硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 60

2021-06-23 20:47:07 | 日記
「でね、こっそりハバネロを入れたら、ヤバすぎて、笑っちゃった」

「うそでしょ! 料理台無しじゃん! 」

「お母さん、激おこで、ご飯の間口聞いてくれなかったよぉ。」

「うける~。」

そこへ、川島健吾が登場。それに気づいた平川綾乃は、意識して、いつものように声をかけた。

「川島ぁ、おはよう~。」

昨日の今日だというのに、変わらないテンションで接してくる平川綾乃に戸惑う川島健吾は、軽く俯き、怪訝そうに「おはよう。」と答える。しかし、三人とは好対照なテンションの低さに、「しょうがないな」と思った平川綾乃は、元気づけようと、「川島ぁ~。なんか元気ないぞぉ~。」と笑顔で言った。
これではいけないのだと察した川島圭吾は、少し調子を上げて「いつもと変わらないよ。」と、イメージ回復を図ったが、姦し娘たちにはその心情が伝わらず、

「暗いぞ~川島ぁ~。」

と、総ツッこみを受けてしまった。返す言葉を失した川島健吾は、笑顔を引きつらせながら静かに自席に向かった。その姿を目で追っていた平川綾乃は、ほんの少し顔を曇らせると、それを見過ごさなかった村主詩音はすぐに言語化を図った。

「綾乃さぁ、最近、川島君とよく話してるよねぇ。」

ほんの少し動揺する平川綾乃であったが、さらりとかわす。

「うん! 英語教えてもらってるしね。それにね、喋りやすいんだよね。」

「ふ~ん。」

「なになに? 」

「川島君の事、好きなのかなぁて思ってさ。」

ニヤニヤしながら核心に迫ろうとする村主詩音。さすが学級委員長に選出されただけの人材である。