汗の呼び声原色の中華街 丈子

2024年　夏
横浜中華街
夏の賑わい
客の呼び声が交錯している

矢印に百選の水雲の峰 丈子

2024年　夏
夏山のトレッキング
獣道に百選の名水を示す矢印
なんたる至福

無頼派もここは撫で肩ところてん 丈子

2024年　夏
心太を前にだれもが撫肩
元無頼派も例外ではない

蟻地獄安息角を識る英知 丈子

2024年　夏
蟻地獄の見事な傾斜角が
安息角であると知った
自然界は人知の及ばぬ天才ぞろい

黒南風や濤声たかき切通し 丈子

2024年　夏
鎌倉遊行に海を臨む切通し
おりからの黒南風に吠えるような
濤声を聴いた

炎帝を逃れ入りたる閻魔堂 丈子

3024年　夏
炎天を逃れて駆け込んだ閻魔堂だったが
炎帝は先回りしていた　ここも暑い

青田風もう三年の車椅子 丈子

2024年　夏
青田からの風が心地良い
車椅子にも不自由は感じない

ﾘﾛｹｰｼｮﾝ黙ののそのそ蟇の列 丈子

2024年　夏
少年期に蟇の長い行列を観た
その謎がいま解けた
冬眠の覚めた蟇蛙が
一斉に池へ向かう途中だった

首塚の恩讐はるか黒揚羽 丈子

2024年　夏

首塚の由来は万別だが

どれにも固有の恩讐がある

梅雨湿りエイヤで服す置き薬 丈子

2024年　夏
鬱陶しい長雨に体調が悪い
期限も効能も怪しいが
エイヤの勇気で呑み込んだ

夏草の一点として寒立馬 丈子

2024年　夏
寒立馬 （かんだちめ）は、
青森県 下北郡 東通村 尻屋崎 周辺に 放牧 されている 馬

傲慢の果ての哀切青大将 丈子

2024年　夏
長い胴体を臆面もなく晒けている
青大将が哀しく見える
傲慢尾果てには哀愁が残るのだ

荒団扇子の正論にささくれる 丈子

2024年　夏
子に窘められることもある
抗うこともないが
ささくれだつ気分

あの日から焦げたまんまの蟬の声 丈子

2024年　夏
玉音放送を聞いたあの日
あの日の蝉の声は焦土に焦げていた