TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

海近旅館

2019年07月21日 | 読書日記

海近旅館 柏井壽 著 小学館

海に近くて景色は素晴らしいけれど、サービスや施設がいまいちの静岡県の伊東の川奈のある老舗旅館のお話でした。父と兄と妹美咲たちと少ない従業員で切り盛りするような小さな旅館が舞台でした。前女将の母の亡きあとに若女将として東京から戻ってきて頑張る美咲を中心に、旅館に泊まりにきたお客さんと家族やその仲間たちと海近旅館を一生懸命経営していく姿が描かれていました。美咲のお母さんでもっていたと言っても過言ではない海近旅館でしたが、宮大工見習いの冨久山、兄が連れてきたサーファーの職人智也たちやそのほかのお客さんたちに助けられながら、前の女将である母が「お客様はけっして神様ではありません。でも、ときどき神様がお客さまになってお越しになることはあります。」と常々言葉を発していたように、海近旅館のお客さんたちが、海近旅館と美咲たちの神様となってやってきて旅館を盛り上げてくれて、みんなに元気をももたらしてくれたというお話でした。旅をしていると大きな旅館、小さな旅館、リゾート旅館などたくさんの旅館のお世話になりますが、旅館の経営の大変さはこの小説を読むと、再認識させられます。何度か訪れる旅先で、かつてお世話になった旅館が経営されていなかったり、安い値段が売りの旅館に変貌していたのをよく見かけました。この本の中でも、経営難から旅館を手離し、屋代リゾートというチェーン旅館に様変わりしている話も出てきてました。海近旅館は温泉がでないし、一品一品出されるようなお料理ではないのですが、おもてなしの心をしっかりと提供してくれるという信頼感を提供してくれる居心地がいい旅館だと思いました。宿の施設が豪華ですべてに素晴らしい旅館が多くの人々にもてはやされ、口コミやSNSなどのサイトであっという間に多くの人々に情報が流れるような現代の日本の現状なのですが、日本中にはまだこのようなおもてしの心を大切にされ、目立たないけれど、居心地のいい宿が健在なはずです。施設が立派であっても、居心地がよくなければその旅館の印象はよくないという結果を利用した人に印象づけてしまうことも多々あります。旅の形は人それぞれ、海近旅館のような旅館に泊まって居心地のいい旅をしてみるのもおつなものでしょうと想像しながら、読み終えました。本の表紙が素敵な絵だったので、読んでみたいなあと思って、図書館で予約して、借りて読んだ本でした。

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宿の口コミサイト

2019年07月21日 | ひとりごと

『海近旅館』の小説の中で、宿の料理や施設やサービスなどの気に入らなかった泊り客が女将に相当の文句を言って、宿を去っていったという文章が気になりました。散々文句を並べた後に、クチコミサイトにありのままを投稿しておきますからねというダメ出しまでするといった文章でした。あれだけ怒れたらもっと違うことにエネルギーを費やせばいいのにと読みながら思いました。代金に見合わないと判断した客が宿の至らぬ点を宿のクチコミサイトやネットなどに投稿されてるのをよく見かけます。そのクチコミを読むと感情的、主観的な感想も多く、客観的なことも記載されていたりしますが、そのクチコミを信じるかどうかは読み手の裁量に掛かっていることが多いです。旅行社などが運営しているサイトでは、クチコミに返信する宿の方のコメントも時々掲載されていて、その文面を読むとその宿が重きを置いておられる点やおもてなしの本当が垣間見えたりします。クチコミサイトは読み物として読んで、その信憑性は自分自身で判断するのがよいと思いながら時々参考に読ませていただいてます。ランク付けが好きな日本ではこのようなクチコミサイトが宿の善し悪しの判断の基準のひとつにもされることが多く、このクチコミを重要視している宿も多いかと思われます。旅行社の宿のランク付けで高ランクの宿にお世話になったことがありますが、人それぞれ感じ方が違うので、皆が皆よいと判断されている上ランクの宿でも自分に合わない宿もありましたし、ランク付けがあまりよくない宿でもよい宿だなあと思った宿もたくさんありました。たとえば、料理を一品一品熱いうちに持ってきていただくというのが好ましいと思われる方がある反面、一品一品持ってきていただくのはいいけれど、いただく順番も持ってきていただく順番に決まってしまっていて、一品一品の間が空くと待ち時間が多い場合もあり、食事の総時間が伸びてしまうのが嫌で、一度にお膳にたくさんの料理を出していただいて自分が好きなものから順番にいただくのがよいと思っている方もいるはずです。多様なニーズに対応できるような宿が本来はいい宿なのかもしれません。今までたくさんの宿にお世話になりましたが、私が今まで泊まらせていただいた宿で、いい宿だったなあと思い出すのは、宿の方々のこんなことまでしていただけたという優しいおもてなしの心と温かい気遣いに触れたのをいつまでも覚えていたからでした。従業員の方々すべてが、旅館業の仕事のプロとしての誇りと、宿を一生懸命盛り上げていこうというおもてなしの心配りが徹底されている宿はいちばんよい宿で、居心地もよい宿だったということに気が付きます。その宿の立派な施設や景色や立地条件だけでは宿の判断をしていないのかもしれないなあいうこと、最終的には人だとうことなのかもしれません。

 

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