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書評:「原発の闇を暴く」広瀬隆 明石昇二郎 著 中公新書

2014年05月20日 23時59分59秒 | 書評(政治経済、歴史、自然科学)
「原発社会の闇を暴く」 広瀬隆 明石昇二郎 著 中公新書

 本書の特色はふたつほどある。

 一つは「原発がなくても電力は足りている」という主張だ。全体三章立ての第三章で「原発がなくても停電はしない」「独立系電気事業者だけでも電気は足りる」という二節を費やして具体的に叙述している。

 二つ目は、原子力発電事業と癒着して利権を得てきた、研究者、ジャーナリスト、政治家の実名をあげて、糾弾しているところにある。特に原子力関係の諸団体を俯瞰した、図表は非常に参考になる。

 原子力発電の危険性についても、原子炉の仕組みや、放射性廃棄物処分場の構造の仕組みとともに、その安全性を宣伝してきた、研究者の実名、発言の具体的指摘に基づいているので、説得力がある。

 ここで初めて知ったことを幾つかあげよう。

 東大系研究者が原発推進の立場に立っていて、京大系の研究者が原発の危険性を訴えていた。原発の危険性を訴えていた研究者の多くは、教授への道をとざされていた。

 原発推進を訴えていた研究者たちは、原発のメーカー(東芝、日立、三菱重工)や、電力会社と深い関係にあった。それを本書は「原子力マフィア」としている。

 東日本大震災の直後に出された本だが、今あらためて読むと、安部首相が、東南アジアなどに、原発の輸出を前のめりに行っているのも、経済的利益を、安全より優先しているのが、よく分かる。

 本書に実名ででてきた、研究者、ジャーナリストの名前を、さっぱり聞かなくなった。本書の指摘が、根拠のあるものだったことを証明している。

 緊急出版されただけに、代替エネルギーについての叙述が少ない。それを補うには、科学者、14人の共著の『原発を終わらせる』(岩波新書)を、併読されるのをお勧めしたい。



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