プリーの海岸(西側)
30年近く前の、私のインド放浪、当時つけていた日記をもとにお送りしております。
一日だけのホームステイの後、オーズビーの友人、バブーの伯父の経営するホテルへ。
夜にはオーズビーとバブーの中学校時代の教師を交え宴をしようということに
その前にオーズビーと中華料理を食べ、その後ちょっと一人で通りを歩いてみた、というところまででした。
では続きをどうぞ
****************************
夕方の5時にオーズビーとバブーが迎えに来てくれることになっていた。10分前、おれはバルコニーに出て、ホテルの前の通りを見下ろし、オーズビーたちがやってくるの待っていた。
5時を回ったころ、東の方からオーズビーがベスパもどきに乗ってやって来るのが見えた。後ろにはバブーが乗っているようだ。オーズビーがおれに気づき手を振る、おれも手を振り、階下へ降りる。
入口のところで、バブーがスクーターを降り、オーズビーの後ろに乗るよう手招きしている。おれがそこに乗ったらバブーはどうするのだろう…、まあ、言われるままにスクーターに乗る、するとさらにバブーがおれの腰を押しながら後ろに乗る、3人乗りだ…、しかも全員ノーヘル、本当にインドは何でもありだ。
3人も乗って、ずいぶんと窮屈なスクーターは東へ向かい、途中、海へ向かう道を右に折れる、そして最初の日にオーズビーと、卵焼きを食い、甕で作った水割りを飲んだ掘立小屋の「レストラン」の敷地に入る。看板も何も出ておらず、その外観からもここがレストランだとは地元の人間以外だれもわからないだろう。
イメージ
店の入り口のところに、大柄で少し頭髪の薄い、中年インド人男が立っていた。
『彼がボクたちの先生だ』
先生は満面の笑みを浮かべ近づいてくる。
『Hello!Hello!Hello! Welcome!Welcome! ジャパニー!!』
おれは先生と握手を交わし、「店」の中へいざなわれる。一つしかない少し大きめのテーブルに、おれたちはL字型に座った。縦の線にオーズビーとバブー、横の線におれと先生、すぐにビールと簡単な料理が出され宴は始まった。
先生は、興味深そうにおれに質問を投げかける、バブーも聞いてくる、大体は他愛の無い話であるが、外国人同士だと、つまらない話でも盛り上がるものだ。
『コヘイジ、キミは日本のどこから来たんだ?』
どこから? 先生の質問に少し考える、Tokyo、Osaka、Kyoto、辺りは言えばわかるだろうが、おれは神奈川の片田舎、地名を言ってもきっとわかるまい、一応、隣市でもっとも都会である街を言ってみる。
『Yokohama』
『Yokohama!Oh、ポルトcity!』
ポルトシティー…、ポルトシティー…、 あっ! Port City か! またRをそのまま発音してるんだ。へえ、横浜は知られてるんだ。
この時、バブーがオーズビーのことを『ロメオ』と呼んでいることに気づく。おれがオーズビーと言っても分からないようだ。本名ではないのだろう。『ロメオ』とは、オーズビーのスクーターの名前だそうだ。おれもオーズビーは呼びづらいので、ロメオと呼ぶことにした。このさい本名は今はいい。
バブーと言う男は、最初の生真面目そうな印象とは違い、とにかく明るく陽気な男だった、その陽気さにつられ、男4人、一人は教師であったが、自然と会話は、女のこと、そして下ネタへと変わっていく。
ロメオが言う。
『コヘイジ、カルカッタからの列車で、ボクは女の子を連れていたろう? あのコはボクの彼女なんだ、それであの夜、ボクたちはキミの知らないうちに3回もSEXをしたんだ』
『ええーーーーーーーー!』
とおれは驚いて見せた。驚いたのは3回もイタシた…、ってことではない、ウソに決まっているからだ。あのラッシュ時の満員電車のような状況でできるはずもなく、夜が明け、空いてからもおれはしょっちゅう目を覚ましていたんだから…、 おれが驚いたのは、あの可憐で華奢な美少女、ロメオの娘だと思っていたくらいの子供だった、あんな子供が彼女! という驚きだった。
『なあ、コヘイジ…、日本語で…、男のココのことはなんて言うんだ…?』
