(2024年2月撮影・バンコク)
こんにちは
小野派一刀流免許皆伝小平次です
以前連載した『インド放浪・本能の空腹』、あの時のインド訪問から6年後、私は再びインドを訪れました。
会社勤めをしておりましたので、2週間ほどの短い期間でしたが、まあまあ、色々な出来事がありましたので、その時の様子をまた日記風につづって行きたいと思います
************************************************
どうしても一緒に連れて行ってくれ、と前橋に懇願され、想定外の事となったが、出発の日、おれと前橋は成田空港で待ち合わせをし、無事にタイエアー、バンコク行きのチェックインを済ませた。
機内はとても快適だった。おれはこの後何度かタイエアーを利用しているが、好きな航空会社の一つだ。バンコクは世界のハブ空港としても名高く、世界中に飛んでいる。そして機内食も美味い。
機内食が配られ、美味いタイ料理に舌鼓を打っていると、突然大きく高度が下がった。いや、下がったと言うよりは『落下した』と言った方が良いような落ち方だった。おれたちの目の前の機内食の器が一瞬宙に浮いたくらいで、おれたちも思わず声を出してしまったし、機内も少しの間騒然となった。
まあ、この程度の出来事はわざわざ公開の日記に記すようなことでもないのだが、後にインドに到着後の、前橋が時折見せた奇怪な行動を説明するためには、どうしても記しておかなくてはならないのだ。
そんなことがありながらも、飛行機は無事にバンコクに到着した。真冬の日本を出て来たおれたちは、30度を超える機外の温度に南国にやって来たことを十分に実感した。
手荷物検査や入国手続きを終え、ロビーに出た。たくさん並んでいる観光案内の店のカウンターに行き、こちらでは比較的高めの一泊4,000円のホテルの予約をとった。前回来た時のように、無理してバックパッカーを気取り安宿に泊まる必要は無いし、おれはとにかくユースホステルのような大勢が同じ部屋で寝たりとか、共同シャワーだとかが嫌いだった。前回も、安宿でどれだけ部屋が狭くとも、個室でシャワー付きだけは譲らなかった。
タクシーで市街に向かう、高速を走っているとバンコクが大都会であることを改めて実感する、あちこちに見える有名日本企業の看板、時折ビルの谷間に除く金ぴかの寺院の屋根などが無ければ、日本の大都市の光景と言ってもうっかり信じてしまうだろう。
ほどなくしてホテルに到着、車寄せにタクシーが停まると、すぐにポーターの男が出て来て、笑顔でおれたちに歓迎の言葉を言う。それからトランクの荷物を台車のようなものに積み、フロントまで案内してくれた。日本で同じ金額でこんなホテルには決して泊まることはできないだろう、おれたちには随分と高級なホテルに思えた。
8階の部屋の窓から下を見下ろすと、ホテルの敷地にはプールまであった。テレビをつけると、複数のチャンネルがあり、NHKまで放送していた。
『タイ語でこんにちは、ってなんて言うのかな?』
前橋が尋ねて来た。一泊二日のトランジットだからおれもあまり気にしていなかった。
『後でメシ食いに行くとき、フロントで教えてもらおう』
しばし休息し、夕方になってからおれたちは、フロントで『サワッディー』という言葉を教えてもらい外に出た。街を散策しながら、路地などで椅子に腰かけ休んでいる人や、反対側から歩いてくる人に『サワッディー』と声を掛けてみると、みんなが同じように笑顔で『サワッディー』と返してくれた。
『なんか、バンコクっていいな、人が温かく感じる、やっぱ気候が温暖だからかな』
おれたちはそんなことを話しながら大通りに出た。おれが『タイ料理らしい辛い料理を食って、汗をかきながらビールが飲みたい』というと『いいね!』前橋は二つ返事で答えた。
それっぽい屋台を見つけ、ベンチに腰掛け、店頭に並ぶ幾つかの料理と、今作っているチャーハンのような料理を注文、もちろんビールも。
