とつぜんに体が軽くなるのを感じた。
なにかが抜けていった感覚に襲われた。
足の踏ん張りがきかなくなり、危うくくずれおちそうになった。
それでも中腰状態で両足に力をいれて、なんとか体勢を立て直した。
とその時、頭上からの声を聞いた。
「シンイチクン、アリガトウ」
そしてその声にかぶさるように
「新一さん、きょうはありがとうございました」という声が……。
車から降りた真理子が満面に笑顔を称えて、手を振っている。
ーーーーーーー
彼からの新一への、懐かしみあふれる手紙が死後にとどいた。
新一にとっても忘れられない夏休みの冒険談が、嬉々としてつづられていた。
読みながら、頬をつたう涙と自然にほころぶ笑みとが混じり合った。
最後に書かれてあった「休ませてもらうことにした」ということばが、新一のこころに突き刺さった。
(ぼくのせいじゃない)。心の中でなんども繰り返した。
新一にとって、ただひとりの友であった彼の死は、簡単に受け入れられるものではなかった。
友を失ったー死なせてしまったという後悔の念が、重くのしかかっている。
(あの日、あのときに追いかければ良かった。
「ぼく、帰る」と捨てゼリフを残して歩きだした君を追いかければ良かった。
そうすれば、きみはいまでもぼくのとなりにいてくれたはずなのに)。
ごめんね、ごめんね……。 (了)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます