「 NHK が危ない!」 あけび書房刊 池田恵理子、戸崎賢二、永田浩三 著
本書は4章立てになっている。
第一章「いま、NHKで何が起こっているか」(戸崎賢二)
第二章「日本軍『慰安婦』問題とNHK」(池田理恵子)
第三章「番組制作の良心を貫くために」(永田浩三)
第四章「NHKの視聴者との関係をどう組み替えるか」(戸崎賢二)
第一章では、NHKの籾井会長の「従軍慰安婦」をめぐっての問題発言の内容、百田、長谷川両経営委員の言動を、放送法に照らして批判的に検討される。
第二章では、日本軍『慰安婦』に関する籾井会長の発言が、歴史的事実に反することが明らかにされる。
第三章では、NHK職員でありながら市民としての立場で現実と葛藤した何人かのディレクター、アナウンサーが紹介され、現場制作者が市民と連帯、協働することの重要性が記述される。ここには、2001年の「従軍慰安婦」をテーマにした「ETV2001」が、政治家の介入(圧力をかけた政治家に安倍晋三も含まれる)で改変されたこと、それ以来「従軍慰安婦」関連の番組が制作されにくくなっていること、南京大虐殺のドイキュメンタリーが制作されにくくなっていることが、叙述されている。
第四章では、最近の「NHKの会長、問題の経営委員の罷免を求める市民運動の広がりが紹介される。
会長と経営委員の問題発言は次の通り。
「(秘密保護法について)まあ通っちゃったんで、言ってもしょうがないのではと思いますが、・・・国際問題等々も考えて必要だとの政府の説明ですから、とりあえず受けて様子を見るしかないんじゃないでしょうか。」(籾井会長)
「民主主義について、はっきりしていることは多数決。民主主義に対するイメージで放送していけば、政府と逆になることはありえないのではないかと。」(籾井会長)
「護憲派は大馬鹿者に見える。」「軍隊のない国くそ貧乏」「日教組は日本のガン」「南京大虐殺はなく、従軍慰安婦はウソ」「在日韓国人・朝鮮人を強制連行したというのは間違いではないか。」(百田委員)
「わが国の今上陛下は、ふたたび現人神となられたのである。・・・彼(朝日新聞社内で拳銃自殺した右翼の野村秋介)が呼び出したのは、・・・自らも現人神であられる天皇陛下であった。」(長谷川委員)
放送法には「委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」とある。
上記の会長、経営委員の発言が、放送法に反するのは明らかだろう。又、安倍政権を批判的に報道する番組、アベノミクスの失敗を報じるニュースが、NHKの画面からは流れないだろう。
こういう状態に対し、NHKのOB、市民団体による、籾井会長への辞職要求の署名活動が行われている。受信料の不払い運動も広がっている。NHKが政府から独立しているとは、到底思えない。
現在のNHKの情報は、まさしく「大本営発表」。 一読する価値のある一冊と言えよう。