『寺山修司』葉名尻竜一著 笠間書院刊
本書には寺山修司の短歌39首が紹介されている。代表歌はほとんど含まれている。だが読んでいるうちに違和感を感じた。著者が作品の言葉になっていないところまで想像を膨らませて作品を批評している。歌人ならば絶対こういう読み方はしない。
一首一首の中にドラマを見ている。いやドラマを著者が感じ、ドラマを描いているかのようだ。それもそのはず、著者は演劇の研究者だ。寺山修司は短歌を詠まなくなったあと劇団「天井桟敷」を結成した。著者の『寺山修司論』は読んでいないが、おそらく演劇との関連で書かれたものだろう。
僕が読むと寺山修司の作品には強い政治性、思想性を感じる。言葉のレトリックで読むひともいる。しかしもう一つの読み方があった。作品の中にドラマを発見する読み。
寺山修司は短歌に虚構を持ち込んだ。それが議論の種にもなった。考えてみると寺山修司は短歌でドラマを創作したかったのではないか。
著者のユニークな読みを進めていくとそんな風に思える。。
詩人の谷川俊太郎が帯文を書いている。寺山修司は自由詩も書いている。かれは1983年に47歳で世を去っている。だが17歳で俳句コンクールを企画して死ぬまでの30年間に残したものはとてつもなく大きい。そんな寺山修司の生き方が垣間見える一冊だ。
谷川俊太郎の帯文。
「現実の死に先立って、
言語によって自分自身を殺すことで、
彼は誕生し、生きた。
そこからしか彼は生きる力を得ることができなかった」