近頃主人が「僕のせいで、お前の髪に白髪が増えたなあ」としみじみ云う。
私の髪は黒くて硬い。母が私が生まれる時昆布を沢山食べたと云っていた。
母の髪は赤茶色で柔らかい。日本髪を結うのには、最も適していない髪質だったと思われる。そこで子供には黒くてふさふさとした髪をと思ったのだろう。ところが時代が変わりそのような髪は好まれなくなった。
だから私は40歳ごろからオシャレ染めとして、少し栗毛色にそめることにしていた。そして、2~3ヶ月毎に美容院に通っていた。
主人の上司が我が家を訪れたとき注意を受けた。「奥さん、髪染めているでしょう。いけませんよ。」と。この人は主人より10歳も年上で、しかも陸軍士官学校出身だった。だから、カラスの濡れ羽色を好む時代のひとだったのだろう。
でも私はそれを無視して60歳まで続けた。それからオシャレ染めから白髪染めに変えた。白髪が多くなると根元が目立つので1か月に1回通うようになり、若毛を保つよう心掛けた。だが時間が掛かりそれだけの体力と忍耐力が維持できなくなった。
そして、一大決心をして6カ月前70代半ばで毛染めをやめることにした。そのあたりのいきさつを主人はあまりよく理解していないらしい。そして、自分のせいだと勘違いしているのだ。(E)
もんきちょう 前庭にて