鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

桐透図鐔 西垣

2009-10-17 | 


 

 桐花を藤のように長く巴状に意匠した、優れた構成美の鐔。無銘ながら西垣派の高位の工の作と鑑られる。色合い黒々とした鍛え強い地鉄は光沢が強くねっとりとし、表面が平滑に仕上げられてはいるものの鎚の痕跡がかすかに窺える。興味深いのは切羽台に構成した桐の葉をそれぞれ独立させて量感を違えるという微妙な肉取りをしている点で、掌にのせるとその抑揚変化のある地面の様子が指先に伝わりくる。花の連なる様子を意匠した耳も、表裏で微妙に抑揚を違えるなど優れた演出を試みている。耳の周囲には合わせ鍛えによって生じた層状の肌目とそれに伴う割れが生じており、これも自然味ある景色。