TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

イーディ83歳はじめての山登り

2021年05月18日 | 映画鑑賞日記

レンタル店で借りて観賞した映画『イーディ83歳はじめての山登り』の感想です。

主人公のイーディは夫の介護に30年間、人生の大半を捧げてきた83歳の女性です。夫が亡くなって介護することもなくなったのですが、離れて暮らしていた娘に、母親の面倒をみるつもりはないと言われ、老人施設に入所するように勧められます。ある日、近所のお店で食事をしていたときに店主に「追加注文していい?」と尋ねたら店主は「いつだって手遅れなんてことはないよ。」と答えます。その店主の言葉で、彼女の父から生前一緒に行こうと誘われていたスイルペン山に登ってみようと思い付き、すぐさま行動を起こすことからストーリーは始まりました。ロンドンに住んでいたイーディは、夜行列車に乗り、スコットランドに向かいました。そこで偶然出会った地元の登山用品店で働いていた青年ジョニーをトレーナーとして雇うことになり、山登りのノウハウを教えてもらいながら夢だったスイルペン山に登る訓練を始めて行きました。イーディは人の親切を素直に受け入れることができないという偏屈な態度を取ることも多々あって、面倒見のよいジョニーですが、最初はしょっちゅう、喧嘩や言い争いを繰り返していましたが、だんだん打ち解け、年の離れた有志あるいは友達のような関係になって行く様子は見ごたえがありました。

最初は、ジョニーはイーディに付き添いながら登山するつもりでしたが、イーディは一人で登山することを決意します。一人で登山していくイーディは、自らの足でゆっくり焦らず登って行きました。スイルペン山は731メートルという高さの山でしたが、頂上に辿り着くまでは荒野を相当長く歩いて行かないといけなかったり、ボートで渡らないといけなかったり、途中、テントを張って、休息を取りながらも雨や強風に遭ったりしながら苦戦を強いられるような困難な登山でした。鳥の鳴き声や川のせせらぎや風の心地よさを体に沁み込ませて、夢の実現に向けてひたすら歩いて登って行く姿は感動的でした。イーディは83歳だったので、体力的にも相当きつい登山だったはずなのに、スコットランドに広がる大自然の中で、自ら望んだ登山をしているという瞬間を自ら楽しみながら爽やかで希望に満ちていた姿がとても印象的でした。観る人々にも勇気や希望を感じさせるこのシーンは感慨深かったです。いくつになっても、始められることもあるということ、できないと決めつけないこと、第一歩を踏み出すことは誰にでもできることだということを教えてくれた映画でした。最後にイーディがにっこり微笑むシーンは生きているという実感の喜びだったと思いました。ひたすら登山をする映画でしたが、以前に観賞した映画「剣岳」と同じような爽快感を感じた映画でもありました。

最後になりましたが、最初のシーンでイーディの一人娘が母を老人施設に入所させようとしていたシーンを見ていたらとても胸が痛みました。イーディが夫の介護のために不幸な人生を30年間も送ってしまったと自ら思っていたことも気になりました。夫の介護も娘を育ててきたのもすべて任務のようだったと日記に書いていたのを一人娘が読んで、娘が怒ってしまうシーンがありました。一人娘が、母親がずっと不幸だったと思っていたことを知ってなぜあんなに怒れるのだろうと不思議に思いました。イーディが30年間もずっと不幸だったと思っていたのなら、まわりにいた人々や一人娘がなぜイーディのそのような環境を少しでも軽減させてあげようと手を差し伸べなかったのだろうか、イーディに優しい言葉を一言でも掛けていたのだろうかと不思議に思いました。イーディが娘にも頼ることができなかったとしたら、その関係性に問題があるのではないのかなあとも思ってしまいました。30年間も不幸と思うもっと前に、何度か山に登るきっかけが83歳以前にできていたらもっとよかったのかもしれないなあと思った映画でもありました。

コメント
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