料理はその見た目通りとても辛かった、そして美味かった、そこへビールを喉へと流し込む
『ううめえええーーー!』
おれたちは汗を流しながら料理を貪るように食い、そしてビールを飲んだ。
『今まで旅をした街で、バンコクが一番いいかも』
おれは本当にそう思った。いつか改めて、トランジットではなくバンコクを目的地として来てみたい、そんなことを思いながら、しばらく街を散策してホテルへ帰った。
ホテルに帰ると、おれは前橋が一緒にインドに行くことになってから、ずっと考えていたことを前橋に告げた。
『前橋さぁ、おれずっと思ってることがあるんだよ』
『何を?』
『前にも話したけど、カルカッタって、そりゃあすげえ街なんだよ、今見て来たバンコクの街並みなんて、カルカッタ行った自分からすれば、日本とそう変わらない、いや、街行く人たちののんびりした感じと温かさは、むしろ日本より居心地良さそうなくらいでさ』
『そうだなあ、確かに』
『でさ、カルカッタの市街地に入った時の衝撃、ってほんと凄くて、まさにタマげるって言うか、度肝抜かれるっていうか、よく言うカルチャーショックなんて言葉も、ほんと生易しいと思っちゃうくらいでさ』
『そうなんだ。。』
やっぱりこいつは他人事のように聞いている、おれと一緒に行くから大丈夫、くらいに思っているのだろう。
『でさ、あの最初の衝撃は、絶対一人で味わった方がいいと思うんだよね』
『ああ、なるほど。。。、ん? えっ!? えええええええええええ!!! い、いや、それは。。えっ!? どういうこと?』
『お前もそこそこ海外行ってるじゃん?ヨーロッパやアメリカ、あと韓国だっけ?もちろんロンドン辺りにも物乞いはいたけどさ、実際、そんなレベルじゃないから。。、腕や足の無い人、指が溶けちゃってる人、顔とかが変形しちゃってる人、なんなら四本足の人とか、そういう人たちからゆっくり手を出されて、うつろな目で「マネー」って手を出されるって、最初はすごくショック受けるから』
『…………。』
『それをさ、おれと一緒にカルカッタの市街に入ったら、多分衝撃も半減しちゃうと思うんだよ、せっかくインドに来たのに、あの衝撃が半減しちゃうって、もったいないじゃん』
『い、いや、でも。。』
『もうこれは決まりな、ちょっと地球の歩き方出せよ』
前橋は観念したように地球の歩き方を出した。おれはカルカッタのページを開き前橋に説明を始めた。
『まず、空港に着いたら先にお前がタクシーに乗って、ここにあるサダルストリートまで行く、サダルストリートは広くも長くもない通りだけど、安宿が密集していて世界中からバックパッカーのような旅行者がこの通りに集まってきている、で、物乞いやポン引きもそれを狙ってこのサダルストリートに集結している、お前が出た後、2、30分してからおれもサダルストリートに向かう、で、ここ、ここにインド博物館があるだろ?サダルストリートを大通りに向かって左に折れるとこのインド博物館の入口があるから、そこでおれを待っていてくれ』
『いや、やっぱり、おれ、できるかな……。』
『できるできる、できなかったら、この街を一人で歩けなかったら、インドに行ったとか言えないから』
『うーーん……。』
『もし、ポン引きや物乞いを交わし切れない、インド博物館の前に立っているのも無理、って思ったら、博物館の真ん前に地下鉄の入口があるから、何でかは知らないけど、地下鉄の構内には物乞いもポン引きもいないから、そこに下りて待っててよ』
『うーーん……。』
『大丈夫、大丈夫、サダルストリートを数百メートルだけでも歩けたら、十分に衝撃を受けられるから、そこまで体験して無理だと思ったら地下鉄な!』
『うーーん……。わ、わかったよ…。』
おれは、出発前から考えていたこの『計画』を前橋に話し、それを明日実行できることを想像し、ワクワクが止まらなくなってきた。がんばれ! 前橋!!