腕を枕に、少し傾きながらだいぶ酔いが回って来てるように見えるバブーが、自分の股間を指さして言った。
おれは少し考えてから答えた。
『ダメだよ、バブー、それを教えるとキミはきっと日本人をこの街で見かけたら、その言葉を叫んでからかうに決まっている』
バブーはまるで子どものように、本当に泣きそうな顔をして哀願するように続けた。
『コヘイジ~、ボクはそれを言わないよ、必ず約束するよ、お願いだから教えてくれよ~、インドでは男のココはBandoだ、日本語も教えてくれよ~』
『バンドゥ?』
『そう、バンドゥ!』
他の2人も笑ってうなづく、 うーーーーん… 仕方ない…、教えてやるか、でも日本語で男のアレは色んな呼び名があるからな…。 おれはいくつかあるその呼び名から、万一バブーが日本人観光客相手にそれを叫んでも、あまり下品にならないような呼び名を選んだ。
『日本語で、男のココは…。』
『キン〇マ! だ!』
『OH!KINTAMA--!』
『OH!KINTAMA--!』
『OH!KINTAMA--!』
辺りもすっかり暗くなった夜、インドの片田舎の小さな掘立小屋で、中学校教師まで含んだインド人男たちの『KINTAMA』の大合唱が始まってしまった…。
バブーがトロンとした目で言った。
『コヘイジ、明日、ボクがロメオのKINTAMAを料理してあげるから、食べに来ないか』
つまらないジョークだが、おれは考えるふりをして、真剣な顔で答えた。
『Sorry, tomorrow 、I'm very busy.、Can you cook his KINTAMA the day after tomorrow』
これには一同大ウケであった。おれもさらっと出たアメリカンジョーク的な言葉に自画自賛であった。
その後、バブーは、胸のあたりで、ボインの仕草をして、女性のここは何て言うんだ、と聞いてくる。おれは当たり障りなく、「オッ〇イ」ではなく、「ムネ」だ、と教えてやった。
夜も更け、楽しい宴はお開きとなった。飲食代は先生のおごりだった。
『インドを、プリーを楽しんで』
先生はそう言って笑顔で去って行った。ロメオがホテルまで送ってくれる、と言ったが、夜風に当たりながら歩いて帰る、と、おれは二人に別れを告げ歩き出した。
通りの両側の商店は、それぞれ薄暗い灯りをともしまだ店を開けていた。
おれは、ホテルの近くまで来ると、そのままホテルには戻らず、海の方へ向かい左におれた。街灯のない真っ暗な道、ゆっくりと歩く。ふと、左側の雑木林に目をやる。無数の青白い小さな光が飛び回っている。
『ホタルだ…』
インドにもホタルがいるのか…。実はおれがホタルを見たのはこれが初めてだった。おれはしばらくその幻想的な夜の闇の光を眺めてから、向きを変え、ホテルへと戻った。
******************つづく
このときの宴は本当に楽しかったですね。前にも言いましたが、私はこの6年後、バブーとこの街で再会しております。その時、私と会ってバブーが真っ先に言った言葉が『キン〇マー!、ムネ、ムネー! Day after tomorrowー!』でした(笑)。
※引用元を示し載せている画像は、撮影された方の了承を頂いた上で掲載しております。それ以外はフリー画像で、あくまでも自分の記憶に近いイメージであり、場所も撮影時期も無関係です
30年近く前の、私のインド放浪、当時つけていた日記をもとにお送りしております。
一日だけのホームステイの後、オーズビーの友人、バブーの伯父の経営するホテルへ。
夜にはオーズビーとバブーの中学校時代の教師を交え宴をしようということに
その前にオーズビーと中華料理を食べ、その後ちょっと一人で通りを歩いてみた、というところまででした。
では続きをどうぞ
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夕方の5時にオーズビーとバブーが迎えに来てくれることになっていた。10分前、おれはバルコニーに出て、ホテルの前の通りを見下ろし、オーズビーたちがやってくるの待っていた。
5時を回ったころ、東の方からオーズビーがベスパもどきに乗ってやって来るのが見えた。後ろにはバブーが乗っているようだ。オーズビーがおれに気づき手を振る、おれも手を振り、階下へ降りる。
入口のところで、バブーがスクーターを降り、オーズビーの後ろに乗るよう手招きしている。おれがそこに乗ったらバブーはどうするのだろう…、まあ、言われるままにスクーターに乗る、するとさらにバブーがおれの腰を押しながら後ろに乗る、3人乗りだ…、しかも全員ノーヘル、本当にインドは何でもありだ。
3人も乗って、ずいぶんと窮屈なスクーターは東へ向かい、途中、海へ向かう道を右に折れる、そして最初の日にオーズビーと、卵焼きを食い、甕で作った水割りを飲んだ掘立小屋の「レストラン」の敷地に入る。看板も何も出ておらず、その外観からもここがレストランだとは地元の人間以外だれもわからないだろう。
イメージ
店の入り口のところに、大柄で少し頭髪の薄い、中年インド人男が立っていた。
『彼がボクたちの先生だ』
先生は満面の笑みを浮かべ近づいてくる。
『Hello!Hello!Hello! Welcome!Welcome! ジャパニー!!』
おれは先生と握手を交わし、「店」の中へいざなわれる。一つしかない少し大きめのテーブルに、おれたちはL字型に座った。縦の線にオーズビーとバブー、横の線におれと先生、すぐにビールと簡単な料理が出され宴は始まった。
先生は、興味深そうにおれに質問を投げかける、バブーも聞いてくる、大体は他愛の無い話であるが、外国人同士だと、つまらない話でも盛り上がるものだ。
『コヘイジ、キミは日本のどこから来たんだ?』
どこから? 先生の質問に少し考える、Tokyo、Osaka、Kyoto、辺りは言えばわかるだろうが、おれは神奈川の片田舎、地名を言ってもきっとわかるまい、一応、隣市でもっとも都会である街を言ってみる。
『Yokohama』
『Yokohama!Oh、ポルトcity!』
ポルトシティー…、ポルトシティー…、 あっ! Port City か! またRをそのまま発音してるんだ。へえ、横浜は知られてるんだ。
この時、バブーがオーズビーのことを『ロメオ』と呼んでいることに気づく。おれがオーズビーと言っても分からないようだ。本名ではないのだろう。『ロメオ』とは、オーズビーのスクーターの名前だそうだ。おれもオーズビーは呼びづらいので、ロメオと呼ぶことにした。このさい本名は今はいい。
バブーと言う男は、最初の生真面目そうな印象とは違い、とにかく明るく陽気な男だった、その陽気さにつられ、男4人、一人は教師であったが、自然と会話は、女のこと、そして下ネタへと変わっていく。
ロメオが言う。
『コヘイジ、カルカッタからの列車で、ボクは女の子を連れていたろう? あのコはボクの彼女なんだ、それであの夜、ボクたちはキミの知らないうちに3回もSEXをしたんだ』
『ええーーーーーーーー!』
とおれは驚いて見せた。驚いたのは3回もイタシた…、ってことではない、ウソに決まっているからだ。あのラッシュ時の満員電車のような状況でできるはずもなく、夜が明け、空いてからもおれはしょっちゅう目を覚ましていたんだから…、 おれが驚いたのは、あの可憐で華奢な美少女、ロメオの娘だと思っていたくらいの子供だった、あんな子供が彼女! という驚きだった。
『なあ、コヘイジ…、日本語で…、男のココのことはなんて言うんだ…?』
腕を枕に、少し傾きながらだいぶ酔いが回って来てるように見えるバブーが、自分の股間を指さして言った。
おれは少し考えてから答えた。
『ダメだよ、バブー、それを教えるとキミはきっと日本人をこの街で見かけたら、その言葉を叫んでからかうに決まっている』
バブーはまるで子どものように、本当に泣きそうな顔をして哀願するように続けた。
『コヘイジ~、ボクはそれを言わないよ、必ず約束するよ、お願いだから教えてくれよ~、インドでは男のココはBandoだ、日本語も教えてくれよ~』
『バンドゥ?』
『そう、バンドゥ!』
