岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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「詩人の聲」:2014年10月(1)

2014年10月31日 23時59分59秒 | 短歌の周辺
「詩人の聲」2014年10月(1)


1、福田知子 10月2日(木) 於)キャシュキャシュダール(自由が丘)

 福田は24回目の公演だった。「第1回北ノ聲」に参加する前日で、どのような「聲」を北海道で撃つのかという期待も含めて注目した。元来、福田の詩は理知的で硬質感のある作品だ。それは変わらないが、最近は、理屈が消え、声に力が出てきた。迫力と勢いもある。象徴派的な作品が多いが、プロメテウスやエピメテウス、ピタゴラス教団など、古代文化を素材とした作品が読まれた。

 文語、部分的定形、リフレインを効果的に使用し、独特のリズムを奏でている。聴いていると心地よい。理知的ではあるが、理屈ではない。硬質観のある抒情が、ストレートに心に響く。

 だが物語的なものや、メルヘン的なものは、表現が甘く、こなれていない観がある。福田の資質とあっていない気がしてならない。これはあくまでも僕の印象だ。



2、長谷川忍 10月11日(土) 於)キャシュキャシュダール(自由が丘)

 長谷川は21回目の公演。長谷川の詩は、人間が素材だ。特に都市民のもつ抒情を表現する傾向が強い。月に1回「聲を撃ち」2編から3篇の新作を書く。それを「聲に載せる」。これを繰り返しながら、創作活動をしている。

 この日には、新作2編と、旧作に手を入れたものが、読まれた。前回までは、都市民の抒情に限定されていたが、今回は、都市に限らず、現代人の感じる心情を表現した作品が読まれた。歯切れの良い言葉で、現代人の生活の中の抒情が表現される。聲に力があり、リズムが快い。なにやら文体が確定してきたようだ。

 固有名詞の使い方に工夫の余地があると、前回指摘されていたが、固有名詞が効果的に使われた作品も読まれた。テーマの違う詩集を2冊出したら、面白いだろう。


3、天童大人 10月14日(火)於)東京平和教会(駒込)

 天童は46回目の公演。イランの国際詩祭、「北ノ聲」をへてどんな聲が聴けるか期待して行った。テヘランではペルシャ文明のエネルギーを感じたそうで、そのエネルギーが、聲に込められているようで、何時にも増して、迫力のある聲だった。

 作品は、「カイロの空」「バビロン詩篇」「ニムロデの塔」「ミラノの空」など、地中海世界を素材とした、天童独自の作品が読まれた。天童の作品は、アニミズムと先月書いたが、その根底には、古代文明への憧憬と尊敬がある。アニミズムと言っても、原始的なそれではなく、古代文明と関係性の深いアニミズムだ。


4、岩崎迪子 10月16日(木)於)ギャルリー東京ユニマテ(京橋)

 第22回公演。15年ぶりに詩集を出した岩崎だが、今回は新作2編と旧作が読まれた。第一詩集の作品も読まれた。第一詩集の作品は、ねじめ正一が「暗い詩」と表現したように、冷涼感のある、線の太い作品だった。

 鋭く切り込み、線の太い作品が、強い響きで読まれ、、新刊の『丘の上の非常口』とは、全く違う世界だった。新刊の詩集を出して、原点を振り返るために、旧作を読んだそうだ。数年後には、また違う作品が生まれるだろう。




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