*************************************
カルカッタに着いてから、計画通り前橋を先に行かせましたが、まあ、面白かったですよww
こんにちは
小野派一刀流免許皆伝小平次です
以前連載した『インド放浪・本能の空腹』、あの時のインド訪問から6年後、私は再びインドを訪れました。
会社勤めをしておりましたので、2週間ほどの短い期間でしたが、まあまあ、色々な出来事がありましたので、その時の様子をまた日記風につづって行きたいと思います
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どうしても一緒に連れて行ってくれ、と前橋に懇願され、想定外の事となったが、出発の日、おれと前橋は成田空港で待ち合わせをし、無事にタイエアー、バンコク行きのチェックインを済ませた。
機内はとても快適だった。おれはこの後何度かタイエアーを利用しているが、好きな航空会社の一つだ。バンコクは世界のハブ空港としても名高く、世界中に飛んでいる。そして機内食も美味い。
機内食が配られ、美味いタイ料理に舌鼓を打っていると、突然大きく高度が下がった。いや、下がったと言うよりは『落下した』と言った方が良いような落ち方だった。おれたちの目の前の機内食の器が一瞬宙に浮いたくらいで、おれたちも思わず声を出してしまったし、機内も少しの間騒然となった。
まあ、この程度の出来事はわざわざ公開の日記に記すようなことでもないのだが、後にインドに到着後の、前橋が時折見せた奇怪な行動を説明するためには、どうしても記しておかなくてはならないのだ。
そんなことがありながらも、飛行機は無事にバンコクに到着した。真冬の日本を出て来たおれたちは、30度を超える機外の温度に南国にやって来たことを十分に実感した。
手荷物検査や入国手続きを終え、ロビーに出た。たくさん並んでいる観光案内の店のカウンターに行き、こちらでは比較的高めの一泊4,000円のホテルの予約をとった。前回来た時のように、無理してバックパッカーを気取り安宿に泊まる必要は無いし、おれはとにかくユースホステルのような大勢が同じ部屋で寝たりとか、共同シャワーだとかが嫌いだった。前回も、安宿でどれだけ部屋が狭くとも、個室でシャワー付きだけは譲らなかった。
タクシーで市街に向かう、高速を走っているとバンコクが大都会であることを改めて実感する、あちこちに見える有名日本企業の看板、時折ビルの谷間に除く金ぴかの寺院の屋根などが無ければ、日本の大都市の光景と言ってもうっかり信じてしまうだろう。
ほどなくしてホテルに到着、車寄せにタクシーが停まると、すぐにポーターの男が出て来て、笑顔でおれたちに歓迎の言葉を言う。それからトランクの荷物を台車のようなものに積み、フロントまで案内してくれた。日本で同じ金額でこんなホテルには決して泊まることはできないだろう、おれたちには随分と高級なホテルに思えた。
8階の部屋の窓から下を見下ろすと、ホテルの敷地にはプールまであった。テレビをつけると、複数のチャンネルがあり、NHKまで放送していた。
『タイ語でこんにちは、ってなんて言うのかな?』
前橋が尋ねて来た。一泊二日のトランジットだからおれもあまり気にしていなかった。
『後でメシ食いに行くとき、フロントで教えてもらおう』
しばし休息し、夕方になってからおれたちは、フロントで『サワッディー』という言葉を教えてもらい外に出た。街を散策しながら、路地などで椅子に腰かけ休んでいる人や、反対側から歩いてくる人に『サワッディー』と声を掛けてみると、みんなが同じように笑顔で『サワッディー』と返してくれた。
『なんか、バンコクっていいな、人が温かく感じる、やっぱ気候が温暖だからかな』
おれたちはそんなことを話しながら大通りに出た。おれが『タイ料理らしい辛い料理を食って、汗をかきながらビールが飲みたい』というと『いいね!』前橋は二つ返事で答えた。
それっぽい屋台を見つけ、ベンチに腰掛け、店頭に並ぶ幾つかの料理と、今作っているチャーハンのような料理を注文、もちろんビールも。
料理はその見た目通りとても辛かった、そして美味かった、そこへビールを喉へと流し込む
『ううめえええーーー!』
おれたちは汗を流しながら料理を貪るように食い、そしてビールを飲んだ。
『今まで旅をした街で、バンコクが一番いいかも』
おれは本当にそう思った。いつか改めて、トランジットではなくバンコクを目的地として来てみたい、そんなことを思いながら、しばらく街を散策してホテルへ帰った。
ホテルに帰ると、おれは前橋が一緒にインドに行くことになってから、ずっと考えていたことを前橋に告げた。
