて見える

追伸はなべて繰り言十二月 丈子

年末にくる手紙の追伸
大凡は繰り言・言い訳の類だ

何語やら妻の早口十二月 丈子

師走も晩年になると特別の事、もなく
ぼんやりしていると
意味不明の妻の早口が飛んでくる
忙しさをおしつけてくるのだ

だれにでも心に暗渠十二月 丈子

十二月になると喪中はがきが届く
疎遠になっていた旧友だったり
心の暗渠はいよいよ深く暗い

鼻先にとまる風花逆上がり 丈子

人のいない公園で
ひとり逆上がりにトライの少女
おりからの風花が鼻先に

献体に戻らぬ遺骨霜の声 丈子

俳友の母君が逝去された
故人の遺志で献体されたという
頭の下がる思いだが

遺骨はまど戻らない
霜の降りる初七日の夜である

七回忌似た顔よせる寺火鉢 丈子

冬の法事、

寺の本堂は暖房がない

丸火鉢で暖をとる

見合す顔はどこか似ている

一族なのだ

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