FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

睡眠中の夢が映像で見られる  

2009-02-06 01:45:41 | 文学・絵画・芸術
夢の中には悪魔も神もいた

「夢が、睡眠中に再現され、映像に映し出される」― 。
最近のニュースです。

夢は、昔から不思議なものでした。夢の中でインスピレーションを受けたり、宗教上の啓示を授かったり、そこでは物語が展開し、絵画が現れ、現世では聴けないような音楽が流れたり。その世界には悪魔がいて、神がいたり、地獄や天国が混在し、そこから偉大な宗教や芸術が生まれました。

シュルレアリスムの文学者は、夢を見ながら同時にその夢を文章に書き写していくということをしました。映画を観ながら、同時進行でその物語や光景を紙に書き写していくのと同じです。それがそのまま、詩や小説、文学となりました。

宗教家も同じように託宣を受けます。恍惚となって神のお告げを聞く姿は、夢をそのまま言葉に写しているのと同じ作業です。ひとつ違えば、それは霊媒師や潮来(いたこ)になります。

夢占いというものは、何千年も前からあったようですが、精神医学として解明しようとしたのがフロイトでした。フロイトの『夢判断』などは、読み物としてもかなり面白いものです。これに関連付けて『精神分析入門』も、夢中になって読んだりしました。精神分析は、精神医学はもちろん文学や芸術、思想に与えた影響は計り知れません。

夢の映像を保存しておく

・・・と、かなり前段が長くなりました。この夢の中身を、科学的に画像(静止画)や映像(動画)に映して、それを保存しておくことが将来できるようになるというのです。デジカメやビデオで撮ってパソコンに画像や動画を保存しておくように、近い将来(どれだけ近いのか)、自分のブログに「昨日はこんな夢を見ました」なんて公開できるかもしれません。

こういうことが100年前にできていたら、フロイトやユングなど、精神分析学者は泣いて歓喜したでしょう。ケネディやアインシュタイン、ドストエフスキーやモーツァルト、ダ・ヴィンチなど、天才の夢を上映する映画館には大行列ができるでしょう。でも、ちょっと不安でもあります。夢は、かなり個人情報的で、人間の心の奥底に眠る醜い部分、汚いもの、性的な部分まで吐き出してしまいます。それによって、精神医療などの分野では高い効果も望まれますが、もし犯罪などに使われたら・・・。

人間の心の奥底に眠る意識(無意識とか深層意識、仏教では阿頼耶識とか言われる)は、氷山に喩えられるように、海面に出ている表層部分はごく一部で、99パーセントは海面下に沈んでいます。海面下の意識をどのように使うかで、人間の意識は飛躍的に上昇すると言われています。しかし、この「夢」の奪い合い、特に偉大な科学者や芸術家、影響力のある政治家・指導者などの「夢」の情報が当の本人の生存中に奪い合いになると、世界は大混乱になるでしょう。

科学ミステリーとして書く分には、面白いでしょうが、ちょっと怖い気がします。画像・映像化される夢などは単純なものだけにして、フロイトやユングが研究対象としてきた意味深い夢の映像化は、来世紀、来々世紀になっても、まだ実現が叶わないように、神秘のまま残しておきたい心境です。