他の2人も笑ってうなづく、 うーーーーん… 仕方ない…、教えてやるか、でも日本語で男のアレは色んな呼び名があるからな…。 おれはいくつかあるその呼び名から、万一バブーが日本人観光客相手にそれを叫んでも、あまり下品にならないような呼び名を選んだ。
『日本語で、男のココは…。』
『キン〇マ! だ!』
『OH!KINTAMA--!』
『OH!KINTAMA--!』
『OH!KINTAMA--!』
辺りもすっかり暗くなった夜、インドの片田舎の小さな掘立小屋で、中学校教師まで含んだインド人男たちの『KINTAMA』の大合唱が始まってしまった…。
バブーがトロンとした目で言った。
『コヘイジ、明日、ボクがロメオのKINTAMAを料理してあげるから、食べに来ないか』
つまらないジョークだが、おれは考えるふりをして、真剣な顔で答えた。
『Sorry, tomorrow 、I'm very busy.、Can you cook his KINTAMA the day after tomorrow』
これには一同大ウケであった。おれもさらっと出たアメリカンジョーク的な言葉に自画自賛であった。
その後、バブーは、胸のあたりで、ボインの仕草をして、女性のここは何て言うんだ、と聞いてくる。おれは当たり障りなく、「オッ〇イ」ではなく、「ムネ」だ、と教えてやった。
夜も更け、楽しい宴はお開きとなった。飲食代は先生のおごりだった。
『インドを、プリーを楽しんで』
先生はそう言って笑顔で去って行った。ロメオがホテルまで送ってくれる、と言ったが、夜風に当たりながら歩いて帰る、と、おれは二人に別れを告げ歩き出した。
通りの両側の商店は、それぞれ薄暗い灯りをともしまだ店を開けていた。
おれは、ホテルの近くまで来ると、そのままホテルには戻らず、海の方へ向かい左におれた。街灯のない真っ暗な道、ゆっくりと歩く。ふと、左側の雑木林に目をやる。無数の青白い小さな光が飛び回っている。
『ホタルだ…』
インドにもホタルがいるのか…。実はおれがホタルを見たのはこれが初めてだった。おれはしばらくその幻想的な夜の闇の光を眺めてから、向きを変え、ホテルへと戻った。
******************つづく
このときの宴は本当に楽しかったですね。前にも言いましたが、私はこの6年後、バブーとこの街で再会しております。その時、私と会ってバブーが真っ先に言った言葉が『キン〇マー!、ムネ、ムネー! Day after tomorrowー!』でした(笑)。
※引用元を示し載せている画像は、撮影された方の了承を頂いた上で掲載しております。それ以外はフリー画像で、あくまでも自分の記憶に近いイメージであり、場所も撮影時期も無関係です
コメントありがとうございます。
なるほど!Lとの区別を強調するためだったんですね!
慣れるまでは時折何を言ってるかわからないことがありましたが、かと言ってネイティブの流暢な英語は逆に聞き取れない、そんな程度の英語力でした f ^ ^;)
今はもう仕事は通訳付けますし、ポケトークなんかもありますので、もはやそこまで英語を学ぶ気にはなりません(笑)
ありがとうございました
宴会楽しそうでしたね 俺はまさか 先生まで
小平次さんに食事代をねだるのかと思っていましたが
そうならなくて 救われたきもちですwwww
や~っぱ 驚いたのは 電車の中に居た少女が
彼女だって事。 そりゃ 嘘でしょう もし本当なら
大変な事です。下ネタが好きな人達だから からかった
んでしょうかね・・・しかし インドですから
何が常識かわかりません 又、そこが この小説を
面白くしている所なんですがねwwww
また 次回も期待してますよ。
コメントありがとうございます
さすがに先生はそれはなかったですね!
ロメオの彼女、という少女には、その後二度と会うことはなかったんですが、年齢を聞いたわけではないので、ひょっとしたら子供のように見えて大人だったのかもしれません、安達 祐実みたいに…(笑)
次回か、その次か、ロメオのタカリみたいな姿勢とは一線を画すバブーの振る舞いをご紹介します
またお越しくだされば幸いです
ありがとうございました