長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

素敵なgiftが届いた。

2012-06-23 08:36:38 | Weblog
お中元でない。昨日「gift」という、大石学さんの新しいCD。
昨年に続き、フランスで録音されたものだ。新しい時代を生きる「想い」
みたいな直筆の手紙つきだ。ひとつひとつの音を、まるで、野良仕事みたいに、
丁寧にピアノの上で耕し、種を植え付ける、彼の「音」には、そんな大地に
根ざした自然な調べがある。
一日かけていたけど、まったく疲れない、どころか元気をもらう。

夕方に著名な作家の友人が蕎麦を手繰りながら酒を楽しんだ。「大石さんの
ピアノは、キースジャレットに似ているな~」
似て非なるものだと思う、と返事した。
京都の大学時代に学校のすぐ近くに「シアンクレール」という名にしおうジャズ喫茶の
名店があり、そこではじめてきいたのがキースジャレットで、その後もよく聴いた。
でも大石さんのピアノは後にも先にも、「おおいしまなぶ」なのだ。

19時になって、看板とのれんを入れ、カウンターの電気を消し、
薄めのバーボンを飲みながら聴いてみた。目を閉じると、大石学トリオでドラムを
やっていたセシル・モンローが隣に座ったような気がしてきた。
「やっぱ、この街はブルックリンだ」と笑いながら、いっしょにバーボンを飲んだ。

昨年の夏に千葉の海で、セシルは死んだ。けど、どうしても、まだこの街にいて、
生前そうしていたように、ひょこっと天真庵ののれんをくぐり、笑って「はーい」
といいそうな気がする。

あの世にいった人には、自分もあの世にいかないと会えないものだと思っていたけど、
天真庵で会った人たち、とくに、何か美しいものを残していってくれた芸術家みたいな
人たちとは、いつでも会うことができることを知った。
だから「芸術」とはすばらしい。

大石さんのライブが7月19日に、天真庵である。残念ながら、一日で満席。「gift」という題名のジャズコンサート。
天から与えられた才能(gift)や、天が与えたもうあまたの試練(gift)、そんな一期一会の
身にふりかざすことは、みんな素敵な「gift」なのかもしれない。   天恩感謝。