岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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災害列島と原子力発電所と

2011年07月19日 23時59分59秒 | 政治経済論・メモ
斎藤茂吉の作品のなかで、自然災害についてのものは少ない。新聞記事の見出し的・説明になるからだと思う。「台風」を詠むより、聴覚を効かせて

 僕の少年時代までは、しばしば停電があった。経済の高度成長の時代は電力不足の時代でもあったのだ。

 僕が中学に入るころから、めったに停電しなくなった。送電に支障が出た場合、迂回して送電したり、電力会社の間で電力の融通をするようになったからだが、原子力発電所が次々と建設されたことにもよるのだろう。

「原子力の平和利用」

これが声高に叫ばれた。技術科の授業で「原子力の平和利用」という作文を書かされた覚えがある。なにせ、原子力エネルギーの利用について、たっぷり一時限授業を聞かされたあとだったので、結論が決まっていたようなものだった。

 工業立地という言葉がある。工業の立地条件のことを言うが、考えてみれば日本ほど原子力発電所の立地条件が悪い国はない。

 まず地盤。地盤の固いところを選んで建設しているとされるが果たしてそうか。日本列島は4枚のプレートの上に乗っている。ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートの4つだ。このうち北米プレートは専門家の間に議論があるらしく、プレートの境が点線で表現されたり、「大陸のプレート」と表現され、まだ定説にはなっていないようだが、とにかくプレートの境目が日本列島付近には集中している。

 問題はそれぞれのプレートのうち、太平洋・フィリピン海の両プレートが大陸のプレートの下に年間数センチずつもぐりこんでいろこと。それが積み重なると地盤がゆがみ、そのゆがみが一気に戻ろうとする。これが「海溝型地震」だそうだ。

 またプレートの境には活断層が多く存在する。今回の震災でも東北から茨城沖の震源域に連続的に地震が発生し、大きい所では数メートル地盤が動いた(活断層が動いた)そうだ。

 この地震の震源域は太平洋を囲むように連なっている。「環太平洋地震帯」といわれるが、地質学では「新期造山帯」に含まれる。今なお地殻変動(=造山運動)が盛んだという。地殻変動が盛んだから、大規模地震も頻発する。ペルー、ニュージーランドの地震は記憶に新しいし、アメリカ・カリフォルニア州も地震が多い。

 日本付近の震源域をやや詳しくみると、北海道・東北地方の太平洋側と東北地方の日本海側に帯状に連なっている。それぞれがさらに細かい震源域に分かれるのだが、細かい震源域の海底の地盤が連続して崩壊したのが、今回の東日本大震災だそうだ。またそうした震源域が相模湾から静岡県沖、紀伊半島沖、四国沖、九州の宮崎県沖、沖縄の南側沖の沿って、断続して連なっている。それぞれがほぼ海溝の連なりに符合する。

 またこうした震源域のない日本海側でも、新潟地震、福井地震、鳥取県西部地震があったし、内陸部の阪神淡路大震災もあった。古くは鎌倉大仏の大仏殿を倒壊させるほどの津波が中世にあったという記録や、秀吉の時代に伏見城・方行寺の大仏殿を倒壊させた地震の記録が残っている。

 浜岡原発の海岸線にある砂丘は、津波を防ぐどころか海水と一緒に原発に大量の砂が押し寄せると思わせるほど脆弱だし、四国の伊方原発と山口の上関原発の間には日本最大の活断層・中央構造線が走っている。その活断層の延長線上の南北に佐賀の玄海原発と、鹿児島の川内原発がある。延長線上というのは、中央構造線の西の端が未だ確認されていないからだ。確認されていないのは「安全」を意味しない。「日本中全域が活断層の上に乗っかっていると考えれば間違いないと、地震学者は警告する。
 

 それから、台風・水害。「深層崩壊」といって、山の斜面が根こそぎ崩落する現象も近年指摘されている。以前は滅多になかった竜巻が各地で確認されるようにもなった。集中豪雨も毎年のように繰り返されている。

 まさに自然災害列島だ。原発の立地には、これほど相応しくない国も珍しいと思うがどうだろうか。

 ちなみに海外の原発は、地震の少ない「古期造山帯」の周辺にある場合が多い(チェルノブイリもスリーマイル島も。しかし事故は起こった)。その海外でも「反原発」の声が高まっているという。

 以前の記事にも書いたが、火は水をかければ消える。石油やガスタンク火災には消火剤があるし、燃え切ってしまえば火は消える。しかし原発は、たった数時間電源が消失しただけで、メルトダウンの危険があるし、制御棒を挿入して原子炉が停止したあとも冷却水をかけ続ける必要がある。そして何よりいったん重大な事故が発生した場合、広範囲に深刻な被害をもたらす。

 海外では核問題の一環として、「ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ」と言う人たちもいると聞いた。ここは考えどころではないだろうか。

 


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