彼が戻ってきて49日がたった。今でも悪い冗談じゃないかと思えるほど現実味がなかった。日本を発つとき「必ず帰ってくるよ」と言った約束は守ってくれたけれど、棺の中で永遠の眠りについて帰ってくるなんて言ってなかった。私は彼が亡くなっただなんて信じたくなかったから駄々っ子のように何度も「嘘つき!」と言って冷たくなった彼を責めた。
常願寺で法要を済むと同席していた彼の上官であったという人が私に「彼からあなたに渡してほしいと頼まれたものがあります」と言って制服の胸ポケットから彼のスマートフォンを取り出し深刻な表情で「我々の職業柄中身を確認してからでないと渡せなかったものですから、遅れてしまい申し訳ありませんでした」と言って頭を下げた。私の手に渡った彼の携帯は傷だらけだったけど、十分使える状態だったから電源を入れて起動させた。私と過ごしていた頃と何ら変わりない彼の携帯。待ち受け画面には私が「浮気しないように」と私の写メを無理やり設定したものがそのまま使われていた。思わず涙がこぼれそうになる。
データホルダーの記録を見ると一つだけ動画が残されていたから再生してみるとそこには出発前の彼が映し出された。彼は携帯をどこかにおいて自身の姿が撮れているのを確認すると「え~。何から話せばいいのかわからないけど……」と言った後、一つ咳払いをして「今から今まで行ったことのない地球の裏側にある国にゆき、これまでに出会ったことのない人たちと協力して知らない人達と戦闘しなければなりません。なぜこんなことになったかずいぶん考えました。でも答えは見つかりません。地球の裏側の人の命を奪えば憎しみが生まれるでしょう。その憎しみがこの国で暮らすあなたに火の粉となって降りかかるかもしれません。逆に僕たちの命が奪われるかもしれません。しかしすべては法で定められたことだから僕たちはこの事態を受け入れるしかないのだと思う。だから僕が君にできることは、死なないように、相手の命もなるべく奪わないように行動して無事に帰ってきたいと思います。」と言って微笑んだところで動画が静止した。私の事を一番理解していてくれた本当に優しい人だった。これから先、彼以上の人とは巡り合うことはないだろう。
そう思った時私はようやく理解した。彼はもういないのだと。すると両手の中で微笑んでいる彼にポツリポツリと涙が零れ落ちた。6月の雨のようにとめどなく静かに。
常願寺で法要を済むと同席していた彼の上官であったという人が私に「彼からあなたに渡してほしいと頼まれたものがあります」と言って制服の胸ポケットから彼のスマートフォンを取り出し深刻な表情で「我々の職業柄中身を確認してからでないと渡せなかったものですから、遅れてしまい申し訳ありませんでした」と言って頭を下げた。私の手に渡った彼の携帯は傷だらけだったけど、十分使える状態だったから電源を入れて起動させた。私と過ごしていた頃と何ら変わりない彼の携帯。待ち受け画面には私が「浮気しないように」と私の写メを無理やり設定したものがそのまま使われていた。思わず涙がこぼれそうになる。
データホルダーの記録を見ると一つだけ動画が残されていたから再生してみるとそこには出発前の彼が映し出された。彼は携帯をどこかにおいて自身の姿が撮れているのを確認すると「え~。何から話せばいいのかわからないけど……」と言った後、一つ咳払いをして「今から今まで行ったことのない地球の裏側にある国にゆき、これまでに出会ったことのない人たちと協力して知らない人達と戦闘しなければなりません。なぜこんなことになったかずいぶん考えました。でも答えは見つかりません。地球の裏側の人の命を奪えば憎しみが生まれるでしょう。その憎しみがこの国で暮らすあなたに火の粉となって降りかかるかもしれません。逆に僕たちの命が奪われるかもしれません。しかしすべては法で定められたことだから僕たちはこの事態を受け入れるしかないのだと思う。だから僕が君にできることは、死なないように、相手の命もなるべく奪わないように行動して無事に帰ってきたいと思います。」と言って微笑んだところで動画が静止した。私の事を一番理解していてくれた本当に優しい人だった。これから先、彼以上の人とは巡り合うことはないだろう。
そう思った時私はようやく理解した。彼はもういないのだと。すると両手の中で微笑んでいる彼にポツリポツリと涙が零れ落ちた。6月の雨のようにとめどなく静かに。