長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

論語にあうお酒  書家の好きなぽん酒

2015-09-29 08:09:39 | Weblog

時々近くに住むおばあちゃんが、地下鉄なんかに置いてある「フリーペーパ」を

ポスティングしてくれる。「籠の鳥みたくいつもお店の中にいるのでかわいそうに思って」

という理由だそうだ。お礼をしようとするといつもおこられる。ある時、天真庵のポストケードを

渡したら、「私はハガキなんかださないわよ」という。久保さんの器をさしあげるとにっこり笑って

「素敵な黄瀬戸ね」ときた。黄瀬戸がわかるのがうれしい。その後間髪をいれず「そろそろ断捨離なので、

今後のお礼は無用よ」とのこと。でも創業から9年間、週に最低一度のペースで入れてくれるのだ。

昨日は「メトロmini」が入っていた。この雑誌には、「元気シールのなぞとき会」というフリーエネルギーの勉強会

の様子を紹介してもらったことがあり、たいへん気にいっているフリーペーパのひとつ。

最新号は「日本酒」の特集。10月1日は「日本酒の日」らしい。九州で産まれたので中学3年くらいから酒を飲んで

きたけど、そんな日があるとは、しらなんだ。

最近の日本酒のトレンドは、ワイングラスで飲む、らしい。その国国で、長い時間をかけて、食べ物や酒の

文化が育っていく。だれが仕掛けるのか知らないが、ボージヨレよろしく、ねこやしゃくしもワインを飲む日が

あったり、せんずり祭りのような日本酒のイベントがあったり・・・というのには、どうもなじめないタチだ。

10月の13日(火曜日)から、青山の「炎色野」(ひいろの)というギャラリーで、素敵な陶展があり、

天真庵の「ほぼぶらじる」の珈琲カップをはじめ、ほぼ9割の器を作ってくれている久保忠廣さんの

イベントがある。魯山人さまがいうように、器と料理、器と酒は、ひとと着物の関係と同様、一如、切り離せないのである。

おいしい酒を飲む、よりもおいしく酒を飲む、ほうが10倍楽し。おいしく飲むコツは、いい友達と飲むことだ。

いい友達を持つコツは、まず自分がいい友達になること。つまり、米をよく磨いた酒がうまいごとく、自分を磨く、ということだ。

昨日は「順受の会」だった。鹿児島出身の松田先生が、20年前から論語を教えてくれる。この会では、

焼酎のそば湯割が定番。昨日は奄美の黒糖焼酎を飲みながら、詩吟の話をしたり、世相を語りあったり。

今日は「書をしよう会」。貞本先生とは、大塚の「江戸一」という日本酒のお店で会い、意気投合して、天真庵の

看板を書いてもらったり、書の指南をお願いするようになった。彼は「白鷹」という伊勢神宮のお神酒のぬる燗が好きだ。

酒飲みのことを「左利き」という。大工が金鎚を右手、左手に蚤をもつ。その「のみ」と「呑み」をかけた洒落だ。

酒を注ぐ器のことを「徳利」という。お金がなくても、人に好かれたり、徳がある人が持つ器、という意味だ。

ワイングラスに注いだ酒をどこかでにわかに仕入れた臭いうんちくなどをほざきながら飲む酒は、さしずめ「うんこ酒」

みたいなものではなかろうかしらん。

井伏鱒二先生の訳で有名な「勧酒」というのがある。味わい深い酒と人生の詩。

「このさかづきをうけてくれ どうぞ なみなみつがしておくれ 花に嵐のたとへもあるぞ さよならだけが人生だ。」

昔から酒飲みのあこがれは「備前の徳利に斑唐津の猪口」というのがある、どうやら井伏さんがいいだしっぺらしい。

たんなるうすっぺらいトレンドではなく、そんなしつらいで飲ませるお店には、人生とおなじような深み風格みたいなものが

宿っているように思う。湯豆腐をゆっくり楽しみながら、その傍らに「ひとはだ」の燗酒を楽しむように、ゆるりと人生ともども

歩いていきたいものだ、と最近よく思うのである。年をとったかもなんばん。感謝。