『前橋さぁ、おれずっと思ってることがあるんだよ』
『何を?』
『前にも話したけど、カルカッタって、そりゃあすげえ街なんだよ、今見て来たバンコクの街並みなんて、カルカッタ行った自分からすれば、日本とそう変わらない、いや、街行く人たちののんびりした感じと温かさは、むしろ日本より居心地良さそうなくらいでさ』
『そうだなあ、確かに』
『でさ、カルカッタの市街地に入った時の衝撃、ってほんと凄くて、まさにタマげるって言うか、度肝抜かれるっていうか、よく言うカルチャーショックなんて言葉も、ほんと生易しいと思っちゃうくらいでさ』
『そうなんだ。。』
やっぱりこいつは他人事のように聞いている、おれと一緒に行くから大丈夫、くらいに思っているのだろう。
『でさ、あの最初の衝撃は、絶対一人で味わった方がいいと思うんだよね』
『ああ、なるほど。。。、ん? えっ!? えええええええええええ!!! い、いや、それは。。えっ!? どういうこと?』
『お前もそこそこ海外行ってるじゃん?ヨーロッパやアメリカ、あと韓国だっけ?もちろんロンドン辺りにも物乞いはいたけどさ、実際、そんなレベルじゃないから。。、腕や足の無い人、指が溶けちゃってる人、顔とかが変形しちゃってる人、なんなら四本足の人とか、そういう人たちからゆっくり手を出されて、うつろな目で「マネー」って手を出されるって、最初はすごくショック受けるから』
『…………。』
『それをさ、おれと一緒にカルカッタの市街に入ったら、多分衝撃も半減しちゃうと思うんだよ、せっかくインドに来たのに、あの衝撃が半減しちゃうって、もったいないじゃん』
『い、いや、でも。。』
『もうこれは決まりな、ちょっと地球の歩き方出せよ』
前橋は観念したように地球の歩き方を出した。おれはカルカッタのページを開き前橋に説明を始めた。
『まず、空港に着いたら先にお前がタクシーに乗って、ここにあるサダルストリートまで行く、サダルストリートは広くも長くもない通りだけど、安宿が密集していて世界中からバックパッカーのような旅行者がこの通りに集まってきている、で、物乞いやポン引きもそれを狙ってこのサダルストリートに集結している、お前が出た後、2、30分してからおれもサダルストリートに向かう、で、ここ、ここにインド博物館があるだろ?サダルストリートを大通りに向かって左に折れるとこのインド博物館の入口があるから、そこでおれを待っていてくれ』
『いや、やっぱり、おれ、できるかな……。』
『できるできる、できなかったら、この街を一人で歩けなかったら、インドに行ったとか言えないから』
『うーーん……。』
『もし、ポン引きや物乞いを交わし切れない、インド博物館の前に立っているのも無理、って思ったら、博物館の真ん前に地下鉄の入口があるから、何でかは知らないけど、地下鉄の構内には物乞いもポン引きもいないから、そこに下りて待っててよ』
『うーーん……。』
『大丈夫、大丈夫、サダルストリートを数百メートルだけでも歩けたら、十分に衝撃を受けられるから、そこまで体験して無理だと思ったら地下鉄な!』
『うーーん……。わ、わかったよ…。』
おれは、出発前から考えていたこの『計画』を前橋に話し、それを明日実行できることを想像し、ワクワクが止まらなくなってきた。がんばれ! 前橋!!
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カルカッタに着いてから、計画通り前橋を先に行かせましたが、まあ、面白かったですよww
ワクワクしますなぁ・・・
前編の印度旅行を知っとるだけに
トンデモナイ事になりそうだ・・・
小平次サンも 人が悪いなぁwwwww
次回が楽しみっス・・・・
流石にインドは無理かもしれないけど、、
次を楽しみにしてます~~(^^♪
>>小平次サンも 人が悪いなぁwwwww
いやいや、自分でもそう思いますww
正直イジワルな気持ち半分、やっぱり徐々にタクシーが市街に入っていったときに目の当たりにする凄まじい街のパワー、降りてからの対応、そういう衝撃をぜひ一人で味わってほしい、という気持ち半分、次回になりますが、前橋が空港を一人で出て行くのを笑いながら見てたんですが、あの光景は今でも忘れられませんw
コメントありがとうございます。
私は2度目でしたし、カルカッタには長期滞在しましたので余裕がありましたが、行く前から前橋君にはさんざん凄い体験談を聞かせていましたので、インドへは行ってみたいけど一人では怖い、と言っていたのを一時的とはいえ放り出そうとしてるんですからねw
あの衝撃を怖がっている親友が一人で体験する、最初に私が来たときも同じでしたので、それを思うと笑ってしまうのと同時にワクワクが止まりませんでしたww